目からビーム初心者とうさみ 14
五人……商人親子+護衛組の事情をまとめると。
オワリエンドへ移動中、あと一日というところで盗賊の夜襲を受ける。
対応中に一帯が光に飲まれ、収まったら切り株地帯になっており、盗賊たちはいなくなり、馬車も破壊されていた。
明るくなって確認したところ、帯状に切り株地帯が広がっており、果ては見えなかった。
戦闘中だったためはっきりとしたことは言えないが、前触れなく発生した。
さらに推測として。
自分たちが助かったのは、とっさに伏せたおかげと思われる。
根拠は、切り株の高さと、馬車の荷台も消えていたこと。
膝より少し高いくらいの位置までを範囲としていたようだ。
「で、それだけの規模を破壊できて光を使う存在といえば」
「光のドラゴンというわけですか。なるほど。……皆さんだけ、とっさに伏せることができたのは何故でしょう?」
剣士アーケンが代表して状況を説明し、商人バイインと魔法使いベリーが補足したり頷いたりしている。
商人の娘は父親にくっついておとなしくしており、神官クラブは沈黙を保っていた。
しかし、なんだか難しい話である。
私も推測とか考察とかしておくべきなのだろうか。
ちょっと不安になってきた。今からでも考えておこう。
「直感だ」
「こいつ命に係わる勘だけは外したことがないんです。それで、突然変なこと言い出したら、ひとまず従うことにしていて」
直感だ。
ですって。
こうもはっきり断言できるものなのか。ちょっとかっこいいかもしれない。
私も「直感だ」言ってみたい。
「なるほど、冒険者向きの加護をお持ちなのですね。わかりました」
わかりますのか。
モンブ副隊長はそれで納得していた。
直感だはそれくらいありふれているものなのかもしれない。
これなら私も直感だしてもバレないだろうか。
しかし、ここで使うのは二番煎じなので別の機会を待つとしよう。
「さて、次は目からビーム子さん、先ほどのお話を踏まえて、関連していそうな話があればお願いできますか?」
「あ、はい」
か、関連していそうな話?
目覚めてからのことを順番に話そうかと思っていたのだが、そうはいかないらしい。
「ええと、まず、村の屋敷にいたときに、突然屋敷が半壊しました。外に出ると、村も消えて、村の周りの木が切り株になっていました」
「目からビーム子さんも伏せた?」
「いえ、ただ、うお眩し、となって目が見えない間のことで。ただ、屋敷は全部壊れたのではなく、部分的に残っていました」
目からビームを出させられて眩しさに苦しんでいた時のことなので、どういう流れで屋敷が壊れたのかは目撃していない。
ただ、今身に着けている服や鞄がある部屋などは無事だったのは確かである。
また、問題の瞬間に屋敷にいたこと、そして記憶がないことで、屋敷の外が初めからああだった可能性は否定できない。
「となると、ちょうど範囲の切れ目だった? ……あ、失礼、続けて」
モンブ副隊長が首をひねっている。
とはいえわからないのは私も同じである。
「次に、道中二度、切り株地帯を見ました。昨日の日中と、本日朝、道を歩いている間に。話を聞く限り、本日のものはそちらの皆さんと同じものではないかと推測します」
推測を付け足してみた。
私も貢献できたことだろう。これで胸を張っていられる。えへん。
「なるほど……ほかに気づいたことはないかな?」
「そうですね。一度目、二度目とも、私の前にいた人がいなくなっています。一度目は屋敷の人で、二度目は私を拘束して組み伏せて犯そうとした髭の男でした」
「ほ、ほう?」
「そっちもおおごとじゃないの!? 襲われかけたって、大丈夫!?」
魔法使いベリーが立ち上がって私に詰め寄ってくる。
「ええその、蜂蜜を食べられたくらいです」
「! なんてこと……辛かったわね……」
そして抱きしめられた。
ええと、どういう流れだろうか。
困惑していると、背中をポンポンと叩かれる。
あ、なんだか落ち着く。
私は椅子に座っているので抱きしめられるとベリーの胸のところに頭が来る。
顔が肋骨に当たる。
心臓の音がする。
……いやこれどうしたらいいのだろうか。
私は首を傾げようとしたが、抱きしめられていて動かなかった。