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第1章 1話

いやー、遂に念願の初投稿ですよ。

やろうやろうと思って手を付けなかったけど、思い切って始めました!

更新頻度は......まぁ、ゆるーく上げていきますので、長い目で見守って欲しいです!

 突然だけど、ひとつ質問したいことがある。


 皆の目の前に、複数の武器が並べられているとする。


 直剣。

 片手に剣、片手に盾を持って戦うスタイルは、どんな状況でもありありと思い浮かべることが出来ると思う。それだけ堅実で、現実的な取り合わせだ。


 斧。

 振り下ろし、叩きつけ、ぶん回す。質量を持った物は、それ単体で強力な凶器となる。生身で受ければ当然ひとたまりもない。


 弓。

 相手の知覚外、射程外から一方的に攻撃することが出来る、狩りにおいてはなくてはならないものである。


 槍、短剣、はたまた大剣などなど。

 挙げればここらはすぐに浮かび上がるだろう。もちろん、その用途も。


 では、鎌はどうだろうか?

 よく死神が構えているアレだ。

 剣のように、振ればそのまま斬れるかと言われると、そうではない。

 斧のように、質量で圧倒することも出来ない。

 弓のように離れて攻撃出来ないし、短剣のように手数も増やせない。

 突く、という単純な動作では、お巡りさんが犯罪者を確保する時に使う、棒の先に半円状の突起が付いた、いわゆる刺又というやつよりも役に立たない。


 というか、そもそも『鎌』というものは、武器として使用を想定されたものではないからだ。

 主に雑草などを刈り取るための道具に過ぎない。



 では、なぜそんなことを聞いたのか。


 答えは簡単だ。


『貴方はどの武器を使いたいですか?』


「じゃあ、大鎌で」


 僕が実際にその質問をされ、こう即答するから。

 僕が重度のマイナー好きで、超がつくほどの縛りプレイヤーだからだ。



 ◇◇◇


 事の発端は、およそ10分前……いや、5分前か? まぁ多分それくらい前のこと。


『貴方は、不慮の事故で死んでしまいました。それも、私の部下がちょっとした手違いで招いてしまった、本当に貴方には関係の無い理由でその一生を終えてしまったのです』


 確かに、本当に不慮の事故だった。

 僕がゲームにハマるきっかけを作った大手ゲーム会社が作った、新しい完全新作ゲームを買いに行く途中で、命を落としてしまったわけだ。


 ……歩道を歩いていたら、大型トラックがクラクションを鳴らしながら僕の目の前を横切るように、建物に突っ込んできた。おかしい。ここは交差点ではなく、ただの広めの道路なのに。

 当然、車道に大きくはみ出した車体は他の車の動きを止める。……3台立て続けに玉突き事故を起こした。

 そして、それを避けるために左に急ハンドルをきった車が僕の後ろ、トラックと並行になるように建物に突き刺さった。


 僕は今、建物に対してコの字型に事故った車に囲まれている。幸い、僕の周りに人通りはなく、運転手達はどうやら重傷者はいないようだ。


 いや、僕がこんな目にあった時点で既に幸も不幸もあったものじゃない。

 とにかく、早くここから離れようと1歩踏み出すと────。


 ガシャァァァァン!!


