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第1章 第3話

 はい。あれから3日経ちました。この世界に来て5日目ですね。


 とりあえず、この3日間でやったことをまとめまーす。


 いくら体が強化されたとはいえ、元が貧弱だったことに変わりはないので、筋トレをしてました。筋肉痛で動くのが億劫なくらい。


 東と西には足を伸ばさなかったが、南は川を超えて、北は行ける範囲で更に奥へ行ってみた。

 南は特に変わり映えもせず、同じような森が延々と続いていた。

 東は、森の様子が変わっていた。主に木々の色合いや特徴が少し違っていた。

 全体的に、少し緑っぽくなっているのは、恐らく苔が繁茂しているからかな。若干湿気が強く、気温が低いような気がする。それに伴って、土も拠点周辺に比べて固く、腐葉土としての価値があまりないようなものになっている。


 うーん。

 肉が食べたい。


 何故か、この森には動物がいない。

 いざ狩ろう、となったら絶対手が止まるだろうが、食べたいものは食べたい。


 そう思って木のうろなども見てみたが、動物はおろか、住んでいた形跡すらも見当たらない。

 本当にこの森はどうなっているのだろうか。



 結局は、木の実と水で何とかするしかないんだね。



 ◇◇◇


 さて。今日は、遂に火を使おうと思います。

 火につられて集まるような動物がそもそもいないから、もはや何も考える必要はなかったのかな。火が木に燃え移るのだけは気をつけなければならないけど。


 火を使って何をするかっていうのも、実はあまり考えてない。

 一つだけ考えたのは、温かいものを食べたい、くらいかな。


 はい。これから木の実を焼きマース。


「どれ焼こうかな」


 木の実は、今のところ7種類集めている。


 やたらでっかい木の実。オレンジっぽい色。

 超まずいが、水で甘くなる木の実。リンゴっぽい見た目と色合い。ただし3回りはデカい。

 少しエグ味があるが、そのままでもまぁ食べれなくはない木の実。緑色。

 ちょっと酸っぱすぎて、もはや食べようとも思わない木の実。黄緑色。

 外側が硬すぎて、食べることすらできない木の実。茶色っぽい。

 明らかに毒あるだろ、思うような木の実。やっべぇ紫色。

 食べるのが怖くて手をつけてない木の実。すごく真っ白。


 ……なんで最後の2つ集めてきたのかな。明らかにやばいやん。

 まぁいいか。



 日を起こす方法は、原始的なキリモミ式と、原始的な石をぶつけて火花を散らせてやる方法。

 ……どう考えても2つ目は無理がある。キリモミ式で頑張ります。


 川底に転がっていた石を、落としてぶつけて何とかして叩き割り、うまい具合に先端が尖った石に変え、それを使って枝を削り棒を作る。何とか真っ直ぐっぽくはなった。


 木の板の代わりに、剥がれていた木の皮を重ねて使う。バラけないように蔦で縛ってます。


 キリモミ式のセットを用意し、ギコギコと動かし始める。



 ……。


 …………。


 ……あっ、やっと付いた。

 2、30分はたってる気がする。いや、無心でやってたからもっと経ってるかも。

 でもやっと煙が立ち始めたので、適度に息を吹きかけて酸素を送り込む。

 それから少しして、やっと火が大きくなってきた。

 そこに、空気を閉じ込め過ぎないように落ち葉を寄せ、段々火を大きくさせる。


「あぁ〜あったまるんじゃ〜」


 おっと、心の声が。

 まぁ誰に聞かれるわけでもないからいいか。



 ◇◇◇


 色んなものを火で炙りました。

 木の実に、葉っぱに蔦。色々と試しました。


 結果はとてもすごいことになりました。


 まずは蔦。

 これ、全然燃えないの。というか、更に硬くなった。

 元々、木にくくりつけてブランコしてても全くちぎれる気配がなかったのに。


 次に葉っぱ。

 ちぎってそのまんまのやつ、濡らしたやつ、モミモミしたやつ、モミモミして濡らしたやつの4つで試したところ……。


 そのまんまだとカッチカチになりました。カッチカチやd(ry

 濡らしたやつは元通りになりました。乾燥したってことですね。

