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契約しません?

「契約?突然そんな事言われてもよく分からないんだが……とりあえず、説明してくれよ」


勇者アキヒトから倒したい敵がいるから契約しないかと持ち掛けられたが、突然そんな事言われても困る。契約って言われても何がどう変わるか全然知らないんだからさ。


「すまんすまん、ついつい兄ちゃん話しやすいから順序飛ばして話してしもたわ。とりあえず契約ってのは知ってるか?もちろん、契約って言葉の意味とちゃうで?ダンジョンマスターとワイとの契約についてって意味や」


「知らん!教えてくれ!」


分からないので開き直って相手に堂々と尋ねる。


「マスター、それ聞く態度じゃないでありますよ……(クロは契約について知っているでありますが、クロが知っているという事を教えたくないのでそのまま聞くであります。もし、相手の都合の良い嘘を入れて来るのならまた教えるであります)」


俺の肩に手を置き、はぁ~っと溜め息をつきながら文句を言いながら耳元に顔を寄せ、アキヒトに聞こえない小声で話すクロ。器用だなこいつ。


「ハハハ、潔いなぁ兄ちゃん。やっぱり面白いわ。契約ってのは簡単な話、ワイの力をダンジョンの防衛とかで貸したる代わりにダンジョンを使わせてくれって事やねん」


「用心棒に雇えって事か?契約ってのは守ってやる代わりに金をって事か?お金はないし、戦力とそてはシロもいるから大丈夫だけどな……」


「兄ちゃん、惜しいけどちょっとちゃうねん。雇えっていうのとはまた違うくて、兄ちゃんの戦力になる代わりにダンジョンを修行の場として使わせてほしいって事やねん。兄ちゃんにとって悪い話やないと思うんやけどな。それに、ダンジョンを何度も潜ってきたワイやからこそできる助言とかもあると思うんや。頼むわ、兄ちゃん!」


「私からもお願いするわ。どうかアキヒトに力を貸して上げてほしいの」


アキヒトと精霊のフィオーレが一緒になって俺に詰め寄り頭を何度も下げ、お願いやっと必死に頼み込んでくる。声が震えているのは気のせいだろうか。恐らく何らかの訳ありではあるんだろうな。

そのあまりに必死な様子に、自分だけでは断り切れそうにないのでクロに目をやり助けを求める。


「どうして他のダンジョンではダメなのでありますか?こんな田舎のダンジョンまでわざわざ来なくても、ダンジョンなんて他にもあるでしょうに」


クロが質問をしてくれたおかげで、2人は少し落ち着きを取り戻したようだ。


「す、すまんな兄ちゃん、取り乱してしもたわ……嬢ちゃん、何で他のダンジョンやあかんのかって話やけど、それは他のダンジョンは誰かしらと既に契約しているからやねん。だからこそ、こっちの世界に来たばっかりのダンジョンマスターを探しとったんや」


へぇ、他のダンジョンはほとんどが契約しているのか。それは良いことを聞いた。

だけど、ほとんどのダンジョンが契約しているとなると疑問が残る。

確かに契約することによりお互いWIN-WINの関係だとは思う。

だけど、ほんとにそれだけなのだろうか?

それだけならもっと契約をしていないダンジョンがあって良いと思うんだ。これは予測だけど、ダンジョン側にも契約を結びたい理由ってのがあるんじゃないか?

分からない事は直接聞くことにしよう。アキヒトは放っておくとずっと話していそうなタイプだから自分からポロッと本音をこぼしそうだけど、鎌をかけるというのは俺にはできそうにないしな。


「ダンジョン側は他にも利点があったりするのか?ほとんどのダンジョンが契約しているとか、それ以外にも何かあるとしか思えないんだが」


それに対するアキヒトの反応はこうだ。


「ん?そう言われたらそうかもしれんなぁ……兄ちゃん、ごめんやけどワイにはダンジョン側の詳しい事は分からんわ。ただ、ダンジョンマスターと契約をして、そのダンジョンで修行すると普通にダンジョンを潜るよりも強くなれるってのを聞いただけなんや」


