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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編
117/494

目からビーム初心者とうさみ 22

 目からビーム子には尾行がついていた。


 切り株地帯という異常事態、その現場に三度居合わせた少女。

 あやしい。

 あやしいが、確証はない。

 確証はないが監視くらいはしておこう。


 外門門衛部隊副隊長モンブはそう判断して要員を付けたのである。

 仮にシロでも、ぽやーっとしていて性的特徴が強く、うっかりするとその手の連中に狙われかねない目からビーム子を見張っておくのは治安維持にいくらか貢献できるかもしれない。

 というついでの理由もあった。あくまでついでだが。



 結果としてその判断は成功であり失敗だった。


 目からビーム子が冒険者ギルドを出たころには、歩く切り株の件で街は騒然としていた。

 しかし、目からビーム子はその様子を全く気にする様子を見せず、串焼き屋台へまっすぐと向かい両手に串焼きを購入。

 その後数歩歩いて立ち止まり、しばらく動かずいたかと思うと、頭をぷるぷると振った後に、あたりをきょろきょろと見回した。


 それから周囲の建物の屋根あたりを注視しながらふらふらと大通り沿いに歩いた。


 お上りさんの観光客のようだと尾行要員は思ったが、そういった穏当な先入観は仕事の邪魔になるために頭を切り替える。

 自分は万一の場合のために尾行しているのだから、穏当な可能性は前提とすべきでないのだ。


 さて、そうして改めて見て気が付いた。



 自分以外にも尾行している者がいる。



 先にも述べたが、街は騒然としており、その意識は東外門へ向いている。

 そんな中、流れとは違う動きをしているものは目立ちやすい。

 尾行要員とは別の尾行者の意識が目からビーム子へ向いているのは気づいてしまえばすぐにわかった。



 目からビーム子を尾行する理由はいくつか考えられる。


 まずその外見だ。なかなかに整った顔立ちで、体つきは肉感的。肩掛け鞄が胸を二つに分けているのも、旅上がりのせいか着衣が若干崩れているのもそっち(・・・)方向の誘引力を高めている。

 つまりエロ目的だ。

 それがナンパか強姦かによって介入すべきかどうかは変わってくる。


 次に、その荷物。

 変わった形状の背負い鞄、色は目立つ赤。加えて肩掛け鞄。

 お上りさん風の行動をする彼女が大荷物を持っているというのは物取りにとってはいいカモに見えるに違いない。

 さらに言えば、冒険者ギルドで奥に案内されて商談を行ったという事実。

 遺憾だがこれを知っていれば狙おうとするものが出てもおかしくない。

 広間に戻ってきたときに肌着がどうのと茶番を繰り広げていたが、アレを信じる者ばかりではあるまい。


 最後に情報。

 つまり尾行要員と似た目的だ。

 これも尾行する者が犯罪行為をよしとするかで対応が変わる。

 切り株地帯の情報は歩く切り株が大量発生した時点ですでに価値は少ないので広まったところで問題はない。

 それとは別の情報を引き出せるのであれば、この尾行者を泳がせて利用するのも手かもしれない。

 まったく関係ない場合も考えられるが、それならそれで手口に合わせて適切に対応するまでだ。



 尾行要員は自分とは別の尾行者を泳がせることにした。


 目からビーム子はそんな判断がなされたことにも気づかず、ふらふらと建物を見ながら歩いている。串焼きがおいしそうだ。


 そして、ついに大通りから裏通りへと入っていった。

 建物を見ることに夢中になったのか。

 それとも、尾行に気づいて誘い込もうとでもいうのか。

 身のこなしは完全に素人だが、実はなんらかの訓練を受けている?


 別の尾行者も追跡を続けるようだ。

 その人数は増えていた。

 仲間と合流したのか。

 尾行を見破られても数で制圧するためか?


 尾行要員もそれに続く。

 その最中に機を見て、通りすがりの子どもにお駄賃を与え、部隊の符丁を渡して詰め所まで届けるように頼む。

 これで何かあったということは伝わる。

 魔物の迎撃に忙しいだろうから応援は期待できないが。



 そうこうしているうちに、目からビーム子が袋小路へと入っていき、別の尾行集団がそれを追い。

 尾行要員は入り口で様子をうかがった。




 もめるような声。





 女の悲鳴。

 尾行要員は袋小路に飛び込んだ。


 袋小路の奥に目からビーム子が追い込まれ、突き飛ばされたように尻もちをついていた。尾行者が五名逃げ道をふさぐように立っている。


「なにを――」


 なにをしている、と尾行要員は最後まで口にすることができなかった。


 光が尾行要員を包み。

 尾行要員はこの世から消滅した。




 外門門衛部隊副隊長モンブの成功は、事態の中心に手をかけたこと。

 失敗は、その危険度を見誤ったことだった。

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