クリエイト
さて、勇者(笑)アキヒトの現段階の実力を見る為に魔物を順番に戦わせようと思うが何からいかせるかな。
1番弱い魔物といえばスライムなんだけど、スライムはプリンしかいないしな。
「クロ、今いる魔物で1番弱い魔物ってなに?プリンじゃないよな?」
「プリンはもうマスターより強いでありますよ。マッドラットなら1匹だけの能力なら1番弱いであります。マスターは分身スキルを使うつもりでありますね?ならマッドラットの次に弱いのはマスターの分身かと」
分身スキルってそれくらいの強さなのか。
まぁ、勝つのが目的じゃないから良いけどね。
スキルを確認するのと、勇者(笑)アキヒトの強さを確認するってのが第1だ。
そんな訳で牧場へとやって参りました。
アキヒトの実力を見たいからって事で、妖精さんのフィオーレにはシロ達と観戦しといてもらう事にした。
ただ、伝えた時のアキヒトの顔は絶望的だった。
どうやら、アキヒトはフィオーレに手伝って貰う事により今まで戦ってきたらしい。
逃げる時以外ね。
フィオーレってあんな小さいのに強いんだって聞くと自分よりも強いって言っちゃったよ。
何でも、フィオーレは様々な魔法を使えるとか。
アキヒトは魔法を使えないのか?って聞いたところ、全く使えないらしい。
今回ダンジョンで使ってなかったっけ?ってクロが聞いたところ妖精のフィオーレがアキヒトが使っているように見せながら魔法を使っていたらしい。
そーいやステータス見た時に攻撃系のスキルが一切なかったな……
これ……マッドラットにも勝てないなんて事はないよな?
まさか……ね?
どういう戦いをするのかは気になるけど、マッドラットがアキヒトと戦っている間に分身スキルを試しておかないとダメなので結果だけクロに教えて貰うとしよう。
よし、練習だ。
まず、分身スキルの使い方なのだが、魔弓と同じようにイメージをする事が大事らしい。
魔弓だと手のひらに魔力を集め、それを丸い水晶程の玉のような形を作り、それを弓を使いながら引き伸ばして矢の形を作り放出するといった形だった。
分身スキルの方を試してみると、魔力を集め形にしていくという点では一緒ではあるのだが、作り出す大きさと形に違いが出てくるようだ。
分身を作るのは俺の魔力からなので、魔力を込める程大きくなり、大きい程強くなるようだ。
形は自分が扱うのだから自分の形に近い方が扱い易くはなるのだろう。
ただし、これは今試してみて分かった範囲でしかない。つまり、魔力の使い用によっては大きさを小さいまま強い分身を作る事が可能かもしれないし、形にしても練習すれば人型よりも違う形の方が力を発揮するかもしれない。
例えば、移動と攻撃を両立させる為に馬の脚と人の上半身を併せ持つケンタウロス型であったり、いっその事移動だけなら車やバイクなんかもありじゃないか?
それが可能なのかはまだ分からないけど、もしも可能であるならば俺の想像力次第でできる事が無限に広がるんじゃないか!?
問題は、使う魔力を多くすればする程扱いが難しくなり形を作り込むのが難しいって事だな。
とにかく、それを補えるのは数をこなす以外ないだろう。あとどれくらい練習できるか分からないけど、特訓だ!
それからどれくらいの時間が経っただろうか。扱いがとても難しくて失敗ばかりが続いていたが、俺は分身作りに没頭した。時間やアキヒトの戦いなど全く気にせずにだ。
だってめっちゃ楽しいんだよ。
例えるならそうだな……ミニ四駆を作る時の過程に似てるかな。あれってマシンを1回作ったら終わりじゃないでしょ?
きちんと完走できるようにどのパーツを付けるか考え、あのパーツの方が良いなど試しながら自分なりのマシンを作り上げていく。さらにきちんと完走できるようになってもまだ終わりではなく、より速く走らせるように試行錯誤していく。その過程が似ているんだよね。分身も魔力を集中させて大きくし、形を作り込み、そして試しに動かしみる。最初は大きくした魔力の形を変えるだけでも失敗しまくっていたけど、今では動かす事までできるようにはなった。とはいえ、形は丸の形を削ってかろうじて人型といえる程度であり、動かすのも機敏な動きなど全くできない状態だ。
そんな不出来な分身なのだが、不思議な事に俺と同じスキルを使用する事ができるのだ。まぁ魔弓の事だな。
だか分身が魔弓を使う時は少し違いがある。さっきの説明の通り魔弓を使う時はイメージする事により手に魔力を集めるのが大事なんだけど、分身はというとこれが全くいらない。なので、すぐに弓を構えて撃つことができる。
しかし、魔弓を撃てば撃つ程体が小さくなっていく。これは、分身自体が魔力の塊だからなのだろう。そんな訳で魔弓を使えるのは良いが、それだけに頼る事ができないという問題が出てきた。
魔弓以外の武器の扱いが必要だろう。だけど、こんなちんちくりんな分身が持てる武器があるのだろか?それに……そもそも持てるのか?
そんな事を分身の姿を操りながら考えていると、アキヒトの大きな声が聴こえてきた。
「これで終いやー!」
分身スキルを使っている時は分身目線になり、自分本体を動かせないのでアキヒト達の試合内容を確認する事ができないのだが、掛け声の内容的にアキヒトがマッドラットへ止めの一撃を与えるとこって感じだろう。
そしてその掛け声の後すぐにヂューっという声が聴こえ、ドサッと地面へ倒れこむ音がした。
恐らくはアキヒトがマッドラットを倒したのだろう。
そろそろ時間って事だな。
作った分身を連れアキヒト達の方へ戻ると、予想通り試合が終わったところのようだった。
「そこまで、アキヒトさんの勝ちクマ!フィオーレちゃん早くねずみさんを回復させてあげてほしいクマ」
「任せて!」
クマに回復魔法を頼まれたフィオーレはふんすっと、気合いを入れすぐに回復へと取り掛かった。
幸い致命傷ではないようで、まだダメージはあるみたいだがすぐに起き上がる事ができたようだ。回復魔法便利だな。
そしてフィオーレはそのままアキヒトの治療へと取り掛かる。
あれ?アキヒトさんなんかボロボロなんですけど!?
これは……分身でも勝ち目あったりするのか!?