 目の前に、建物の看板と思しき物が突き刺さった。アスファルトに刺さるなんておかしいですねぇ。

 その建物は、だいぶ昔からある古い五階建てほどのテナント用のもので、耐震もされていないのと老朽化も進んでいるため、もはや廃墟と言っても過言じゃない。


 きっと、3年前の地震で更にボロくなっていたのだろう。

 トラックの衝突による衝撃で、看板が落ちてきたに違いない。側面に付いていたのもあり、ふとした……いや、かなり大きな衝撃で取れてしまってもおかしくない。


 だからきっと、5階の部分が崩れてきているのも、屋上に付いていた屋根がまた降ってきているのも、おかしいことではないのだ。


「あー……逃げ場ないねぇ、コレ」


 1階の部分は崩れていて、中に逃げ込むのも既に不可能。

 車に囲まれているので逃げ場は完全に失われているのだ。


 運動神経が良かったなら、看板を飛び越え、車を乗り越えて逃げることも出来たかもしれない。しかし、ろくに運動もできない僕には不可能な芸当だ。


 あぁ。新作ゲーム、やりたかったんだけどなぁ。

 フレンドたちと一緒にやる約束もしてたのに。もう話すこともできないのか。

 最後に何か一言でも言っておきたかったものだね。


 頭上に降ってくる瓦礫と看板を見ながら、一瞬で全てを諦めた僕は、呑気にそんなことを考えていた。


「秋本くんっ!」


 ダメだな、走馬灯も流れてないのに好きな人の声が聞こえるなんて。

 神様も分かってるねぇ、最後に愛しの声を聞かせてくれるとは、粋な計らいをするものだ。


 次の瞬間に頭に熱を感じ、それと同時に意識が暗転した。



 ◇◇◇


「とまぁ、そんなわけなんだよね」


『……話の続きをしますね。貴方は私たちの不手際で人生を終えてしまいました』


 俺の独り言を華麗にスルーし、説明を再開する。

 先程から僕の目の前で説明をしているのは、自称女神だ。

 女神っぽい羽衣に、女神っぽいサークレットのようなものを付けている。


 なーにが、『人生を終えてしまいました』だ。勝手に終わらされたんだぞこっちは。


 ……あっ、ハイスミマセンナンデモナイデス。


 そんなことを考えた瞬間、キッと睨まれてしまった。


 死んだのは確からしいし、さっきからあまり体の感覚もない。

 きっとここは天国のような何かで、目の前の自称女神は自称ではなく本当の女神。


 まぁ、だからこそのこの対面なんだけど。


 女神の話は簡単。


 こっちの不手際で死んじゃったので、新しい世界に生まれ変わらせるよー。あ、着の身着のまま行かせるのもアレだから、なんか1つ武器あげるから選んでねー。


 ということだ。

 そして、話は冒頭の部分に戻る。


『大鎌、ですか? 使い勝手のいい剣や槍でなくてよろしいのですか?』


 別にいいだろうに、なぜそんな嫌そうな顔をするのだろうか。ほんの一瞬だったけど。


 正直、鎌なんて使い勝手が悪いなんてものじゃない。リーチが長いから扱いづらいのはもちろん、尋常じゃない握力で掴んでいないと鎌の部分がひっくり返ってしまう。本当に、武器として使えるの? と言っても差し支えない、もはや農具に等しい。というか本当の用途は農具だけど。草刈りだけど。


『選べる武器は1つだけです。貴方の身を守るものですよ? 本当によろしいのですか?』


 なんだろう、鎌が無いということはないだろうが、渋っているというか……本当に嫌そうだな。表情に一瞬だけ出ている。

 そんなこと言われたら、ますます欲しくなるよねぇ。


「はい、大鎌一択で。違うものだったらすぐに首切って戻ってくるんで」


『……わかりました、それでは、貴方が選んだ武器は大鎌ということで相違ありませんね?』


 ここで、僕が望んだ鎌じゃなければまた要らん仕事を増やしてやるぞ、と暗に脅すと、渋々、本当に渋々だが鎌を用意してくれる運びとなった。


「お願いしまーす」


『先程も話しましたが、貴方はこれから生まれ変わります。日本のように平和ではなく、殺人もまかり通ったり、そもそも権力で握り潰されて遺族が泣き寝入りすることも当たり前の世界です』


 あるあるですねぇ、よくある異世界のお話ですねぇ。wktkします、はい。


『あちらの世界では貴方の常識は通用せず、些末(さまつ)なことで命を失うかも知れません。困難を乗り越える力は授けました。くれぐれも、慢心なさらぬよう』


 おー、周りが眩しくなってきた。

『あちらの世界』に行く準備が整ったぽいですねぇ。


『それでは、ご武運をお祈りします』


 あぁー、意識が遠のいていくー。

 あぁー、視界が暗くなっていくー。





 ……。





『チッ! なんで私がわざわざこんなことを……! 早く奴の鎌を準備なさい。でもあのままじゃ渡せないから────あっ』


 あっ、気づかれた。意識が完全に途切れちゃった。もうちょっと教えてくれても良かったのに。

 どんな鎌だろうね? 楽しみですねぇ。


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