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ダンジョンガーディアン

「はぁ……はぁ……お、お前……一体何者なんだよ!?俺様の攻撃が全く当たらないなんて……普通じゃないだろ!!」


冒険者は攻撃をいくらしても当たる気配がなく、笑顔で歌い続けながらシロに対し、怒りの感情よりも、得たいの知れない恐怖心の方が勝ってきたようだ。


「わたし?そーいえばおじさんはじぶんのなまえをいってたのに、わたしはまだいってなかったねー。ごめん、ごめん。わたしのなまえはシロ!わたしはごしゅじんさまに、このダンジョンのがーでぃあんをまかされたんだよ!だからみんなをまもるために、わたしがダンジョンにはいってねずみさんをいじめたおじさんたちに“メッ”するよ!」


シロは翼を広げ、可愛らしくポーズを決め、そう宣言する。


宣言された冒険者は、シロの宣言した事を理解できていないのかぽかーんと呆気に取られた様子だ。


「……はぁ?こんなガキがダンジョンの最後の砦って言われてるあのガーディアンだぁ?ありえないだろ……でもこの強さは……」


冒険者は散々攻撃を避けられたのでシロが自分より強いという事は認めたようだが、幼い見た目とダンジョンのガーディアンの印象との差があるのか、言われた事を信用できないでいるようだ。


まぁあんだけ差を見せつけられたら、強さに関しては認めざるしかないよな。


まぁ、強くてもシロにダンジョン守ってますって言われても冗談にしか思えないよな……ちょっと同情しちゃうな。


「ガキじゃないもん、シロだもん!シロはうそなんかついてないんだよ!?シロつよいんだよ?」


シロは名前ではなくてガキと言われるのと、自分が嘘を言っていると思われたのに対して憤慨しているようだ。


ぷんぷんって擬音が似合いそうに、顔を真っ赤にして怒るシロたんも可愛いな!


「……確かに俺様が一撃すら入れる事ができないんだ、おめぇさんは強ぇかもしれん。だが、ガーディアンってのはダンジョンの1番奥でダンジョンマスターを守る最後の砦だろ?それがなんでこんなところまで出てくるんだよ……」


「え?がーでぃあんっておそといったらだめなの?でもシロはごしゅじんさまに、みんなをシロがまもるっていったから、ねずみさんもまもりにきたんだよ!」


2人は一端戦闘をやめ、さらに会話を続けるようだ。

まぁ、シロに戦闘の意思があったのかは分からないが。


それにしても冒険者か納得できていないところって印象とかじやなくそこなんだ。確かにダンジョンのボスとかって最奥で、でーんと待ち受けているイメージではあるよね。


ただ、俺はゲームでそのイメージを持っているんだけど、この世界の住人もそれと同じイメージを持っているんだなぁ。


対するシロたんはちょっとアホの子っぽい言い方だったけど、自分の言った事を守ろうとする姿はまさに天使!

いや、ほんとに天使なんだけどね。


「なんだよ、やっぱガキじゃねえかよ……それにしても、なんで攻撃してこねぇんだ?天使様の御慈悲ってか?」


お、良い事聞いてくれたね。俺もそれは知りたい。


「むぅ、またシロのことガキって言った!もうそろそろ怒っちゃうよ?でもいいや、もう終わりだし」


シロはまた怒ったような表情を少し浮かべていたが、何かに気付いたようでニヤリと笑みを浮かべた表情に変化して答えた。


「……終わりだと?そいつはどういう」


しかし、冒険者が話し終わる前に状況に変化が起きた。


「ピエトロさーん!大丈夫ですかー!?」


置いてけぼりにされていた他の冒険者達が、このピエトロと呼ばれている冒険者に追い付いてきたのだ。


「……ピエトロ、状況を説明しろ」


冒険者達の中でも一際体の大きな男が、ピエトロに話しかける。


「チッ、すまねぇアニキ。このガキに足止め食らってた。こいつかなり強ぇわ。わりぃけど、手伝ってくんねぇかな?」


「……お前にそこまでさせるくらいのやつなのか……見た目では分からんものだな」


ピエトロと呼ばれていた冒険者が、一際体の大きな冒険者に頭を下げている。どうやら2人でシロを倒そうという事らしい。


へぇ、こいつら兄弟なのか。ちっさいおっさんと、身長高くてムキムキマッチョの兄弟か、凸凹コンビって感じだなぁ。


っておいおいおい、2対1とか大丈夫かよ!?

いくらシロが強くても、相手が2人になったらさっきとはまた状況が全然違うでしょ!?

シロちゃん危ない事はやめておくれ、お父さんのライフはもう0だよ。


しかし俺の想いはシロには届かなかったようだ。


「ん?おじさんたち2人でたたかうの?せっかくシロがみんなそろうのまってたんだから、みんなまとめてやろうよ!」


それを聞いた冒険者達、観戦しているこちら側も固まった。


えぇー!?

