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第1章 6話

 えぇ……。

 誰かいるんですけど。

 玉座に座っている……というには、威厳の欠けらも無い。目を閉じて、俯き気味になっているために、顔はよく見えないが……。


 銀髪。背中の半ばまで伸びている。

 いやぁ、嫌な予感が……。

 座ってる人、今にも動き出しそうな……。


 びくり、と。

 肩が震えた。なんだよ予想通りかよ。というか、今のって寝ピクに近いような……。


「……ぅん? あれ? 私どれくらい寝てたの……ぁいたぁ! 首がっ、首が痛いぃ!」


 …………。


 なんだろうな。なんかこう、緊張感というか……そういう空気が消えちゃったよ。シリアスさん仕事をしてください。


「いててて……。ん?」


 あー、目が合いました。逃げられそうにないかな?

 逃げようとしても、多分体が動かない気がするけど。


「あーっ! やっと来た! もう、女の子をどれだけ待たせるつもりなの? もう少しでホントに死ぬとこだったんですけど!?」


「知らんがな」


 目の前で、可愛らしい女の子がぷりぷりと怒っている。なんとも理不尽な言い草だ。

 それにしても……。


「似てるな……」


「でしょー! なんて言ったって、私だからね!」


「ほん?」


「ここに来る時に、鎌が欲しいって言ってたでしょ? でも、残念なことに鎌がひとつしかなくてね? その鎌を使えるようにするには、キミと私が合体しなきゃいけなかったの」


「が、合体……!?」


「……え? あぁぁぁ違うよ違う、そんな意味じゃないからね!?」


「知ってる」


 逆にそんなこと考えてたの?

 えっちな子だなぁ。


「うぐっ……! と、ともかく、その鎌を使うために、キミが私の力に耐えうる体にしなきゃダメだったの! だから女のコになったの!」


「へぇ……わからん」


 じゃあ最初からそうしてくれればいいのに。

 明らかに無理やりだったよね? 何回外で気絶したと思ってるのさ。


「そ、それは悪かったと思ってるよぅ……で、でも、仕方なかったんだよ……」


 うん? 何故だろうか。

 理由はわからないが、目の前の子の感情が伝わってくる。さっきも、僕の心を読んだかのような反応を……してないな。でもそんな感じがする。


 嬉しい。

 ホントにヤバかった。

 嬉しい。

 やっと会えた。


 本当にそう思っているようだ。


「別に、元の体に戻せとか言うつもりは無いよ。そうじゃないと鎌も使えないし、君が死んで僕も命が危なかったんだろ? むしろ助かるよ」


「ほ、ホント!? ありがとー!」


 感極まったかのように僕に抱きつく。


 ……前までの僕なら固まってたのだろうけど……。

 さっきの話も含めて、僕とこの子は既にリンクしている状態だから、今まで感じたことのない不思議な感じがする。初めてあったはずなのに、懐かしさを感じるまである。


「…………よし、これで準備はできたかな」


「え、なんの……こと……」


 なんだよまたかよ。

 意識を落とさないと何も出来ないのか? いい加減にして欲しい。


「ゴメンね、こうしないとキミの精神が耐えられないから……」


 あぁ、ハイ。わかりました。

 もう好きにしちゃってください。


 身も心も君の物ですよー、っと。



 ◇◇◇


「……ーい、おーい! いつまで寝てるのさ! もう定着して安定してるんだから、早く起きてよー!」


 相手をしてくれ、という駄々っ子のような感情が伝わってくる。

 もう少し寝かせてください。


「何言ってるの! 2日経ってるんだからもういいでしょ!?」


 ふぇぇ、そんなに寝てたのか。

 流石にそろそろ起きようかな。


「……ふわぁぁ……ふぅ、おはよう」


 長い夢を見ていたような……いや、見てないな。

 夢ならこんなに鮮明に覚えてない。


 これは多分、この子の……ミスト・エルクリウスの記憶。

 ただ、大部分にモヤがかかっているかのように思い出せない。


 鮮明に覚えているのは思い出せるところだけ。


 ……ミストには親しい人はいない。心の内をさらけ出すことも出来ず、すべてを1人で抱え込んで……本当に、僕がいなければ存在ごと消え去っていた。


 異世界に来て、最初に人助けをするのは、ある意味定番。盗賊に襲われてる貴族のお嬢様を助けて惚れられるとか。あるあるですねぇ。


 こんな形になったけど、人助けが出来て良かった……のか?

 結構強引なことされてたみたいなんだけど。


 まず、ミストは死神だ。この世界の神の中ではかなりの古参。


 次に、神は信仰によって寿命が決まる。どんな形であれ、人に知られ、崇拝されることで生きる。人間の食事と大差がない。

 ミストも、死神として寿命を迎えた物や、死ぬ運命が定められている人の命を人知れず刈り取るという仕事をしていた。しかし、その特性故に誰にも知られることはなかった。

 結果、存在ごと消えかかっていた、というわけだね。


 最後に、僕がこうなった理由。

 基本、神はほかの世界に手を出せない。しかし、この世界で生きるためには信仰されなければならない。そうすると、死神としての存在意義がなくなる。死神は、人に恐れられてはならない、人に仇なしてはならない。そして、姿を見られてはならない。

 ある意味で、死神としての寿命は最初から決められていた、という話である。


 なので、とった手はひとつ。

 他の世界に干渉し、運命をねじ曲げて僕を、この世界に連れてきた。


 だけど、それでも良かったと思う。

 ミストは、絵に描いたような美少女……いや美幼女だ。その笑顔を見れただけでも満足……。



 そんなわけあるか。

 天地がひっくり返ってもそんな臭いセリフ言えない。言ったら多分、自分を殺したくなる。恥ずかしすぎて。


 実際は、夢にまで見た鎌を振り回せることに心がぴょんぴょんしてます。

 いやー、ついに夢が叶います。


 マイナーな武器を好きになって、よかっt(ry


〇〇「(クルッ) 35億 (キメ顔で)」

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