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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編
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目からビーム初心者とうさみ 17

 ベリーにマニアルさんと呼ばれていた女性は、ウサギ耳の銀髪だった。

 兎人族とよばれている人間の一種族だ。多分。

 稀にかわいいからという理由で獣の耳を付ける人がいるらしいので絶対とは言えないのである。

 ただ、耳の色が髪の色と同じなのできっと自耳だろうと思う。


 身長は小柄で、ベリーと同じくらい。

 ただそのベリーと大きく違うのは、胸の主張が強いことである。

 カウンターの向こうにいる、同じ服を着た他の女性たちと比べるとそれ苦しくないのと尋ねたくなるようなぱっつんぱっつんであった。


「はいそれでは~。こちら冒険者ギルド、受付担当のマニアルです。どういったご用件でしょう?」


 礼をしてから胸の下で腕を組み、片眼を閉じてみせるマニアル。

 頭を下げたときに耳がぴこんと動いたのが気になる。触りたい。


「あ、ええと――」

「えっ!? ちょ、ちょっとお待ちを。いえ、奥にどうぞ!」


 私が耳を見ながら答えようとしていると、その耳が両方とも左に向いた。

 つられて私も左を向いた。


 先ほど分かれた氷の剣の面々と話していたマニアルとは別の受付担当が驚いた声をあげてから、三人を連れて奥の部屋へと案内していくところだった。

 ベリーが手を振ってくるので振り返していると、氷の剣と担当受付嬢は奥への扉に消えていった。


 それから正面に向き直ると、マニアルも同じ方向を向いて耳をぴくぴくさせていた。 あちらの事情に興味があるのだろう。

 とはいえこちらの用件を進めてもらわないと。

 私は声をかける。


「いいですか?」

「あっ、失礼しました。ご用け――」

「なあ嬢ちゃん、あいつら何かあったのかい?」


 話を再開しようとすると、後ろから声がかけられた。

 くるりと振り返って。


「私でしょうか?」


 と尋ねると、そこには先ほどアーケンと話していた青年から中年の男性たちが寄ってきていた。

 ただ、こちらを見ているのになぜかそろって視線が顔より下、胸のあたりに向いている。

 何を見ているのか。

 話しかけておいて顔を見てないのはどういう風習なのか。


「もし?」

「ああいやすまん。そうだ、あんた、氷の剣の連中と一緒に来ただろ?」

「はい」


 確かに友達のベリーに手を引かれて入ってきたと記憶している。


「ああやって奥で話をするのは珍しいんだわ、何か知ってるかと思ってよ」


 なるほど、知人が変わった扱いを受けているので気になったというわけだ。

 確かに私でも気になるかもしれない。


 ただ、そうやってわざわざ別扱いをしているのは理由があるはずである。

 冒険者ギルドという組織には詳しくないが、そうやってあえて隠すものを私が話していいのだろうか。

 あまりよくない気がする。


 友達のベリーに関わることでもある。私は丁重に断ろうと口を開いた。


「そ」

「ちょ~っとお待ちを!」


 今日はよく話がさえぎられる日である。

 いや、冒険者ギルドに入ってからか。場所の問題か。

 今回遮ったのはマニアルなので、元に戻ったといっていいかもしれないけれど。


「ジャガさん困りますよー。奥の話は詮索しないのが約束ですよ」

「固いこと言うなよマニエルちゃん。このお嬢ちゃんはまだギルド員じゃないんだろ? だったら許される、そう思わないか?」

「いえ、ですからね」

「マニエルちゃんも気になってるみたいだったじゃねぇか」

「それはそうですけど、それはそれですよ」


 私を挟んで話をしないでいただきたい。


「な、嬢ちゃん、登録したら俺ら先輩になるんだぜ、恩を売っておいても損はないと思うんだがどうだ」


 居心地の悪さに一歩横に体をずらしたところで、また私に話が帰ってきた。

 しかし。


「あ、いえ、私登録はしません」

「えっ」

「えっ」


 男性(ジャガさん?)とマニエルの声が重なった。

 私は賢者の薬草様を売りに来ただけであって、冒険者になる予定はまだない。

 よく死にそうにはあまりなりたくないので。


「あ、でしたら買取ですか? 商談ですね。ほら、部外者は散って散って」

「ちぇーなんだよー」

「カタギじゃしょうがねえな。悪かったな嬢ちゃん」


 マニエルが手を払うように振るのにあわせて胸が揺れるのを見ながら集まっていた男性たちがあっさり引き下がっていった。


 さっきまで部外者だからいいじゃないかという流れだったはずなのだが、実際に部外者だということになったらあっさり手の平を返す。

 なにこれ。


「そのー、新人をからかうのが冒険者のお約束でして。すみませんね」

「なるほど」


 業界ならではのお約束ということであれば部外者の私に言うべきことはない。

 はた迷惑だと叫んだところで謝罪を引き出すのが精々だろう。一応ではあるが謝罪の言葉はもらっているし。

 そんなことより取引だ。


「さて。員外の方ですと、ギルド定価での取引となりますがよろしいでしょうか?」

「ギルド定価?」

「市場価格を基準に冒険者ギルドが独自に算出した価格です。ギルド員ですと、あちら、掲示板に該当の納品依頼があれば、ギルド定価より高値で引き取ることができる場合がありまして」

「つまり登録した方が得かもしれないということですか」

「そうですね。ただ、登録されますとギルド規約に従っていただくことになります」


 規約。なんだか難しそうである。

 冒険者ギルドの人はみんなその規約を覚えて守っているのだろうか。すごいなあ。


「ええと、ものを見てもらって登録するかどうか決めてもいいですか?」

「かまいませんよ。ギルド員のご友人ですし、見積までは無料でさせてただきます」


 うさ耳を揺らしてにっこりと笑うマニエル。

 ベリーありがとう。


「ものはこれなのですが」


 私はそう言いながら緑の鞄をカウンターに載せ、開いて見せた。


「こ、これは!?」


 マニエルの声が響いた。


 後方の人たちがこちらを見るのが何となくわかった。

 マニエルが、あっやべっと顔を一瞬ひくつかせたのが分かった。

 それからなぜか胸の下で腕を組ん高と思うを軽くゆすっると同時に腰をくねらせた。

 なにをしてるのだろうか。


「えー、これはちょっと専門外で鑑定できませんね。奥に行きましょう。わかるものを呼びますから」


 こうして私も奥へと案内されたのだった。

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