全く知らないという事らしい。

本当の事を言っているのかは俺には分からないが、少なくとも嘘をついているようには見えない。

クロへと目線を向けると、クロは無言で首を横に振った。

クロも契約についてそこまでは知らないようだ。ダンジョンコアであるクロでさえ知らないのであればアキヒトが理由を知っていなくてもおかしくはないか。


「なぁ、倒したい敵がいるって言ってたけど、どうして契約ってものに頼ってまで強くなりたいのか聞いていいか?別に契約しないと強くなれないって訳じゃないんだからさ……」


「そ、それはやな……」


俺の質問に言い淀むアキヒト。

話しにくい事情があるのだろう。

だけど、契約してパートナーとなりたいならその辺の事情も話しておいてくれないと、とてもじゃないが信頼はできないな。


「アキヒト、話しにくいねは分かるけど全部話さないと契約なんかして貰えないよ!」


アキヒトが話しにくそうにしているのを見かねてなのか、妖精のフィオーレがアキヒトに発破をかける。


「せやな、フィオーレの言う通りや。ありがとうな、お前には励まして貰ってばっかりやな。俺には勿体ない位のパートナーやで」


「そんな事ないよアキヒト。私なんかアキヒトにしてあげれる事なんかほとんどないもん……でも、アキヒトはそんな私にも優しくしてくれるから……」


急に2人だけの空気を作るアキヒトとフィオーレ。

あれ、何か今忘れられてる!?

俺とクロの存在を忘れたかのように目の前でイチャイチャするのやめて貰えますかねぇ!?

ちょっとイラつき始めると、ようやくこちらに気付くアキヒト。


「す、すまんな兄ちゃん。忘れてた訳じゃないんやで。とりあえず話すわ」


そしてようやく語り出す。


「あんな、ワイはこの世界にやってきてかれこれもう3年程経つねんけど、この世界で出会った女性と恋人になったんや」


えっ?まさかまたノロケ話!?

こんな仲の良い妖精がいてさらには恋人までいたのかよ、このリア充め!


「兄ちゃん、そんな顔しやんと最後まで聞いてや!んでな、フィオーレも含めて3人で楽しくやっていたんやけど、ワイの恋人メアリーが神に目を付けられたんや……そして、ワイも必死に抗ったんやけど、全然力足りず無理矢理に連れていかれてしもてなぁ……だからはよう強うなってあの糞神からメアリーを取り戻すんや!だから兄ちゃん頼む!」


そして再び頭を下げるアキヒト。


「えっ、神様ってそんな事するの?俺が会った時は優しそうな感じだったけど……あれあの人はゲームマスターだからまた別?」


「兄ちゃんそらまた別の人やで。そっか、まだ兄ちゃんそんな事も知らんのか。この世界にはな、神や魔王や勇者なんてのはいくつもおるんや。ワイも勇者なんてやってるけど、ランクも下から数えた方が早いしなぁ。そんで中にはさっき言ったみたいな糞みたいな神までおる訳や」


神や魔王が何人(人でいいのか?)もいるって?

それだとそこらじゅうで戦争が勃発していそうだし、宗教とかもたくさんありそうだなぁ……


「勇者が何人もいるって事だけど、この世界の勇者って魔王を倒すのが目的だったりするの?」


ふと疑問に思ったのでこの際ついでに聞いてみた。


「いや、勇者は単なるジョブやで?ダンジョンマスターもなんかやらなあかんこととかないやろ?戦闘向けかとか除いたら一緒や一緒」


なるほど、単なる戦闘に長けたジョブって感じなのか。

そーいえばさっき勇者の中では下から数えた方が早いって言ってたけど、どれくらいの強さになるんだろ?聞いてみるか。


「なぁ、強さは下から数えた方が早いって言ってたけど、どれくらいの強さになるんだ?」


「あぁ、強さはあの天使ちゃんより少し弱いくらいやな。シロちゃんやっけ?ありゃ勝てそうになかったな」


ん?まさかその時から見てたってのか?

いや、でもあの時はテレビで見てたから気づかないはずかないしなぁ……


「なんでシロ殿の強さを知っているのでありますか?さすがにその時には近くにいてなかったと思うのでありますが……」


クロも同じように疑問に思ったのか、アキヒトに尋ねる。


「ん?実際に戦ってた側いたんやけど……分からんか。冒険者で逃げた1人いたやろ?あれワイなんや」


「「えええぇ」」

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