とにかく進め
「クロ、奴隷のジョブの外し方が分かったぞ」
セバスから情報を得た俺は、クロへとこれからさっさとダンジョンを攻略して、奴隷のジョブを外す為に行動するという方針を伝える為にクロへと声を掛けたのだが……
「は? さっきもクロにそれを尋ねていましたが、分からないと答えたばかりでありますよ? それに、急にぶつぶつと独り言を話だしたでありますが、頭がおかしくなったのでありますかマスター?」
確かに、さっきどうしたらいいか聞いてきたやつが何かした訳でもないのにすぐに分かったぞとか言ってくるのはおかしいと思う、思うけどね?
毎回毎回、言い方酷くない!?
「以前あの子達をアイテムとして取得した事があっただろ? どうやらその時にログが奴隷についての情報を色々仕入れていたみたいでさ、それで解決策を教えて貰ったんだよ」
「なるほどであります。確かにそれはあり得る話なのかもしれないであります。しかし何故自分と会話するだけなのにぶつぶつ話す必要があるのでありますか? 気持ち悪いから辞めて欲しいであります」
また知らず知らずのうちに口に出してたのかもしれないが、そこまで言わなくても……しかし、なんかここまで言われると逆に清々しくてなんとも言えない気分になってくるな……
いやいやいや、危ない危ない危ない。新しい性癖に目覚める前に方針を伝えて、次の行動に移らなければ。
「とにかく、だ。俺の事は放っておいて、まずはこのダンジョンをさっさと攻略してしまおう。スキル等はこの子達もレベルアップするが、ジョブのレベルが上がらないのであれば二度手間になってしまうからな」
「……ふぅ。仕方ないでありますな。では、頑張って下さいよマスター。1人で」
あれ? 俺の聞き間違いかな? 1人でとか聞こえたんだけど……
「あぁ、先に言っとくでありますが聞き間違いとかではないでありますからね? 元々マスターには後で特訓に参加してもらう予定だったのでありますが、2人の特訓をやめてさっさと攻略したいと言う事なので予定を変えてマスターに1人でサクサク行って貰うであります。大丈夫、時間がかかるようであればマスター諸とも魔法で攻撃をするでありますから」
全然大丈夫じゃねぇんだけど!?
むしろ、身の危険をビンビンに感じるから!! やりかねないっていうより、クロなら俺なんか気にせず魔法で攻撃しちゃうでしょ。前だけでなく後ろの事まで気にしないと駄目とはなんて鬼畜な……
「じゃあさっさとGOであります!」
「GOなのニャ!」
「ご主人様、行くのですー!」
なんでお前らまでノリノリなの!?
まぁ、さっきまでは俺もそっちの立場だったから人の事は言えないか……
「仕方ない、やってやるよ! ご主人様のカッコいいところ見せちゃる!!」
こうして俺1人がダンジョン攻略の為に魔物達と戦う事になった。しかも、ダンジョンを早く攻略する為に戦闘をスピーディーに終わらせないと駄目だ。もしも戦闘が長引いたら後ろから魔物共々クロに魔法をぶっぱなされるという最悪のオマケ付きでだ。
そんな厳しい条件だけど、スキルもレベルアップして成長してるしなんだかんだでいける気はしているんだよね。むしろ、色々試してみたい事があったから丁度良かったという感じすらある。さらに成長もできるし、カッコいいところも見せれるしな!
それから1時間後。
生意気言ってすんませんでしたぁぁぁぁぁああ!!
あんなに威勢の良い事を言っていたさっきまでの自分を自分で殴ってやりてぇ。
だけど、最初は順調だったんだ。魔物を遠くに発見した後、分身を出して魔弓の届く範囲に移動し、不意討ち。そして射たれて気付いた相手がこっちとの間合いを詰めようと向かって来るが、分身と合わせて魔弓を撃ちまくりこちらに辿り着くまでに殲滅。このパターンで俺は傷1つ負うことなく順調に進む事ができた……しかし、それは長くは続かなかった。1つ下のフロアに降りた途端にゴブリンが簡素ながらも防具を装備していたのだ。今思えばダンジョンの中の様子を見た上でこちらの対策をしてきたのだろう。しかし、これが効果覿面だった。俺の魔弓での攻撃はヘッドショットなどじゃなければ一撃で倒す事ができないのだが、防具で覆われた事により1匹倒すのにも手間取り、近距離での戦闘に持ち込まれてしまった。
勿論、近距離で戦えない訳ではない。だが、時間がかかると違う問題が出てくる。そう、それはクロによる俺も攻撃範囲に含めた魔法攻撃だ。あいつほんとなんの躊躇もなく妖精族にキレた時に使ったような威力の強そうな魔法を使ってきやがった。後ろからヤバイ気配を察知し、全力で走らなければほんと死んでいたかもしれない。しかも、それに対してやりすぎだと抗議したらこうだ。
「クロはちゃんとマスターに言ったでありますよね、遅ければ魔法を撃つと。事前に言っていたのに文句を言われる筋合いはないのでありますよ。戦闘を早く終わらせる事ができなかった自分の弱さを棚に上げてそんな文句を言う前に、早く終わらせるように考えて強くなれ、でありますよ」
特訓中のクロ怖すぎ!!
やりすぎだとは思うが、正論を振りかざされたら文句も言いにくいので続行せざるを得なかった。
そして、結果ずたぼろになった今の俺がいる訳ですよ!
ただ、俺が死にもの狂いで戦闘やクロの魔法の回避を続けた結果こんな短い時間でダンジョンの最奥と思わしき所までやって来る事ができたようだ。なんかボス前のゴツい扉があるからおそらくだけどさ。
とりあえずここまできたら一端、休んで良いよな……