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勇者?

あれお前だったんかぁぁぁ!?

えっ、という事はシロとの戦闘から逃げ出した上でこっちにやってきたって事?

でもこのホームはダンジョンとは別の場所にあって、繋がっていないのにどうやって?


「アキヒト殿、あなたが冒険者の内の1人であった事は分かったであります。しかし、それだけでは説明できない事があるのであります。あなたはシロ殿との戦闘中に消えてからここまでどうやってやってきたのでありますか?」


俺が思っていた事をズバリと聞いてくださるクロさん。

さすが、頼りになりますねぇ。


「あぁ、そこは俺のスキルのおかげなんやけど、言わないとあかんか?」


「是非お願いするであります」


相手にとってはスキルは秘中の秘なのかもしれないが、こっちはそれを教えて貰えないと安心して過ごせないからね。契約して、都合が悪くなったら逃げられるって事になりかねない。


「まぁ大したスキルやないしええか……なんか兄ちゃん達はワープしたって話をしとったけど、そんなええもんやないねん。自分をその場と同化っていうか存在感を消すって感じのスキルやねん。兄ちゃん石ころ帽子って知ってるか?あれ自分を道端の石ころと同じようにしか認識されへんようなって、自分の存在感をなくすって物やったやろ?あれと全く同じなんや。つまりワイはあの場にずっとおって、シロちゃんに着いていったんや。そんで、この場でスキルを解いて気付いてもらったってだけやね」


おいおい、石ころ帽子とか懐かしいな!

そのネタを知っているって事はやっぱりこいつ俺と同じ世界出身なんだな。


まぁ石ころ帽子のは置いておいて、いなくなった冒険者の謎と勇者アキヒトの突然の出現の謎は一気に解決って訳だ。


ちなみにシロがダンジョンとホームを勝手に行き来できていたのは、クロが毎回誰かが向かう時に転移をさせるのはめんどくさいし効率が悪かったので転移紋を牧場に設置していたからだ。クマ達が仲間になった時に牧場の世話もしてもらおうって事でそうなった。


「マスター、この人の言う事に嘘はなさそうであります。自分の切り札であるスキルの内容まで明かした訳でありますし、試しに契約を行ってみるのも悪くないと思うのであります」


おぉ、クロさんからゴーサインがでた。

契約かぁ……どうしよっかなぁ……しちゃっても良いとは思うけどデメリットとかないのかなぁ?

今のところ話を聞いているとメリットはあってもデメリットがなさそうなんだよね。契約しとかないと損って感じ。

じゃあ何を迷ってるんだって?だってそんな美味い話には表裏一体で危険な事もあるって思うんだよね。まぁ、それは何だって言われたら分からないんだけども。


「兄ちゃん、このお嬢ちゃんもこう言ってくれてるし、契約してくれんかな?」


勇者アキヒトが痺れを切らしてこちらに話しかけてくる。

いつまでもうだうだと悩んでいる訳にもいかないし、そろそろ決め時かな。アキヒトもここまで話してくれた訳だし。


「分かった、契約しよう」


「ホンマか!?ホンマにええんか兄ちゃん!?」


「あぁ、それで何をしたらいいんだ?まさか、契約書にサインするとかじゃないよな?」


「兄ちゃんありがとうな……っぐす……ホンマにありがとうな……これでやっと……俺はあいつを助ける為の特訓をできる……」


契約のやり方を聞きたかったのだが、アキヒトは嬉しさのあまり感極まって泣き出してそれどころじゃなさそうだ。

妖精のフィオーレも一緒になって泣いている。顔は笑っているから泣き笑いって感じか?


