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×1 十二時半の魔物  作者: 有栖川優悟
6/8

*陸

おうぎ

 ――ああ、なんだ……私は今まで、ただの人間に支配されていたのか。

 でも、サイボーグに改造されていて助かった。だって、ただの人間のままだったら躊躇ちゅうちょしてしまうだろうから――



 ***



「…君が“ベルセルク”だね?」

「はい、そうですけど?」

 振り向いた先には、骸骨がいこつの仮面を被った明らかに怪しい白スーツの人(ではないかもしれない)がいた。というか私がベルセルクとかどこで聞いたんだよ。

「えーと、自分をずっと苦しめてきた親に見切りをつけに行ったんだろ?」

「なんで知っているんですか。そんなのどこで調べたんですか?」

「見てたからねー」

 だったら先に言ってくれよ。

「なんだっけ、『私は貴方の人形じゃない』…だっけ?直接言うなんて度胸あるね?」

「そう見えるんですか?」

「僕も親から異常な教育を受けていたんだけど、その親には何もやり返せなかった…親はもう他人だ…!」

 いや、あんたの家庭の事情なんて知るか。「親=他人」というのには同意するが。

「そうなんですね。…って、その前に貴方は何者なんですか?」

「僕?うーん…僕は母親のコピーでしかない、ただの人間だよ。今の言葉だと無能力者ブランカーって言うのかな?生きていれば百二十五歳だった」

 え、こいつ百年前の人間?

「生きていれば…?」

「そう、生きていればね…でも、もう本物の僕は死んでる。つまりは幽霊ファントムだ」

 幽霊だったのかよ。だったら私に気づかれずに見ていてもなんら不自然ではないな。

「なんで私に構うんですか?」

「君は、僕ができなかったことをしていたからね…僕は無関係な他人を刺すことしかできなかった。それができるなら最初に親を刺せばよかったのに、あの頃の僕は本当に何を考えていたんだろうか…」

「あー…なるほど。その前に名前を聞きたかったんですけど」

 なんで名前も知らない奴に自分のことを一方的に知られてなきゃならないんだ。

「…僕に、名前はないよ。だから、仮に…ハイセとでもしておこうか。ハイセ、というのはドイツ語で『(…という)名である』という意味らしいから」

「ハイセさんですね。ちなみに私はベルセルクでオーケーです」

「“ベルセルク”、ね…まあ多分、また会うんだろうね。でも安心して。…僕は君だよ」

「…ん?」

 言い終わったと思ったら、その人――ハイセさんとやらは氷でも溶けたかのように視界から消え去った…っておい。いきなり消えるなや。「君は僕ができなかったことをしていた」とか言っときながらなんだよ「僕は君」って。最後まで意味のわからない人だったなあと確信。

 さて、本部に戻らなくちゃ――



 ***



「お帰り。ハイセには会えたか?」

「ハイセってあの…骸骨の人ですか?」

「ああ。実はそいつ、私の知り合いでな?」

「…そうなんですか…」

「というか私が魂だけ呼び起こした。そんでお前にすごく似ている奴がいるから手を貸してやれって」

「そんなことできるんですね」

「なんだって私は死神だからな。魂を蘇生そせいさせるなど朝飯前だ」

「あなたが呼んだんですね?」

「まあな!…扇、君は朝葉原ともはばらに行くといい。というか、アヴァロン自体を朝葉原に移そうと思っている」

「どうしてですか?」

「私たちが静岡にいるのは撹乱かくらんするためだ。朝葉原に移しても、また数年後には移す。朝葉原ならば、扇の目的も達成できるだろう」

「…なるほどー」

「けど、朝葉原に移るのは二年後、つまり扇が中学三年になった時だろう。その時はしきみや菊里くくりも、そこの学校に編入させる。それまで待ってろ」

「はーい」

「その前に扇、君は近いうちに『九十九堂つくもどう』に行け」

「どこですかそこは?」

「朝葉原にあるレストランだ。従業員もほぼ異形だ」

「…えー」

「異形だからってそう身構えるな、ほぼ全員私の味方だ。…そこに二千年以上生きている、両面宿儺りょうめんすくなの双子がいる。そこに行けばハイセのこともいろいろな異形のことも聞けるだろうから」

「はい、行ってみます!」

 そうすれば、ハスターの弱点なども知れるだろうか?

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