 モミモミしたやつは、なんかこう……ヌメヌメした液体が出てきました。何かに使えそう。

 そしてモミモミして濡らしたやつは、葉っぱに見えなくなりました。なんか表面がスベスベしてる。肌触りがいいので寝床に敷きました。


 最後に木の実。

 これがまた摩訶不思議な結果になりました。


 まずはでっかい木の実。そもそも割れないくらいの硬さだったのが、歪んでぱっくりと割れました。勝手に。中はサツマイモみたいでとても美味でした。これからの主食です。


 次は甘くなる木の実。

 炙った瞬間、スポンジのように水分が蒸発していった。ドライフルーツみたいにしわっしわになり、拳大ほどの大きさに。保存が効きそうだから、それも兼ねてしばらく放置します。食べたらやっぱりまずかったけど、水をかけてからやると甘いままに出来たのは発想の勝利。


 エグ味のあった木の実。

 味も変わらず、とても硬くなり食べられたものではなくなった。この木の実は元から食用ではなかったのだろう。うん。


 酸っぱい木の実。

 一瞬で燃え尽きました。炭になるどころか、ほとんど跡形もなく消え去りました。なんぞコレ。


 茶色っぽい木の実。

 弾け飛びました。中身をぶちまけながら。

 そして臭い。ありえないくらい臭い。シュールストレミング程ではない……と思う。

 思い切り被ったんだけど、これ臭い落ちるのかな?


 残りの、紫色と真っ白の2種類。

 これは、そもそも燃えなかった。

 焼けず、焦げず、歪みもしない。触った感じはただの木の実というか果物というか。こんなことがあるのだろうか。目の前で起こっているわけだが。

 不気味なので拠点の隅の方に置いておこう。


「ん〜ぅ……ハァ、固まってるなぁ」


 作業中ずっと座ったままだったためか、体を伸ばしてほぐすと、ポキポキと小気味いい音が鳴る。


 なんとはなしに空を仰ぐ。降り注ぐ陽の光が、僕の目を僅かに焼く。

 日は頭上にある。どうやらもう昼らしい。



 ◇◇◇


 ちょっと東に行って、岩山でも見てこようかな。

 石とかも集めといたら何かに使えるかもしれないし。

 そろそろ木ばっかだと目がおかしくなりそう。大丈夫だけど。



 ということでやって参りました、東の岩山です。

 大変です。これは事件ですよ!


「……洞窟? 綺麗に整備されてるし……」


 そう。ものすごく綺麗なのだ。隅の方に小石が転がっていることもない。

 岩の壁も、ゴツゴツとしてはいるが、それだけ。横穴が空いているということもない。


 オマケに、すこし明るい。所々にある鉱石の原石のようなものが埋まっており、それが淡い光を放っているようだ。わーぉ。ファンタジー物質はっけーん。


 道なりに進むと、開けた場所に出た。なお、途中に分かれ道はありませんでした。

 広々としており、入口から向かって正面には僕の身長と同じくらいのステージのようなものがある。

 一見すると、講堂のような造りになっている。装飾は何も無いが。


「……ホントに、人がいたんじゃなかろうか。それも大勢」


 天井も高く、10階建てのビルが入りそうだ。一体どうやって作ったんだか。


 何かあるかもと思って探索してみたが、やはり特に何も無い。

 ステージに立って見ると、なるほど、これなら隅から隅まで人が見えるだろう。


 小腹がすいたので、背負っている袋代わりにしている葉っぱから、オレンジの木の実を割ったものを取り出した。

 皮が硬かったが、全力で全身を使うと割ることが出来た。それを皿のように使うことも出来るし、オマケに燃えなかったのだ。優秀すぎてもはや文明の利器。


「いただきまーす。あぁー、サツマイモうめぇ」


 ……もう、これを木の実とは言えないな。美味すぎる。


「……ほん? 紫と白のが光ってる? んなアホな」


 いやー、比喩でもなんでもなく、ホントに光ってます。

 眩しいです、目が開けられません。


「あ……あれ、ちからが……」


 いやだ! こんなところで寝たくない! 起きたら体が痛くなるんだよ!


 そんなことを考えていると、視界が暗くなっていく。


 もうダメですね。諦めよう。

 僕は意識を手放した。


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