シロさん何言ってんのー!?

確かに何かを待ってるかのようだったけど、全員纏めてぶっ飛ばすつもりだったのかよ!


「ちょ、クロ!これはさすがにヤバイんじゃないか?あの数相手だといくらシロが強くてもさ!」


「だから、マスターは心配しすぎであります。確かにこれは予想外でありますが、シロ殿が自分でそう言ってるのでありますから、大丈夫でありますよ。シロ殿は自分も相手の強さくらいちゃんと理解しているでありますよ。だから、大人しく待っているでありますよ!」


そう言うと、クロはクマ達と何かを話し合い始めた。


何だろうと見ていると、話し合い自体はすぐに終わったようで、満面の笑みをしたクマとタマ、顔を赤くしたスミスがこちらに近づいてきた。


ネムとオウルは後ろで何やら悔しそうにしている。

一体何なんだ?


「ご主人様、私たちお側で一緒に見て良いですかにゃ?」


「ん?もちろん良いぞ?でもさっきから一緒に見てたろ?」


「じゃあ失礼するクマ!」


俺のその返事を聞くやいなや、俺の両端にタマとスミスが座って腕を絡めてくる。さらに、クマは俺の座っている足の上にお尻を乗せてきた。


「えっ、近!急にどうしたんだ?」


俺は慌てて聞いてみるが、恥ずかしそうにしたり、笑顔でスルーされる。


その反応を見て、俺は1つの答えに行き着く。

そう、嵌められたのだ。

女の子に慣れてない俺にとってはこの夢のような状況、動く事ができないじゃないか!

それに、女の子に慣れてないから話す事すらできなくなっちゃうぜ。


ふわぁ、お風呂上がりの良い匂いが漂ってくる。


「マスター、変態の顔をしているでありますよ。まぁ、そのまま静かにしているといいであります」


「ほんとだ、ご主人様変な顔をしているクマ」


策士なクロさん……恐ろしい子。


あと、やたらクマさん顔近いから!


観戦側でこんなやり取りをしている頃冒険者達はというと、怒り狂っていた。


まぁ、まだ戦闘をしていない連中からすればこんな小さい子にここまで言われたら当然だろうな。


「なんじゃ、あの偉そうなちんまいの。ちんまいのが良いと言ってるのじゃ、お前ら全員で相手してやるのじゃ!」


「なめやがって、お前1人で勝てると思ってんのかガキ!」


「……面白い。ピエトロにあそこまで言わせるお前の実力、見せてもらおうか」


「あ、俺タイプかも」


最後の奴、待てやコラー!!

シロが可愛いのは分かる。誰もが思うであろう。

しかし、今言う!?

でっかいマッチョのおっさんがカッコ良く決めたのに、お前がその後に言うから台無しだよ!

ほら、マッチョおじさんプルプルしてるよ?


「……まぁいい。では、いくぞ!!」


「「「いくぞおらぁぁ!」」」


マッチョおじさんが仕切り直し、野郎共の怒声と共にシロへと殺到する。


しかし、誰1人としてシロへ攻撃を当てる事はできなかった。


「な、なんで当たらないんだ!?」


「てめぇ、邪魔で攻撃しにくいぞ!」


相手が互いに攻撃を邪魔しあっているのももちろん原因の1つではある。しかし……


「こ、こいつ……さっきよりも速い!?さっきまでは本気じゃなかったってのか!?」


「くっ、この人数で囲んでもダメだってのか……」


そもそもスピードが違い過ぎたのだ。


「おじさんたち、そろそろまんぞくしたかな?こんどは、こちらからいくよ?」


その言葉に冒険者達全員が身構える。それはそうだろう、今まで攻撃してこなかった相手が宣言してから攻撃してくるのだから。


シロはその真っ白な翼を使い空中へゆっくりと上がっていき、自分の身長ほどあった剣は鞘へと直してしまう。


「みんなしんじゃうかもしれないから、ぐーでいくね!」


素手でいくと宣言するシロ。


冒険者達が舐めるなと怒声をあげようとするが!怒声がダンジョンに響く事はなかった。


シロによる最初の一撃でマルクス兄弟と領主以外の冒険者達が纏めて殴り飛ばされたからだ。


マルクス兄弟や領主が助かったのもラッキーとしか言えない。

ただ最後に残されたってだけなのだ。


「さて、あとは3人だけだねー」


「……お前、ほんとに何者なんだよ……」


シロはピエトロのその質問に満面の笑みで答える。


「さっきもいったよね?わたしはシロ!このだんじょんをまもるがーでぃあんだよ」

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