ダンジョンをつくろー2
「こんなに大きいダンジョンがカップ麺ができるくらいの短時間で完成かぁ」
俺はダンジョンの中に入って改めてスキルの凄さを感じた。所持ポイントの半分である500ポイントを使う事によって3分ほどで完成したダンジョンなのだが、学校のグラウンドほどの広さがあり、それが無数の部屋に別れている。ゲームで言うと不思議なダンジョンシリーズのような感じだ。まだ初期状態だが2フロアもあって、ダンジョン間の移動はもちろん階段だ。しかも、ダンジョンとは別にホームまであるという至れり尽くせり状態だ。
唯一の問題は、見た目が土を掘って作った洞窟のようなダンジョンって感じで質素なのが問題くらいかな。モンスターも罠も全くないからシーンと静まり返ってるしね。まぁ、これもレベルとかポイントで解決していけるんだけどね。灯りはダンジョン特有の物らしく、壁がぼんやりと昼夜問わずに光っているようでこちらでポイント等を使って準備する必要はないそうだ。
背中で寝てるシロに悪いので、ダンジョンの確認を軽くで終えてホームに移動することにした。ホームはダンジョンとは別の空間に作られているらしい。ダンジョンにあると冒険者がいつ攻めて来るか分からないから安心して休めないというのが理由らしいのだが、正直ありがたいね。
「移動はどうすればいいんだ?」
「クロがいればいつでもできるであります。逆にクロがいなければマスターだけではできないので注意するであります」
これはダンジョンコアの能力でワープを行うらしい。ダンジョンマスターとコアが揃わないと意味がないって事だ。
「じゃあクロ、ワープお願いしていいか?」
「了解であります。では、いくでありますよ」
クロがそう言って指を鳴らした瞬間に足元に魔方陣が現れ、あっという間に移動が行われた。移動した先はダンジョンと同じように洞窟の中みたいだが、ダンジョンとは違い、一軒家があるだけの広さしかない。その一軒家は日本の一般的な大きさの家屋というイメージだ。
しかし、どこかで見たことがあるのか、その一軒家を見ていると既視感を感じる。
「ささ、中に入って作戦会議をするでありますよ」
こちらのそんな心情など関係なく、がらがらと扉を開けてクロはさっさと中に入っていく。
まぁいいかっと、とりあえず中に入ってみる事にする。
一軒家の内装は和風で作られており、部屋は襖で仕切られているようだ。廊下には黒いダイアル式の電話がおいてあり、ほとんどの部屋には畳が敷かれてある。台所や風呂とトイレもある。リビングにはテレビとちゃぶ台まで置いてある。
ここまで見てやっと気付いたよ。これ少し小さいけど国民的アニメの家そっくりやん。それに、異世界でテレビとかダメだろ。何が放送されてるんだよ。
「マスター、このホームはマスターの知識を参考にポイントを利用して可能な範囲で再現しているのであります。テレビとはあの箱の事でありますか?あれはマスターが所有している戦力のステータスを映す事ができる秘密道具なのであります」
「うわー、恥ずかし!今の心の中の声出ちゃってた?」
クロのやつ、ニヤニヤと笑みを浮かべながらぐっと親指を立ててやがる。
こいつ、こっちがイラっとするの分かってやってやがるな?
むかつくわぁ……
「おほん、とりあえず話し合いを始めるぞ。おーいシロ!今から話し合い始めるけど、起きて話し合いに参加するか?それともそのまま寝るか?」
「ごまかしたであります」
「うにゅ?しろおきる!ごしゅじんさまとおはなしするー!」
んーっと背伸びをしながらシロが目を覚ます。
シロがすぐに起きてくれたので、そのままちゃぶ台を囲んで話し合いをする事にする。
「とりあえずさっき言ってたテレビのステータス見れるって機能見せてよ」
「はいであります。では参考までにクロのステータスをこの箱に表示するであります」
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名前 クロ
種族 ダンジョンコア (悪魔型)
ジョブ ダンジョンコア LV1
称号 初期型コア 千変万化
スキル 闇魔法LV2 雷魔法LV1
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おぉ、便利だな。これ見ながらみんなでどうスキル割り振るか考える訳だな。
「なにこれ!?なんかでてきたよ」
俺が感心していると、横ではシロが興奮しながらクロになんでなんでと質問責めしてる。クロはテレビという物がどういった物か分かっていなかったように、どのようにステータスが表示されるのか分からないからか、アワアワしてるな。
仕方ない、助け舟出してやるか。
「静粛に!!ただいまから、円卓会議を開始いたします。ガーディアンのシロよ、席(座布団)に付きたまえ」
そういうと、シロは頭に?マークを浮かべつつも、興味がこちらに移ったようだ。
「がーでぃあん?なんか、かっこいい!ねぇねぇ、がーでぃあんってなぁに?ごしゅじんさま」
「ガーディアンってのはな、ダンジョンを守る1番強いやつのことだ。俺とクロがすごいダンジョンを創るからお前が守ってくれよな?」
「うん!!しろがーでぃあんになる!がーでぃあんになって、ごしゅじんさまも、くろちゃんも、だんじょんも、みんなまもる!!」
シロは目を輝かせ、興奮のあまり座ってられないのか跳び跳ね体全体で喜びを表しているようだ。本当は俺が守るつもりなのだが、シロが俺を守るって言ってたのを思い出し、モチベーションを上げるために言ったのだが効果絶大だな。こっちまで微笑ましくて笑顔になるわ。
親の気持ちってこんなのなのかな。
「マスター、助けていただいてありがとうであります。そして1つご提案があるのでありますよ。さっきも言いましたが、モンスターを創る為には、モンスターを倒す必要があるのであります。なので、近くの山にモンスターを倒しにみんなでいこうであります。ただ、その為には1つ問題があるのでありますよ」
「問題?この辺のモンスターが強いとか?」
「いえ、この辺のモンスターはかなり弱い方であります。ですが、今のマスターは戦う為のスキルや武器等がないので戦力にならないのであります。なので、マスターにはまず初期ポイントを消費して、戦闘スキルを会得していただく必要があるのであります」
こんなちびっこに戦力にならないって言われた……
まぁ、武器もスキルもなければ邪魔か……
2人とも戦闘に役立つスキルも装備も持ってるもんなぁ。
今の俺は防具もないもんなぁ。
「スキル覚えれたら俺でも魔法を使えるようになるのか?前の世界じゃ魔法は存在すらしなかったんだけどさ」
「なら、実際にマスターのスキルポイントを割り振ってみるでありますよ。素質の無いスキルはポイントが足りていても表示自体されないので、使えるようになるか一目瞭然であります」
分かりやすいのは良いことだけど、見るの超こえぇぇぇ!!
せっかくの異世界なのに魔法をなんにも覚えれない結果になったら残念すぎるし、何よりこの2人から才能ないって思われるのもツラいよぉぉ。
よし、とりあえずは1人で先に見ることにしよう。
うん、そうしよう。
「クロ、カタログを貸してくれ。スキルを覚えるよ。でも見られたら恥ずかしいから、スキルは俺だけで見てみるから。何覚えたかは実戦の時のお楽しみって事で」
「了解であります。ではスキルを覚えたら村の裏山で実戦あるのみであります。クロたちは外で待ってるでありますよー」
「ごしゅじんさま、さきにおそといってるねー」
こうして俺はダンジョンで1人、ドキドキしながらカタログと格闘するのだった。