第1章 5話
はい。起きました。
やっぱり体の節々が痛いです。何が好きで、こんな洞窟で寝なければならないのか。
それはともかく。
「すごいな、この鎌」
まず、色合い。
光を放っているかの如く、程に白い。
……ここは洞窟だった。光放ってます。
次に装飾。
柄には真っ白な蔦の装飾。
刃の付け根には白い薔薇があしらわれている。
……なんか、すごい。
綺麗、という言葉しか出てこない。
これが、女神の言っていた鎌であっているのだろうか。すぐに渡してくれなかったから分からないけど……まぁ、こういうのは見つけた人の物だよね。
そういえば、何か流れてくるような感覚があったけど、何だったんでしょうかね?
何か変わったような様子がないからわからん。
「それにしても、軽いなぁ」
持ち上げて、軽く振ってみる。
なんだろう、重さ的にはテニスのラケットくらいかな? こんなんでホントに武器として成立しないのでは……? 武器の威力は重さに比例するのに。
「重くて扱えないよりはマシかな」
ひゅんひゅんと振り回して感覚を確かめる。
うん、手に馴染む。重すぎず軽すぎず、丁度いい。
「今日の収穫はこれくらいかな? ……帰るか」
カラカラっ。
背後で、何かが転がる音がする。
ほん? 初めて何かしらの変化が起きましたねぇ。
パラパラ……。
頭上から、何か粉のようなものが降ってきた。
ちょっ、口に入った! ぺっぺっ!
……ガラガラガラ。
岩壁が崩れた。
えっ、なんでなんで? 鎌抜いたから、何かしら不思議パワーがなくなって崩れた?ありそう。
バゴンっ!
ズドンっ!
目の前に、岩の塊が降ってきた。天井だったものが崩れて。
……いやぁ、岩……なんか、すごい断面が綺麗なんですがそれは。鏡みたいになってるんですがそれは。見た感じすごい金属質な岩のように伺えるのですがそれは。
ゴゴゴゴゴゴ……!
あっ、やばそう。これ、洞窟が崩落する奴や。……あぁ、今崩れた。出口がないよォ!
そうだ、鎌で斬ればいいか。
「えいっ」
鎌を横に薙ぎ払う。
……。
…………。
あれ?
……そ、そうだよ! 切れ味がいいのに横に薙ぎ払ってどうするのさ! 意味無いじゃないか!
「えぇ……もう無理じゃんコレ」
ガラガラという音とともに、周囲の岩と一縷の望みが崩れ去る。
足場も崩れました。
「うわああぁぁぁ…………」
さようなら。
短い人生でした。
いやぁ、いくら女神に強化されたとはいえ、洞窟の岩が全部降ってきたら流石に耐えられないよねぇ。無理ですわー。
「がふっ」
背中に衝撃を感じ、またしても意識を失った。
何回目だろうねー? おかしいなぁ。そっか、コレ最後か。
◇◇◇
………………ハッ。
あれ? 生きてる? 死んでないの?
岩に押しつぶされて、轢かれたカエルみたいになってないの?
ここは……遺跡? ほん?
確か、鎌を振り回したら洞窟が崩れて、背中強打して、死んで……ない。
なんということでしょう。女神様が助けてくれたのでしょうか?
……ア ホ く さ。
遺跡探索でもしよう。出口は何処にあるのかな?
遠目から見ても、かなりデカい遺跡。時間がかかりそう。
まぁ、片っ端から調べてくしかないんだけど。
まずは真ん中、宮殿みたいなでっかい建物から。
この遺跡のすごいところは、全然荒廃してない。崩れてないし、荒れてもいない。ましてや新築といっても過言じゃないのではないか。
「ホントにこれ遺跡かね? 人が住んでるとかないよね?」
洞窟の崩落した音結構でかかったし、人いたら流石に顔くらい見せるよね?
まぁいっか。
整然とした街並みを眺めながら、宮殿を目指して歩く。
カツン、カツンとブーツが石畳を叩く音が響き渡る。
……あれ? ブーツなんて履いてたっけ?
あまりにも自然すぎて、何も違和感を感じなかった。というか、長年履いているかの如く、安心感すら覚える。
きっと、考えても無駄なんだろうね。
僕の知らないところで起こっていることが、僕にわかるはずがない。
一切合切を無視して、宮殿にたどり着く。
一階は、おおよそすべての部屋が空室。調度品の類はほとんど無く、生活の痕跡すらない。
2階は食堂、調理場、談話室など。他の部屋も、ほとんど客室のような感じだった。ソファーと机しかなかったけど。
3階は、階段を上って正面にデカい扉があった。多分、王に謁見できる部屋。まだ調べてないけど。
その他には書斎や寝室がある。こっちの寝室は王族様かな? 部屋が広い。
が、どの部屋も人の痕跡がない。街が新築だったのも関係ある?
「収穫ないなぁ」
最後は謁見の間かなぁ。何となく最後に回したんだけど、これだと何もなさそう。調べてから早く出よう。出口どこか知らんけど。
扉の前に立ちました。
装飾がないだけに、あまりにも……なんか、威圧感がないというか、寂しいというか。
扉の取っ手に手をかけた瞬間。
ぎぎぎぃぃぃ……。
「えぇ……」
自動ドアとか、使用者に優しいねぇ。
「えぇ……」
……誰かいるんですがそれは。
目を閉じて、ぐったりした感じで玉座に座ってるんですがそれは。
ちょっと短いような......。
まぁ私のペースだと仕方の無い事なのですが。
絶好調の時は話が長くなるかも。不調だと長くなります。更新頻度が。(笑)