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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編

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目からビーム初心者とうさみ 18

 冒険者ギルドの廊下を抜けて先に中庭があり、その脇にギルドの本館とは別に木造の建物がある。

 妙に大きな扉と、そのわきに小さな扉がついている。

 マニアルに連れられて、私はその建物へを足を踏み入れた。


 倉庫、いや何らかの作業場だろうか?

 部屋の半分には棚が多く並んでおり、箱が多数置かれている。こちらだけ見れば倉庫なのだが。

 残り半分は何も置いていない広い空間となっている。大きいほうの扉はここにある。

 さらに床に溝が彫られており、排水溝と思われる穴に延びており。

 壁際に刃物や工具が整理しておかれていた。


 そして、なぜか血の匂いがする。

 この部屋はいったい?


「それよりここは? 拷問室ですか?」

「ご、拷問室!? そんな物騒なもの冒険者ギルドにはありませんよ!? 留置所はありますけど!」


 大げさに身を引いて驚くマニアルのウサ耳と胸が大きく揺れた。

 大きかったり長かったりすると大変そうだ。

 私も結構大変だもの。走るときとか。


 さておき。

 拷問室でなければなんだろう。

 ナタやノコギリ、大ぶりなナイフに巨大な針のようなもの、それに縄が太さごとに分けておいてある。

 ううん。わからない。


「ここは冒険者が持って帰った獲物を解体して保存する場所ための場所ですよ。素材解体倉庫って名前がありますけどみんな倉庫って呼んでます」

「これも解体するのですか?」


 私の緑の鞄を指して言うと、マニアルは首を横に振った。


「いえ、これはできればこのまま受け取りたいですね。ここで解体するのは魔物です」

 魔物を解体する場所。

 なぜそんなところに連れてこられたのだろうか。


 まさか。


 私は魔物だったのか!?

 そして解体されるのか!?


「わ、私は悪い魔物じゃないですよ!?」


 胸を抱いて一歩さがる私。

 横目で出口を確認する。


「へ? 誰もそんなこと言ってないですって」


 マニアルが手をパタパタさせると、ウサ耳もパタパタする。おもしろいぞ。

 あと、さわりたいぞ。


「ここに来たのは、他に内緒話ができる適当な場所がなかったのと、取引が成立しましたらここにしまうからですよ。お客様を拷問したり解体したりするためじゃありませんから」


 一安心である。


「まさか賢者の薬草がこんなに納品されることになるとは思いませんでしたので」


 まだ納品すると決まったわけではないのだが。

 まあ十中八九するだろうけれど。




 賢者の薬草様は、周囲の土ごと採取し、土部分がこぼれないよう布でくるんである。

 これを、土が乾燥しない程度に水分を与え続けることで、数日ほど品質を保って保存ができる。

 一日くらいなら薬効のある葉と茎と根、それから花があれば花弁とめしべとおしべなど必要部分だけ採取すればいいのだが、何日かかるかわからないので念のための処置だった。


「いやあ、適切な処置ですね。うちの冒険者にも見習ってほしいです」


 改めて、賢者の薬草様をマニアルに見せると褒められてしまった。

 やはり私ってば天才だったりして。


「ただですねえ……なんで根をくるんでいるのが女性用肌着なんですか!?」

「それしかなかったので。未使用ですよ?」


 発見時、適当な布が他になかったのだ。

 肌着に使われている布も高価そうだったので悩んだが、洗って使えばいいやと思い使用したのだ。伸びてなければ。


「そんなもの男衆の前で見せたら大変ですよ。野獣ですからね、肉食獣。おかげでこうして奥に連れ込むことになったじゃないですか」


 そういう理由だったのか。

 拷問したり解体したりしないというのは本当だったようだ。

 なるほど兎人族だけあって肉食獣には敏感ということか。


 だがまあ、それはひとまず置いといて。


「どうですか。登録した方がいいですか? しなくてもいいやつですか?」

「ひとまず現在採集依頼はありませんでした。ですので無理に登録していただく必要はなくなりましたね」

「そうですか」


 残念と言おうか、面倒がなくてよかったと言おうか。


「で、既定では、この量ですと金額はこんなもので。ちなみに言っておきますが末端価格はこの三倍ほどです。他のギルドに持ち込むことができても、買取価格はうちと変わらないでしょうけど」

「なんと」


 鞄いっぱいで一年くらい暮らせそうな気がする額であった。その三倍で取引されているとなると……おおむね知識の通りだろう。


 よかった、自分の知識が大きく間違っていないことを確認できた。

 これは記憶を失っている私にとっては大事なことだ。

 こうだろうと認識していることがとんでもない間違いだったとしたら大変である。

 なので私は、少し安心することができたのだった。



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