謎のビームとうさみ 5
うさみはどこにでもいるうさみである。
今日は空を散歩していた。
ついでにどこかの街に足をのばしてご飯でも食べようというもくろみだ。
街まで行くだけなら魔法でサッと行けばいい、あるいは空を行くなら飛ぶ方が楽。
だが、うさみは運動が好きなのでこうして歩いて移動することが多い。
時間もそんなに変わらないし。
空を歩くのは難しくない。
ぎゅっとしてきゅっとしてぽぽん。
これを一歩ごとに繰り返す。
失敗すると足を踏み外して落ち、カバーできなければ死ぬだろうが、その点うさみはベテラン中のベテランだ。
常日頃から、ほんのちょっとだけ、数ミリ浮いた状態で歩くことで練習しているので、久しぶりだから失敗しちゃったという万が一もない。
目をつむってもできるとか朝飯前とかそんな感じのやつである。
空中を足場にするというのはレベル百くらいの魔力操作に長けた者なら、発想さえすればだれでもできるだろう技術である。
得意な人ならもっと早く身に着けられるかもしれない。
一歩ごとにMPを使うので常時というのは難しいように思えるが、うさみは使った分を回収して再利用しているのであんまり消耗しない。
さらにめんどくさいのに絡まれないよう、他者に気づかれないための魔法を使っている。
念のため、スカートの中は伸縮性のある素材でスパッツのようなものを作って履いているので万全だ。
そんなわけで今日は何を食べようかなーるんたったーと歩いていた。
のだけれど。
「え?」
突然斜め下から半径一メートルほどの光線が、薙ぎ払うような軌道で打ち込まれた。
殺気とかそんな感じの前兆は全く感じられず、当たれば死ぬ威力の攻撃が振るわれたのだ。
軌道上に居たうさみは当たらないように体を傾け、念のため十メートルほど自由落下して安全距離を確保。
そして発射されたと思われる方向を見る。
「うわあ」
地上では、森だった場所が盛大に薙ぎ払われていた。
木々がなぎ倒されているのではなく、なくなっている。
それも広範囲、数キロメートルという規模だ。
それを見てうさみは光竜でも暴れているのかと思った
光の竜の吐息は直進する光線の形をとる。今の光線はそれに似ていた。
が、それらしい巨体は見当たらない。
あれだけの幅の光線を放てるとすれば相応の大きさの竜のはずなのだが。
そして追撃も来ない。
次に光線が飛んで行った方角を見る。
特に何もない。雲が吹き飛んでいるくらいだ。
「わたしを狙った……わけじゃない? 失敗してすぐ逃げた? というかそもそも、わたしを認識できるはずはない、よねえ……」
見つからないように魔法を使っているのだから。
これを見つけられるとすれば星光竜くらいだろうが、あれはまだ寝ているし光線の色が違う。
それ以外に知らないすごい光竜がいたとしても最近光竜に睨まれるようなことはしていないし。
一か月前うちの近所の竜からお肉もらったくらい? でもあのこ地竜だし。
じゃあ偶然?
それにしては直撃コースだったけれど。
ただ、軌道が不安定ではあったから……。
うさみは心当たりを探りながら様子をうかがっていた
しかし、追撃もないし思いつかないし。
さらに考えている間に家のカギをかけたかどうか問題が勃発。
一度気になりだすとね、やっぱりね。
というわけで、うさみは今日は帰ることにしたのだった。