なんかここまで喜んで貰えると、さっきまで何か裏があるんじゃないかとかずっと考えていたのが馬鹿馬鹿しくなるね。


5分程で2人(フィオーレは妖精だから人で数えていいのか分からないが)はようやく落ち着きを取り戻し、契約の話を再開する。


「す、すまんな兄ちゃん。どうやって契約するのかって話やったな?それはダンジョンマスターの能力でワイを指定して貰ってそれに応えるってやり方みたいなんやけど、分からへんか?」


なに?こちらの能力だと?全く知らないんだけど。

でもクロさん知っているって言ってたしそうなのかな。


「クロさん?ああ言ってるけどどうなの?」

クロを呼び寄せ、アキヒト達に聞こえないように尋ねてみる。


「マスター、もちろん知っているのであります。後ろから私が言う通りにあの人達に話すのであります」


そして再びアキヒトに向き直り、さも最初から知っていたかのように話す事にする。


「あぁ、あれか。思い出した思い出した。最初に説明だけ見たけど忘れてたわー。アキヒト、俺が今から契約の儀を開始するからしっかり応えてくれよ?」


「おぉ、任せとき兄ちゃん!」


(問おう勇者アキヒトよ、汝はこのダンジョンマスター紙出魔王と契約を結ぶ意思はあるか?)

「問おう勇者アキヒトよ、汝はこのダンジョンマスター紙出魔王と契約を結ぶ意思はあるか?」


「勿論だ!」


(ならばこのダンジョンコアに汝の血を注ぎ、汝の意思を示せ)

「ならばこのダンジョンコアに汝の血を注ぎ、汝の意思を示せ」


え、ダンジョンコアあなたですけどクロさん?

疑問に思いながらも言われた通りに台詞を言っていると、手の平程の大きさで黒色のそれっぽい石を握らされたのでそれをアキヒトへ見せる。


アキヒトは無言で頷き腰に下げていた剣を少し抜き、指先を滑らすように傷つける。


そして、告げる。


「我、山田秋人は紙出魔王と契約する。汝の力を我に与えたまえ、さすれば我は汝の剣となろう」


台詞を言い終えたアキヒトはその傷ついた指先から流れる血を黒色の石に垂らし、騎士が王様にするように片膝をつく。


ぶふっ、ダメだ……笑い死ぬ……腹がよじれる……

台詞が中二臭すぎるぞ……我って……

そして、こいつの本名山田秋人かよ!!

勇者山田……(笑)


俺が笑いを必死に堪えていると、何やら青く体が輝いてきた。

クロのね。

ただ、クロは俺のすぐ後ろに隠れるようにいるから勇者アキヒトこと山田秋人からは見えず俺が光っているように見えるだろう。


(終わったであります。ここからは普通に話して大丈夫でありますよ)


どうやら今の光が契約が成立したという証であったようだ。

この世界進化とかなんかある度に光ってるな。演出過多にならなければいいけどな。


っと、アキヒトが片膝をついたまま、まだかまだかと痺れを切らしてこちらをチラ見してやがる


「アキヒト、契約は成立だ。これからよろしくな」


「ありがとーな、兄ちゃん。これからよろしく頼むわ!」


俺の言葉を聞き、アキヒトは満面の笑みで抱きついてきた。

おい、俺はそっちの趣味はないからな。


冗談はさておき、契約した事によって何が変わったのか確認してみるか。

カタログを開き、ログをまず確認する。


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山田秋人と双務契約を結びました。


・契約を結んだ事により、山田秋人はダンジョンモンスターと同様に育成やダンジョンへ転送可能になります。カタログのダンジョンモンスターの一覧に追加。ステータス確認可。


・契約を結んだ事により、山田秋人のスキルを入手する事ができるようになりました。

『危機察知』『気配遮断』『韋駄天』『認識阻害』 『忍び足』

『幸運』

・契約を結んだ事により、成長補正が入ります。

『速度』『運』


・山田秋人のホーム・ダンジョンへの立ち入りを許可しました。


=======================================

あれ?あれれ?

アキヒトさん?あなた勇者だよね?

契約した事によって入手する事ができるスキルと成長補正共に逃げる事に特化しているんですけど!?


急いでダンジョンモンスターの一覧から山田秋人のステータスを確認してみる。


=======================================

名前 山田秋人 

 種族 人間

 ジョブ 勇者(笑) LV5

 称号 『異世界召喚者』『最弱の勇者』『愛されし者』『幸運』

 スキル 『危機察知LV5』『気配遮断LV6』『韋駄天LV4』『認識阻害LV2』『忍び足LV3』

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だ……騙された……

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