実戦練習パート2
「「グギャギャ!」」
「フシャー! てめぇーら、こっちに来るんじゃないニャー!」
「ふぇぇぇ、やっぱりこの人数を相手にするのは無理があったのですー!」
やはりというべきか、実戦練習はカオスな展開になって参りました。敵はゴブリンが4匹・スライムが2匹とコボルトが2匹の構成された集団であり、見ているとただ一緒に戦っているというだけで自分勝手に行動するばかりで協力して攻撃などはしていない。その辺は知能等も関係しているのかもな、頭悪そうだし。ちなみに初登場のコボルトって魔物は人型のように二足歩行をしている犬って見た目の魔物だ。
ミケやスミスは相手が集団行動せずに各々自分勝手に攻撃しているので今も逃げる事ができている様子だ。ミケは必死に相手の攻撃を避ける一方で、自分から攻撃をするなんて事はできずにおり、スミスは相手に背を向け全力で逃げ回っている状態だ。
仕方ない、ちょっとフォローしてやるか。おっと、相手が弱いから意味あるか分からないけど、分身を作ってスキルのレベル上げをしとかないとな。
あと、アキヒトとの戦いの結果魔弓のスキルレベル5へと2つ上がったのを、ログの自動取得を強制された時に知ったんだけど、その時に色々技を使えるようになってたので御披露目というか、この際実験してみようと思う。名前でどんな効果が出るかっていうのは分かっているんだけど、どこまでの効果が出るのかは試さないと分からないからね。
半身に構え、右手の掌に魔力を集める。
イメージは自分の中にある魔力を掌に形にするように。
そして、掌に集まってきた魔力を左手と合わせ、右手を引き伸ばしていく。左手は動いている対象へと照準を合わせる。
「まずは、これだ! 時を操る聖霊よ 我が魔力を糧に 彼の者に地を駆ける力を与えよ 魔弓『速』!」
技名と共に魔弓を放つ。
魔弓は勢いよく、対象へと向かっていく。
「ご主人様! ご主人様は絶対助けてくれると思っていたのニャ!」
詠唱文でも分かると思うが、この魔弓『速』の効果はというと対象の速度を上げる事である。つまりは攻撃目的の魔法ではなくて補助を目的とした魔法になるのだが、魔弓を対象に当てる必用があるので何も知らせずに撃つと……
「ギニャー、ご主人様の下手くそ! なんでミケの方に撃っているのニャ!」
やっぱりこうなるか。
まぁ、逃げ回ってる状態じゃ避けられないけどな!
「ニャ……!? あれ、痛くないニャ? 痛くないどころか、何故か力がどんどん湧いてくるのニャ! これなら……殺れるニャ!」
魔弓『速』がミケの体に入り込むように消えていくと、ミケは確かに体に当たったはずなのにダメージを受けていないのに不思議がっていたが、魔弓『速』の効果が出始めるとさっきまで逃げ回っていたゴブリン達へと向き直り、真っ正面から戦い始めた。
「す、すごいニャ! これなら当たる気がしないのニャ!」
元々素早さを売りにしていたミケだけに、さらに補助魔法で早く動けるようにしてやると水を得た魚のように生き生きと魔物達に突っ込み相手が怯んだ隙や、相手の攻撃の隙を突く事により逃げ回っていたのが嘘のように一方的な展開へと変わっていった。
「ご主人様~!! こっちにも早く援護をお願いなのですー!!」
あぁ、ちゃんと分かっているからちょい待ってな。
んー、スミスの場合はどうすっかな。スミスは一発が強くても溜めに時間がかかったり、攻撃の後隙が多かったりで素早さ上げてもあの数だとしんどいしな。ならば、こっちを試してみるか。
「我が魔力を糧に 以下略、魔弓『影縫い』!」
「ご主人様、酷いですー! 以下略ってなんなんです!? なんで私の時だけそんなに適当なんですー!?」
ぶっちゃけて言うと、何個も考えるのしんどかったんだよね。詠唱文ってなくても大丈夫だからさ……
誰かに話したら詠唱文いらないならなんで詠唱文なんて考えてたんだって言われるかもしれないけど……詠唱文があった方がカッコいいからに決まってるじゃないか!
それ以外の理由なんてない! どやぁ
「マスター、下らない独り言は良いでありますから早く援護するのならやってあげるのでありますよ」
うわ、また思った事が口から漏れてたのかよ。とりあえずあんまり待たせるのもあれなので、発射!
魔弓『影縫い』の特性というのは、名前だけで説明いらないかもしれないので簡単に言うが、相手の動きを止める魔法だ。
半数の魔物がスミスを追いかけていたので連発する必要があるが、それくらいは待たせてしまったからやってやろう。まぁスライムは影を狙い難いのでできないけど、勘弁してくれよな。
「おぉ!? これなら簡単に当てられるのです!! 感謝するのですよ、ご主人様。どっかーん!!」
隙の多いスミスの攻撃だが、その分当たれば大ダメージなので複数とはいえ動けない相手なのであっという間に戦闘は終わってしまった。スライム? 最弱の魔物なので、動けたところで何かする前に倒してしまっていたよ。頭を使った攻撃ができたのならばもう少し違うんだろうけど、所詮は烏合の衆という事だ。