ご飯はどこに?
もう終わってしまった物は仕方ない。
とりあえず今ある案件をさっさと解決して、冒険者が来ても少しでも何とかできるように準備に取り掛かるしかないな。
うん、そうだ。もうそれしかないね。
では、次の案件にいこう。
えーと、次は……シロか。
なになに?みんなのご飯がない?
これは魔物が増えすぎたから、エサがなくなってしまったって事かな?
それぐらいしかなさそうだけど、とにかく呼んで話を聞いてみるか。
シロちゃんおいでー
「ごしゅじんさまー!」
ドタバタと人型に変身したスライムのプリンの手を引っ張りながらこっちに走ってきたシロが、こちらに飛びこんでくる。
すごいスピードで……
グハッ
少し頭が弱い(しかし、そこが可愛い)変わりにすさまじい運動神経を持つシロさんの突進を回避できるはずもなく(回避できたとしてもシロを避けたりしないけどな!)、さらにプリンの重さも加わった事で腹にとんでもない衝撃を受ける。
「あははー、だきついちゃったよ。なんかピクピクしてるけど、ごしゅじんさまだいじょうぶ?」
「あ、当たり前じゃないか。ははは……」
やべぇ……物理的に死にそうなくらい痛いけど、抱き付いてるシロが可愛すぎて死にそうだ。
シロちゃんマジ天使。
横でどうしていいか分からずオドオドしているプリンも可愛いけどさ。
とりあえず、俺の膝に座るか?
幼女2人を膝に座らせようとしていると、クロが割って間に入ってくる。
「ごほん、(マスターそろそろ後がつかえているので早く話を進めて貰っていいでありますか?)早くしろよクズが……」
「おい、クロ。思っている事と言っている事が逆になってるよ!?」
クズとか酷すぎだろ……
謝るから、その虫けらを見るような目もやめて……
シロに目が行って、クロさんの存在を忘れてしまってごめんなさい!
チッと、舌打ちをしながら座布団に座るクロ。
仕方ない、また怒られるのも嫌だしさっさと話に入るか。
「シロ、みんなのご飯がないって事だけど魔物のエサの事でいいのか?」
「ううん、しろたちのごはんがないの。れいぞーこ?に、ごしゅじんさまがいれたごはんもなくなっちゃったの」
首を振り、少し悲しそうに答えるシロ。
舌っ足らずなのも可愛いなシロ……じゃなかった。
え?俺達のご飯がなくなったの?
ダンジョンポイントを使い、様々な料理をかなり多く保存しておいたんだけどな。
もうダンジョンポイントも使いきってしまったし、これは結構不味いんじゃないか?
とりあえず原因が分からなければ同じ事になるだろうから、シロにもう少し聞いてみるか。
「魔物のエサがなくなったから、俺達のご飯を魔物に与えたりしたのか?」
「ううん、シロたちがかわりばんこでごはんをあげたけど、れいぞーこ?のごはんはあげてないよ?あれはシロたちのごはんだからね!ちょっとつまみぐいはしちゃったけど……」
てへっと舌を出しながら答えるシロ。
ちょっと食い意地が張っている、そんなところも可愛いシロたん!
ダメだ、こんな事ばっかり思ってると自分でも気持ち悪くなってきた。
自重するかな。
とりあえずそんなシロが言うんだ、何人かつまみ食いくらいはしてしまったんだろうが魔物達には与えてはいないのだろう。
シロが見ていないところで誰かがって可能性はあるんだろうけどさ。
「マスター、何か勘違いしているようであります。魔物はエサなど召し上がりませんよ?」
「え?そうなの?じゃあ魔物って何も食べずに過ごす事ができるのか?でも、外で魔物倒しに行った時何か食べている奴いなかったか?」
そう、あれは確かシロと生まれたてのプリンを置いてクロに無理矢理連れて行かれて魔物を倒しに行った時だ。
俺が弓を使い、クロが魔法を使うという事でお互いPTで言うと後衛タイプになる為、草か何かを食べている魔物を狙い不意打ちを仕掛けて倒していたのだ。
「マスター、外の魔物は草や土などに含まれた魔素を体に取り入れる為に食べているのであります。しかし、ダンジョンの中では魔素で満たされている為食事をする必要がないのであります」
なるほど、そーいう事なのか。
そうなると、料理を食べたのは魔物の可能性は低いって事になるね。
そうなると、俺達の中に犯人がいるって事か?
しかし、冷蔵庫の量は1週間をこの人数で乗り切れるくらい大量の料理が入っていたんだから、全員がつまみ食いどころか本気で食べても無くなるとは考えにくい。
なら、誰かが侵入してきた?
牧場だからつい忘れてしまうけど、ここは一応ダンジョンの中だぞ?
アキヒトの例があるから絶対じゃないけど、そう何人もここまで侵入されるとは思えないし、真正面から来るのなら入ってきた時点で分かるだろう。
ちなみに牧場へ来ていた村人やリカルドさん達は勝手に入って来ていた訳でなく、ダンジョンの入り口でワイワイ話していた所をシロが連れてきたらしい。
うむむ……分からんな。
ご飯がない分に関しては、村の人達に分けて貰おうと考えているから解決はできるだろうけど……
俺が必死に考え唸っていると、呼んでもいないのにアキヒトがやってきた。
「兄ちゃん、次の番はまだかー?ん?何唸ってるんや?」
「あぁ、突然冷蔵庫に入っていたご飯がなくなってな。ご飯自体は確保できるとは思うんだが、なんで急になくなったのか分からなくてな……」
「あー……兄ちゃんそれ、ワイ知ってるかもしれんわ」
ん?なんだって?