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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編

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目からビーム初心者とうさみ 11

「おお、あれが、街!」


 今、私の前にいわゆるひとつの街というやつが見えていた。


 ついに辿り着いたのだ。

 変な姿勢で寝たせいかそれとも前日体を酷使した影響か、痛い体に鞭打って。

 なぜか再び出現した切り株地帯(ただし前よりは狭い)を抜け。

 歩きに歩いてやっとのことで。


 結局もう一度野宿をする必要はなかったが、日は傾きつつあるので何とかといったところだ。


 平原の中にどかんと石積みの壁がそびえたち、道の伸びる先には大きな門が開かれている。

 その高さは私四、五人分かそれより高いくらいだろうか。

 壁の上には歩哨が立ち、門の両脇にも武装した人が控えていた。

 きっと門番なのだろう。そろいの金属の鎧と兜、そして槍を身に着けている。


 そのうちの一方、私から見て右側の門番さんのところに、男性四名少女一名の集団が集まってワイワイとやっていた。


 しかし私はそんなことを気にもせず、大口を開けて壁を、門を見上げていた。


「ふわあ」


 あくびをしていたわけではない。昨晩熟睡できなくて眠いのは確かだけれど。

 感心のあまり漏れ出た魂の発露とでもいうべきか。


 だってすごいじゃないですか。こんなに大きなものを作り上げるだなんて。

 石を積んで、だなんて簡単に言っても、ああやって同じ大きさに切り出して積み上げるなんて運ぶだけで何人必要になることか。

 一つ一つの石の大きさを見ていただきたい。

 高さが私の身長の半分ほどで、幅が身長と同じくらい。奥行は見えないけれどどちらかと合わせているとして、どちらにしてもその重さは想像に難くない。いや難い。私何人分だ。

 どうやって運んだのだろう。魔法だろうか。それともみんなでせーので運んだの? どこから? 

 私なんて、ちょっと荷物と土を運んだだけで疲れてしまうというのに。

 そんな石をこの壁だけで、何個使っているというのか。

 縦に十、十一。横に……ええと、たくさんだ。

 何にしてもこれだけ巨大な建造物を作るなんて、この街を作った人はよほどの力の持ち主だったのだろう。



 まとめると、すごいぞ! でかいぞ! ドキドキしちゃう!



「おい、おいあんた! お嬢ちゃん! 道の真ん中で止まってたら危ないよ! 馬車が通るよ!」


 私が偉大な先人を偲んでいると、左手の方から誰かに呼びかけるような声がする。

 ちらりと視線をやると、門番さんが私を見ながら手招きしていた。

 そして正面を見ると立派な四頭立ての馬車がこちらへ向けて進行中。


「これは失礼しましたっ」


 私は慌てて門番さんのところへと駆け寄ることで道を開ける。

 そして立派な馬車が通り過ぎていくのを見守った。


 つぶらな瞳のお馬さんたち。

 きちんと手入れをしているのがわかる白髪交じりの髭の御者さん。

 大きな模様が描かれた箱型の車体。


 次に、同じような馬車がもう一台。さらに二頭立ての幌馬車が三台続く。

 幌に描かれている模様からして、最初の立派な馬車と同じ集団であるだろうことが想像できる。


「お嬢ちゃん、気を付けねぇと、お貴族様の馬車を止めるようなことになったら斬られっちまうぜ」

「ええとその、ご心配をおかけしまして」


 ぞんざいな口調で注意されるのを受け入れる。

 偉い人の邪魔をするのは、邪魔をした方が無条件で悪である。世界の真理だ。

 この門番さんもまた、この真理を知っており、それがゆえに私を心配してくれたのだろう。職責があるにせよありがたいことだ。


「ありがとうございました」

「え、いや感謝されるようなことじゃあねぇがよ」


 お礼を言うと、門番さんは頬を掻きながら目をそらした。

 なにか見るに堪えないものでもあったのだろうか。

 まさか私の顔とか? もしかして私ってば不細工だったりするのだろうか。


「と、ところであんた、見ねぇ顔だな。旅人、にしちゃあ妙な格好だが」


 私がひそかに衝撃を受けていると、門番さんが慌てたように話を振ってきた。

 その視線は私の胸元あたりに向いている。

 緑の鞄が気になるのだろうか。


 妙な格好と言われ、自分の姿を改めて確認する。

 使用人服。

 鞄が二つ。緑の肩掛け鞄と赤の革の背負い鞄。

 緑の鞄からは緑の葉っぱが顔を出している。賢者の薬草様だ。

 赤い鞄の横に結び付けてあった袋は、食料の消費とともに鞄の中に帰っていた。


 考えるに、使用人服は旅には向いていないと思う。裾が長いし。

 きっとそれを見て妙と言っているのだろう。

 しかしこれは私の一張羅である。着替えはあるが同じものだし。


「これには事情がありまして」


 私は正直に話すことにした。

 この目からビーム子、記憶している限りやましいことはしていないので。


「実は村が滅んでこれしか着るものがなかったんです」

「は?」


 私の言葉に門番さんは顔を引きつらせ、私の顔をまじまじと見つめるのだった。

 ちょっと怖い。

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