表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/60

バトルなし!?

こちらに文句を言い、項垂れる女の子。なんか聞き覚えのある声と話し方なんだけど、誰だったかな……


見た目は汚れてぼろぼろになった衣服を着ている、小さい女の子だ。ちょっと汚れているけど白髪の混じった黒髪でショートカットというか乱雑に短く切られた感じのボーイッシュな感じだが、顔はそこそこ可愛い気がする。


可愛い女の子なら、ある程度覚えていると思うんだけどな……思いだせん。


「ごめん、誰だったかな?」


なので、ここは怒られるの覚悟で素直に聞いてみる。


「な、なんじゃと!? ま、麿の事を覚えていないと言うのでおじゃるか!? 麿に対してあんなに酷い仕打ちをしたというのに……」


えっ、酷い仕打ち?

女の子に対して、そんな事はしてないはず……

あれ、なんか思い当たるような気も?


「ごめん、本当に思い出せない。誰かと勘違いしてない?」


「そ、そんな……。あっ!? 化粧をしとらんから分からんのかの? ほれ、顔を真っ白にすれば分かるでおじゃる?」


何故か必死に思い出して貰おうとする女の子。そしてどこからか取り出した白粉でバカ殿メイクを作り出す。


ん? バカ殿メイク?


「あっ、そのメイク領主ちゃんか!」


そう、うちのダンジョンにいきなり乗り込んで来た冒険者達の親玉で、スライムのプリンに滅茶苦茶にされちゃった女の子だ。プリンに滅茶苦茶された時にバカ殿メイクが取れて初めて女の子って気付いたんだっけな。


「そ、そうなのでおじゃる。やっと思い出したでおじゃるか! あんなに酷い仕打ちを麿にしたっていうのに、忘れるなんて酷すぎるのじゃ。けど、思い出して貰えて少し安心したのでおじゃる」


思い出して貰えた事に嬉しそうにする、領主ちゃん。なんか忘れててごめんね? でもメイクの印象が強すぎたのと、服装もそんなに薄汚れてなかったし、思い出せなくても仕方ないと思うんだ。


しかし、そんな嬉しそうにしている領主ちゃんに非情な事を伝えなければならない。


「マスター、時間稼ぎありがとうであります。やっと回収が終わったでありますよ」


そう、自分の事を思い出して貰うのに必死になっている間にクロがダンジョンコアの回収を完了させてしまったのだ。

まぁ、元々それを阻止する為に出て来たっていうのに、それを忘れてしまう領主ちゃんも悪いんだけどね。


「おーい、領主ちゃん。自分の世界に入っている所悪いんだけど、ちょっといいかな?」


「その呼び方はやめるのでおじゃる! 麿はもう領主ではなくなってしまったのでおじゃる……。だけど、そんな麿じゃがダンジョンマスターになれるかもしれないのでおじゃる! 追い出されて、行く所がなかった麿じゃったが、あの人はそんな麿に力をくれたのでおじゃる。麿はダンジョンマスターとして力をつけて、キースを助けに行くのでおじゃる!」


ふんすっと力強く答える領主ちゃん。いや、元領主ちゃんと呼んだ方が良いか。

それにしても……言いづらいな、おい!

彼女は俺のダンジョンから街へ送り届けて貰ったはずだが、その後街で何かあったのだろう。そんな彼女にもうダンジョンコア回収終わっちゃった、ごめんねテヘペロ。なんて言えねぇよ! 下手したら自殺物ですよ!?


そ、そうだ。こんな困った時はクロえもんだ! 不思議なポッケで助けてくれるはず!

元領主ちゃんが見ている前なので、助けてクロえもーんと泣きつく事はできないが、クロへ目線で助けを求める。

そうすると、ダンジョンコアの回収を終えてニヤニヤしていたクロは力強く頷き、領主ちゃんへと声をかけた。


「もうダンジョンコア回収終わっちゃったであります、ごめんねテヘペロ」


おいぃぃ!!

何言っちゃってくれてんの!?

俺が言えねぇって思った事まんま言ってるじゃねえかよ!

そんで、言ってやったぜみたいに良い笑顔を向けてるんじゃねぇよ!

本当に悪魔だな、お前は!!


「貴様、何を悪い冗談を言っているのでおじゃる。言って良いことと悪い事があるのでおじゃる。ダンジョンコアなら、そこに……え!?」


クロが回収を終えた箱?のような物に目をやり、驚く元領主ちゃん。

触っているのを見て出てきたはずなのに、もうすっかり忘れていたんだろうな。


「そ、そんな……麿のダンジョンコアが……。キースを助けに行かねばならないっていうのに……。どうして、どうしてどうしてどうして!! 貴様らは麿の邪魔ばかりするのでおじゃる!! 貴様らがいなければ、麿は領主のままでいられたし、ここまで貴様らが来なければ、キースを助けに行く準備がもう少しでできたというのに……」


「その言い分はおかしいのでありますよ。マスターのダンジョンに攻めて来たのはあなた達であります。だから、撃退されても文句など言うのはおかしいであります。それに、ダンジョンマスターになるつもりだったのなら、ダンジョンに冒険者が入ってくるのは普通の事。自分の力を嘆くのならまだしも、こちらを責めるのはおかしいであります」


「黙れ、黙れ黙れ黙れ!! そんな事は、そんな事は分かっておるのじゃ……それでも、麿にはこれしかもうチャンスはなかったのでおじゃる……」


なんか元領主ちゃんの言い分に、悪い気がしてくる俺。勿論、クロが言ったようにこちらとしては何も悪い事などしていないし、それどころか、ダンジョン防衛なんかはやらねばこちらがやられていたんだから当然の事だ。

だけど、目の前で女の子に泣かれるとどうしてもな……


なんて声をかけて良いか分からず、沈黙が訪れる。


しかし、そんな沈黙も長くは続かなかった。


「あら、もう攻略されちゃったの? 私の見込み違いだったからし? それとも、あなた達が凄い腕利きなのかしら?」


声の方を振り向くと、この部屋の入り口に身長が2メートルはあるうかというな筋骨隆々なマッチョがくねくねと歩いて来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