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純粋なる者

「なんだチミ達はってか!そうです、ワタスがダンジョンマスターです」


「な、なななななんだっっってぇぇぇぇ!!!!??」


バキバキっと木の枝と共にモフモフとした毛玉のような物が落ちてくる。

驚きのあまり木から足を滑らせ落ちて来たのだろう。


「いっててて……ぎゃーーーー!!!バレたぁぁぁぁぁぁ!!??」


落ちて来てもこちらに気付くと、顎が外れて目玉が飛び出そうなくらいに驚いてくれる。

でかいリアクションをしてくれてありがとう。正直どんずべりすると思ってました。


「……はぁ、なにくだらない事を言っているのでありますか。これだからこの駄マスターは……」


こんな風にね!

だが悲しいかな、クロの反応はもう読めてるんだよ。

しかしそれ以上に悲しいのがシロの無反応。

今は無駄に大きいリアクションでまだ驚いている毛玉のような存在に爆笑している。


「な……なんれすかチミは!!ワタスの事を笑うなんて失礼じゃないれすか!名を名乗るのれす!!」


あ、シロがあまりにも笑うもんだから怒っちゃったか。


「わたし?わたしはシロ!このダンジョンのがーでぃあんなんだよ!えっへん!わたしつよいんだからね!!」


胸を張り、Vサインを毛玉に向けるシロ。

えっへんって……それ可愛いけど全然強そうには見えないぞ、シロ。


「うぇぇェェェぇぇぇぇ!?ほんとだ、超強そうれす!?って、ダンジョンガーディアンれすかぁぁぁぁぁ!?どうして、ダンジョンマスターとダンジョンガーディアンがなんでこんな所にいるのれすかぁぁあぁ!?」


うぉ、そのまま信じちゃったよ。

シロは見た目は可愛い女の子って感じで全然強そうには見えないのにな。翼生えてるけど。


でもこれは……面白いかも……


「君はこのダンジョンに勝手に入ってきた妖精の群れの1匹でいいのかな?私はこのダンジョンを作った、ダンジョンマスターの紙戸真王だ。勝手に入ってきて住み着こうとしているお前達に、神と魔王どちらの力も持っているこの私が直々に裁きを与える為にやってきたとクイーンとやらに伝えるがよい!!」


ふふふ、普段なら恥ずかしいけどこんなノリの良い奴がいるならちょっと悪のりしてもいいよね。


あれ?反応ない?

ちょっとふざけすぎたか?


モフモフした毛玉のようなものを見てみると、何やら俯きぷるぷるしていた。


「ギャーーーー!!!!!???神と魔王の力を両方持っているとか反則なのれすーーー!!!???」


突如モフモフした毛玉のようなものは、両目から涙を流し、叫びながら一目散に逃げだした。


あの様子だと、ひょっとして衝撃のあまり動けなかっただけなのか?


あそこまで反応されると面白いけど、ちょっとやりすぎちゃったかな……


俺が少し罪悪感に苛まれているなか、クロはというと。


「マスターとシロ殿だけズルいであります……」


どうやら自分もやりたかったようだ。


「兄ちゃんら、ちょっとあれはやり過ぎとちゃうか……妖精族は純粋やから何でも信じるんや。あとでえらい事になっても知らんよ?」


「それなら、その情報を知っていて言わなかったアキヒトも共犯だぞ。なぁ、クロ?」


「はい。言う機会ならいくらでもあったというのに、言わなかったのでありますから同罪でありますな」


俺の言葉に乗ってくるクロ。


「ちょっ、何で君らこんな時だけ息ピッタリなん!?」


それはね?


この子がただのドSだからですよ。

俺の事が嫌いだからって理由ではないのだよ。

そうだよね?そうであっておくれ。


「ふんっ、そんな事は良いから早くフィオーレの場所まで連れて行くのであります」


「ちょっ、分かったから!もう言わへんし案内するから蹴らんといてや」


そうして今度は森の中へと歩いていく。


暫く歩いていると、奇妙な光景に出くわした。


「ど、どうか命だけはお助けくだしゃれぇぇぇぇぇ!!!」


「「「勝手に入ってきてごめんなさぁぁい!!」」」


「「「お願いしますぅぅぅう!!!」」」


それは妖精族の群れおそらく全員による土下座だった。

総数50くらいはいるだろうか。

フィオーレのような人型に虫の羽根のような物が生えた妖精もいれば、さっき森に入った時に出くわしたモフモフしたやつがいたりと、それぞれ色々な種類がいる。


フィオーレは花の妖精って言ってたし、それぞれ何かの妖精って感じなんだろうな。


お、あの妖精なんかは赤くてまるで火のような色や容姿だから火の妖精かな?


あれ、火とかだと精霊になるのかな?


あれこれ考えながら土下座している妖精族達を見ていると、クロに横から肘で小突かれる。


「マスター、そろそろ何か言ってあげないと収拾がつかないでありますよ?」


クロの言う通り俺が何か言わないと妖精族達は土下座しっ放しになるだろうし、そろそろ何か言ってあげた方が良いんだけど、ここはクロに任せてやるか。


「クロ、さっきやりたそうにしてたしお前が変わりに言っていいぞ?その代わり、変な事は言うなよ?」


「ほんとでありますか!?マスター、感謝するであります」


クロは目をキラキラと輝かせ、見た事のないような笑顔でそそくさと妖精族の前まで歩きだした。


あそこまで嬉しがるとは、よっぽどやりたかったんだなぁ……


しかし、妖精族にはちょっと悪い事したかなっとまた罪悪感に苛まれるのだった。

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