目からビーム初心者とうさみ 12
「む、村が滅んだ?」
門番さんの声が裏返っていた。
確かに服の話をしていたら突然村が滅んでしまったとしたら、耳を疑うことだろう。
話には流れというものがある。
突拍子の無いことを言って驚かせてしまった。
私はなんだか申し訳ない気持ちになった。
しかし考えてみれば、村が滅んだ、というのは結構な大事ではないだろうか。
であれば、最寄りの街の施政者の末端である門番さんに伝えるというのはいかにも正しいことのように思える。
いや、思えるどころではない。もはや義務ではなかろうか。
私の中に被支配者としての意識が目覚めた。
偉い人に報告すればなんだか気が楽になる気がする!
私のような使用人(服)の者は厄介事を抱え込むのではなく、偉い人に投げてあとは知らんぷりするべきなのである。無力な一般人なのだから。余計なことをして邪魔になってもいけないだろうし。
つまり驚かせてしまったことも不可抗力であるということだ。
朗報である。私は悪くなかった。
というわけで、門番さんに報告することにした。
「村が突然更地になったんです。お屋敷は部分的に残っていたのですけれど」
「突然だって?」
「はい。突然。なにが起きたのかわかりませんでした」
私が眩しさに悶えていた短時間の間に一切合切を平たくしてしまった何者か。
申し訳ないがその正体は私にはわからない。
「それから、村の周りが切り株だらけになって」
「切り株だらけ!?」
「あ、こちらへ向かう間にも切り株地帯がありました」
二度ほど。
「切り株地帯? ちょっとよくわかんねぇな……」
門番さんが首をひねる。
見れば一発でわかると思うのだけれど、見てないとよくわからないかもしれない。
見渡す限りの切り株地帯なんて無限の木こり軍団が通りがかりでもしない限り見ることはそうそうないことだろう。
私は説明を加えようとさらに口を開こうとした。
その時。
「切り株地帯だって!?」
道、というか門を挟んで反対側。
男性三名女性一名の集団が、右手側の門番さんを相手に、ワイワイにぎやかにしていたそちらから声が上がった。
「俺たちも見たんだ! ほら、あっちでも見てるやつがいる! なにかヤベェのがいるんだよ! もしかしたら話に聞くドラゴンかもしれない!」
見ると、集団の中心人物と思われる剣を腰に下げた男性が、私を指さしながら門番さんに向けてほとんど叫ぶように話をしていた。
関係ないことと無視してきたが、改めてみると皆さん随分興奮している様子で、あちらの門番さんは押され気味。
剣士の男性が大げさにも思える身振りで何かを訴えているのだが、門番さんが呑み込めていないという状況らしい。
私の状況とちょっと似ている。
「お嬢ちゃん、どうも向こうも関係しているみてぇだ。詰め所に部屋を用意するから、あっちとまとめて話を聞かせてもらえるか」
「あ、はい。わかりました」
門番さんの提案に、私は頷いた。




