目からビーム初心者とうさみ 7
「さて」
私は干し肉をかじりながら今後について考えていた。
改めて問題が一つ。
ここはどこだろうか。
森、いや林の中を抜ける道沿いに居たはずなのだけれど、あたりは切り株だらけ。
かなり遠くに木が見えなくもない。
道はどこだろう?
私は首をひねった。
逃げる際周囲の確認をできなかったのが悔やまれる。
私を運んできたのだとして、居眠りしている間の話。そう遠くではないはずだ。
であれば先ほどの場所に戻れば道が近くにあるのではないか。
が、あの場所へ戻るのはちょっと怖い。
髭泥棒がいるかもしれない。
できれば別の方策を、と思うが。
思いつかな……。
「なにしてるの?」
突然の声に、私は驚いてきょろきょろとあたりを見回した。
「誰もいない? 女の子の声がしたのに……?」
「おねえさん、こっちこっち、視線下げて」
また声がする。
私の正面から聞こえるのに、その姿が見えない。声の言うとおりに視線を下げたが、自分の胸しか見えな……おや、この赤いものは何だろう。リボン?
私は一歩下がりながらリボンから視線を下げた。
そこには金色の髪のちっちゃな女の子が、その深い緑の大きな瞳でこちらを見上げていた。
□■ □■ □■
うさみは一回家に帰って出直した。
てってけてってけ走っていたところ、また森が大規模に均されているのを見つけたのである。
「うっわ、何がいるんだろ」
本日二度目。
近くで発生しているということは同じ犯人の仕業だろう。
こうも大規模な森林破壊だといろいろと影響が出そうである。
が、まあうさみにはそれほど関係がないことだ。
そんなことを思いつつ、現場を眺めながら通り過ぎようとしていたところ、人影が見えた。
「桃色……」
桃色と白という、さっぱりした元森の中に居るとものすごい目立つ格好をしている。
茶色と緑の中に桃色と白。
目に付いたのも当然である。
うさみはせっかくなので近寄って様子を見ることにした。
近寄ってわかったのは桃白さんは、若い女の子だったということだ。
桃色のドレスに白いエプロン、それからボンネット、だっただろうか、フランス人形がかぶっているような帽子、これも桃色。
さらに赤いランドセルに緑の肩掛け鞄。
緑の鞄のひもが胸を大きく二つに分割させているのだけれど、鞄の重さにまるで負けていないというか、何だこのおっぱいすごいな。
帽子の隙間から見える髪は赤みがかった金髪で、帽子の中に入ってるので長さはわからない。
顔の造形は悪くないというか美人さんなのだが、どこか表情が薄く思える。また、疲れているのか若干顔色が悪くみえた。
年齢は十代後半だろうか。
身長高め、胸も大きい。うさみが持っていないものを持っている女の子。
それが仁王立ちしてぽけーっと周囲を見回している。
「ていうか桃色のメイド服にランドセルって……どこからきたんだろ」
懐かしさを覚える。いやメイド服じゃなくてランドセルに。
この世界に来て見たのは初めてである。
皮の加工品だからあってもおかしくはないけども、珍しいことに変わりはなかった。
ちょっと声をかけてみよう。
うさみは女の子の後ろに着地して、大きく正面に回り込んだ。
女の子は鞄に手を突っ込んで干し肉を取り出してかじりだした。
え、どういう脈絡なの。
うさみは正面から近寄りながら女の子の顔を見上げたが、女の子も斜め上を見ていたのだった。そして時々うーんとうなっている。
考え事をして全く気付いていない……!?
気づいたら声をかけようと思ったのだが全然気づかないので至近距離まで近づくことになってしまった。
そこでうさみは気づく。
スカートの中を見られるのがはしたないので空を駆けるときに使っている魔法を解除し忘れていた。
そして解除してから改めて声をかける。
「なにしてるの?」