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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編
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目からビーム初心者とうさみ 15

 盛大に話の腰が折られてから落ち着くまで多少の時間がかかった。


「大丈夫なのね?」

「ええ、はい。ことに及ぶ前に例の件が起きて逃げられたので」

「そう……よかったわ。でもあなたも気を付けないとだめよ?」

「ベリー、そのあたりで。幸い無事だったようですし、いまは別の話をしているところです」


 心配からの説教に移行しつつあったところで、ごつい神官のクラブがベリーをいさめてくれたおかげでひと段落。

 解放されてから周りを見ると、他の人たちは苦笑いであった。


 ベリーが過剰ともいえる反応を示したことが原因だろうか。

 過去に何かあったのかもしれないと、察したのか、知っていたのかだろう。

 私もそう思った。


「こほん。ひとまずですね、一通りお話は聞けました」


 モンブ副隊長が話をまとめに入ろうとしている。


「偵察を出すことになるでしょう。ドラゴンかどうかはともかく、相当な危険度の何かが出現している可能性が高い。氷の剣の皆さんはこの後冒険者ギルドですか?」

「ああ、報酬を受け取りに行くからな」


 護衛対象の商人のトリーたちはここにいるのに、報酬は別の場所で受け取るらしい。

 冒険者ギルドか。


「でしたらこの」


 モンブは一度言葉を切って、後ろで書記が書いていたものを受け取り、折りたたんで封蝋を施す。


「これを報告の際に冒険者ギルドに渡してください」

「わかった。冒険者ギルドで連絡がつくようにしておけばいいな?」

「はい、お願いします」


 今聞き出した話をまとめた手紙かなにかだろうか。

 受け取ったアーケンが大事そうに懐にしまう。


「トリーさんたちと、目からビーム子さんはどうされますか? この件で改めてお話を聞かせていただくかもしれませんので、連絡を付けられるようにご協力を願いたいのですが」


 ははあ、なるほど。

 そういうこともあるかもしれない。

 二度も三度も話を聞かれるのは面倒な気持ちはあるが、なかなかの大事のようだし仕方がないか。


 そして私は今後について答えようとしたのだが、納得ている間に一足先にトリーが口を開いた。

 先を越されてしまった。

 私は開いた口の持って行き所に困ってパクパクさせてしまう。


「商業ギルドへ。荷物がほとんどやられてしまいましたからね……」


 トリーが言いながら肩を落とす。

 商人が荷物を失うとは大変なことだろう。どうするのだろうか。

 娘のショウ子が父親の背中をポンポンと叩いている。

 力づけようとしているのだろうか。


「大丈夫だよお父さん、今回は運が悪かっただけ。次で取り返せばいいんだよ。一発逆転だよ」

「ショウ子ちゃん、お父さんその考え方は危険だと思うな。あ、失礼、宿は『終焉の闇亭』を予定しています」


 仲のよさそうな親子である。


「『終焉の闇亭』ですね。あとは」


 モンブがこちらを向いた。

 今度こそ私の番のようである。

 先ほど肩透かしを食らったので気合いを入れなおす。

 皆さんの注目を浴びる中、私は口を開いた。



「未定です」



 皆さん揃ってずっこけた。ああっ書記の人まで。






 実のところ街に来たのはいいがどうすればいいかわからなかった。

 当座のお金はあるので宿を取ってどうするか考えようかと思っていたのだ。


 私ができることはそう多くはない。

 そしてその範囲で今後の生きる糧を稼げるようにならなければ、街に出てきた意味がない。


 しかし、問題は街ではどのような仕事があるのかすら私は知らないということだ。

 もっとも、村のことも記憶にないけれども。


 薬草を摘む仕事で食べてければいいが、だめなら何か学ばなければ。

 この年になって一からできる仕事があればいいのだけれど。


 と、ここまで考えて気づく。

 今聞いてみればいいのでは。


 聞くだけならタダだ。

 名案である。私ってば天才っぽい。


「薬草を採ってくることで生計を立てられるでしょうか?」


 早速尋ねてみる。


「あ、ああそうだな、冒険者ギルドにはそういう仕事があるが」


 アーケンが起き上がりながら答えてくれる。


 冒険者ギルド?

 先ほども話に出ていた。

 てっきり、護衛の斡旋を行う場所かと思ったのだが。


「薬草採取の仕事ね。食つなぐくらいはできるだろうけど、目からビーム子ちゃん、戦闘経験は?」

「せんとうけいけん?」

「うん、あまりお勧めできないわね」


 首をかしげると、ベリーに否定された。なぜだろう。


「冒険者ギルドの仕事は魔物との戦闘が前提なのよ。うーん、錬金術ギルドなら買い取ってくれるかもしれないけれど。副隊長さん、どう思う?」

「あそこはあまり直接取引をしたがりませんから。薬種商人か冒険者ギルドを通さなければ難しいでしょう。錬金術師資格があれば別ですが」


 どうも複雑らしい。これが都会。人が多い分大変なのだろう。


「地縁血縁も技術もなく食い扶持を稼げるのは冒険者くらいだろうな。この街に誰か当てはあるのかい? 親戚とか」


 ベリーとモンブが意見を交わしている横から、アーケンが話しかけてくる。

 当て?

 そんなものはもちろん、ない。記憶にございません。


「なけりゃあ、やっぱり冒険者だろ。門の外は魔物が出るからな、そういう危険な場所での仕事を代行するわけだ。だから森に出向いて薬草採るのも冒険者の仕事になるわけさ。

 もちろん、請負仕事じゃなくても、自分らで冒険の種を見つけて冒険することもあるがね。

 ま、なんだ、冒険はいいぞ。よく死にかけるけどな」

「死にたくはないです」


 からからと笑いながら提案してくれるが、私は命が惜しいので死にかける仕事はちょっと困る。


 とはいえ。


「仕事も大事なのですが、とりあえず手持ちの薬草を処分できる場所と、荷物を置いて出かけても盗まれない宿を教えてもらえませんか」


 ひとまず手持ちの賢者の薬草様をお金にしなければ価値がなくなってタダの枯れ草になってしまう。

 うまく売れれば当分は働かなくても食べていけるだろうと見込んでいるので優先すべきは安全な寝床である。


「現物があるのでしたら、私が、と言いたいところですが。あいにく手元が苦しく。商業ギルドはギルド株を持っていなければ相手にしてもらえませんから、冒険者ギルドでしょうね」


 トリーがそう教えてくれる。

 商人がそういうなら妥当なところなのだろう。他の人も頷いている。


「それなら私たちと一緒に行きましょう。冒険者ギルドまで案内するわ」

「ありがとうございます」


 ベリーが手を上げて提案してくれるのでありがたく乗ることにする。

 まさかここから強盗にはやがわり、なんてことはあるまい。



 というわけで冒険者ギルドに向かうことになったのだった。

 なお、宿も紹介してもらった。道に迷わなければ大丈夫だろう。

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