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第1章 7話

 僕がいるこの場所。


 見渡す限り一面の森で、その先には何もみえない。というか、ない。

 最初は、本当にここは異世界なのか、と思っていた。


 しかし、さっきミストの記憶が流れ込んできて、その謎は解消した。


 確かに、ここは間違いなく異世界。

 しかし、人間も魔物も、植物を除く生命はかけらもいない。

 何故なら。


「ここ、私の造った世界なんだ」


 ……まぁ、死神とはいえ仮にも神。

 ミストの手にかかればこれくらいはお茶の子さいさい、赤子の手をひねる様なもの……とは行かなかったらしい。

 ミストは、力の大部分をココに置いてあり、寿命の減りを軽減していたようだ。これはかなりの苦肉の策で、死神としての仕事にギリギリ差し障りのないラインだったらしい。


 んで、僕にリンクしたことで延命出来た、と。

 ホントにギリギリじゃないか。メチャクチャ無茶するなぁ。


 それはそれとして。

 それよりも、もっと大事な問題がある。


「これからどうしようかな」


 ミストの記憶によって、この世界のことはそこそこ分かった。

 あまり細かいことはまだ覗いていないからわからないことも多いけど。


 うーん。


「……あ、言ってなかったことがひとつあるの」


「うん、言ってみて」


「……私の代わりに、死神やって♪」


「嫌だ♪」


 とんでもないこと言ってくるもんだよ、ホント。



 ◇◇◇


 なんで僕がそんなことしなきゃならんの?

 第一、僕とリンクしたからもう必要ないでしょ?

 死神として人を殺すことが、死神として生きることに繋がっていたんだから。


「……いやぁ、私もさっき気づいたんだけど、キミとリンクしたことで、キミも既に半分神様になってるんだよね。それが私だから、死神として人殺さないとキミもそう遠くないうちに死んじゃう……かな?」


「は?」


 かな? じゃねぇぇぇぇぇ!

 なんで生きるために人を殺さなきゃいけないの!? ほら、外には魔物もわんさかいるみたいだし、そいつら倒して冒険者として生活するんじゃダメなの?


「いや、その……私と同じように存在ごと消えちゃうかも……てへ♪」


「…………」


 なぁにが「てへ♪」だよ! それホントにまずいやつじゃん!


 ……。

 えぇ……、ホントにやらないとダメなのかよ……。


「……分かったよ、やるよ」


 ありがとー、と言い、にぱっと笑う。……今の自分の顔もこんな笑い方ができるのか。既に自分って分かってるからいいけど、破壊力が抜群すぎる。そこらの男はイチコロだな。多分女の人でも落とされそう。


 ……。


 そんなことはどうでもいいんです。良くはないけどいいんです。


 とりあえず、早くここから出ようと思う。

 この世界……というか、ミストの世界から出なければいけない。

 まぁ、出るのは簡単。

 出たいと思えばいつでも出れるみたいです。


 荷物は……まぁあってないようなものか。いつものように包んで持ってこ。


「あ、その葉っぱとか木の実とか、外には持ってけないよ〜。私の世界の物だからね。外から持ってきたなら別だけど、中から外は無理だよ」


「えー」


 じゃあ食料とかどうするの? 現地調達?


「まぁ、なんとかなるか」


「大丈夫だよー、私の知識が役に立つね!」


 あーハイハイ。ソウデスネー。


「むー、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」


 褒めて褒めてー、とせがんでくる。子供かよ。

 かわいい……おっと。


「……今や自分の顔だからね、あまり褒めようともおもわんのですよ」


「えっ!? 酷いよ何それ! じゃあ元に戻せばいいんだよね! いいんだよね!? ていっ!」


「……ほん?」


 おっ? あれ、ミストの背が低い? いや元からなんだけど……ん?

 髪が……短い! 黒い!


 やったっ! 戻ったっ!


「……で、なんで戻せるならわざわざミストになってたの? 僕」


「それは、そっちの方がリンクしやすいからだよー。それに、女のコになれて少しは嬉しかったでしょ?」


「いや全然」


「うそぉ! ……じゃない!? まさか……!?」


「可愛い花は愛でるのが1番でしょ。何考えてるの?」


「い、いやぁ、そういう人でも、私は気にしないからね……?」


「オイ」


 戻せるなら早く戻して欲しかったねぇ。

 別に嫌じゃなかったんだけどね。やっぱり、見て愛でる方がいいよね? そうだよね?


「そういえば、外に出たらミストはどうなるの? ここに隠れるくらいやばかったんでしょ?」


「んーん、大丈夫だよ。キミの中に入ってれば問題ないから」


 へぇ、じゃあこのミストの世界と同じくらいなのか?

 なら問題ないね。


 ……そうだ。


「ひとつ聞きたいんだけど」


「なぁに?」


「この鎌ってどれくらいすごい鎌なの?」


「えーっとねぇ……神様でも斬れる、かな?」


「……ほぉん」


 くっそやべぇやん!

 とんでもない鎌じゃんこれ! じゃあ最初に適当に振り回して岩がスパスパ斬れてたのはこの鎌がヤバかったからか!


「まぁ、その鎌は一言でまとめると……うぅん、なんて言えばいいのかなぁ……」


 何か、とても渋っている。そんなに言い使い事があるのだろうか? 神を斬れる以上に?


「えーと……」


 はやくはやく。そんなに勿体ぶられると期待しちゃうじゃないか。


「その鎌、私自身なの。だから……だ、大事にしてね♡」


 …………。


 …………ぐはぁっ(吐血)



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