あなたのお名前なんてーの?
「はぁ~、美味かった!みんなカレーはどうだった?」
「ごしゅじんさま!わたしまいにちたべれるよ!」
シロは相当気に入ったようで、目をキラキラさせながらそう答える。
「お、おう。他にも美味しい料理をたくさん食べて欲しいから、カレーはまた今度出してあげるからな?」
シロよ、さすがに毎日は勘弁しておくれ……
「それはほんとクマ!?こんなに美味しい料理が他にもたくさんあるクマ!?」
奴隷の子達もだいぶ慣れてきたようで、こうして普通に会話ができるようになった。
「あぁ、そりゃもうたくさんあるぜ?とりあえず食後のデザートを今から食べようじゃないか」
「ごしゅじんさま、でざーとってなに?」
首を傾げるようにしてシロが尋ねてくる。他のみんなも気になるようだ。
「百聞は一見にしかずだ。今から出すから見てな!」
カタログからポイントを消費して出すだけなのだが、ちょっとカッコ良く言ってみる。
デザートも色々と載っているが……アイスクリームでいいか。
8人分のアイスクリームを食卓に出す。
「「「おおお!?」」」
奴隷達はカタログから突然物が出てきた事に驚いているようだ。
「まだまだ驚くのは早いぜ?さっきのスプーンを使ってそれを食べてみな?」
シロが凄い勢いでスプーンとアイスクリームを手に取り、口へ放り込む。
「つ、つめたい!?ごしゅじんさま、これすごいつめたいよ!」
冷たい物だとは全く思っていなかったのか、凄い驚いてるな。
シロの反応を見てから、みんなが恐る恐るスプーンを手に取り1口食べてみる。
「!?ほ……ほんとに……冷たい。でも……甘くて……美味しい」
「こ、これがデザートクマ!?さっきのカレーという料理も程よい辛味が食欲を誘いとても美味しかったけど、これは……お口の中に甘味が広がり、溶けていくクマ!!」
この子、できるな!?
奴隷って事は美味しい物とか食べれないのにこんなグルメレポーターみたいなコメント普通出てこないよな。
とりあえず女の子だけという事もあり、デザートのアイスクリームは概ね大好評だった。
だいぶ話もしてくれるようになったし、このまま自己紹介でもしてもらうか。5人もいると、名前が分からないと呼びにくくてしょうがないからな。
「おーいみんな、アイスクリームも食べ終わったしそろそろお話をしたいと思う。まずは。みんなの名前を教えてくれないか?」
「……名前?」
名前を聞いたところ、みんなが何それとばかりに首を傾げたり、横に首を振ったりする。
この反応、みんな名前がないのか?
「マスター、奴隷に堕ちた者は名前を取り上げられているのであります。奴隷同士の子であった場合はそもそも、名前を付けられる事もないのであります」
なるほどな。それにしてもクロは物知りだなぁ、助かるわ。
せっかくだし奴隷についてクロに詳しく聞く事にした。
「奴隷とは借金を支払えなくなったり、犯罪を犯した者をただ殺すのは勿体無いという事で魔法により人間としての権利や自由を縛り道具と同様に持ち主の私有物として労働に使役される者の事を言うのであります。それが女性の場合主人に性的な事を求められる事もあるのであります。その者が奴隷かどうかというのは、首輪が着いているかどうかで簡単に判断ができるのであります。この子達も着いているのであります。この首輪は魔法により、主人の命令に逆らうと首が締まるようになっているのであります」
なるほど、それで逆らえない訳か。
「そーいえば、奴隷×5を手に入れたって出たけどこの場合主人はまだ前のやつなのかな?」
「このダンジョンの中ではすでにマスターの所有物扱いになっているのでマスターが主人という事になるでありますが、恐らくこのダンジョンを出ると前の主人の所有物に戻るでありますね。前の主人が死んだりしていなかったら、でありますが」
ふむふむと1人で納得していると、シロが2人の間に割って入ってきた。
「ごしゅじんさまとくろちゃんなにいってるかわからないよ!みんなにもちゃんとせつめーして!」
シロの言葉を聞いて回りを見てみると、奴隷の子達はみんな理解していなさそうにポカーンとした表情をしていた。
「ごめん、ごめん。俺も異世界から来たからクロにちょっと教えて貰っていたんだよ。でな?どうやらこのダンジョンにいる間なら俺が君達のご主人様って事になるみたいなんだ。ダンジョンから出ちゃうと前のご主人様に戻るみたいなんだけどさ」
その言葉に語尾にクマと付けるチビッ子が反応した。
「ほんとうクマ!?毎日あんなご飯を食べれるクマか!?」
そこかよ!この子にとってはご飯が大事なんだろうな。
「あぁ、ちゃんと働いてくれるのならもっと色んな料理が食べれるぞ?」
「やるクマ!!美味しいご飯が食べれるなら何でもするクマ!」
この子、チョロすぎて心配になるな……守ってあげないと。
「他の子はどうだ?働くっていってもみんなの良いところ見つけてそれに合わせて仕事してもらおうと考えているから、難しく考えなくていいぞ?」
「私も……やる」
「やらせてほしいニャ!」
「私もやらせてほしいのです!」
「みんながやるなら私も!」
それぞれ力強く返事してくれる。
「よし、それならもう俺達は仲間だ!俺がみんなに名前を付けてあげるから順番に並んで!」
「マスター、名前がまだなので彼女達のステータスは見れませんが種族くらいは見れるので参考にするであります」
オッケーっと軽く返事をし、カタログを手に取り先頭に並んだ語尾にクマとつける少女と向き合う。
「君の名前はもうこれしかないな。クマだ!」
「クマ?それが私の名前クマ?ありがとうクマ!」
シンプルな方が分かりやすくて良いよね!
ちなみに種族は熊の獣人であり、体は人間が基本で頭に熊の丸い耳が生えているのと、体毛や爪が特徴的だ。
「マスター、単純過ぎます……本人が喜んでいるので良いでありますが」
クマが嬉しそうに食卓の方へ戻っていき、次の子と向き合う。
次の子は、眠たそうにしていてあまり話さない子だ。見た目は金髪で耳が長い特徴を持っている。ん?この特徴ってエルフか?
カタログで種族を確認すると、ハーフエルフという事だった。
「ん~君の名前は『ネム』だ!」
「……ネム……ん、ありがとう……」
さて、どんどんいくぞ。
次の子はクマと同じくらい小さい女の子だ。種族を見てみると、ドワーフという事だった。ドワーフといえば髭の生えた小さいオッサンで鍛冶が得意ってイメージだけど、こう見ると普通の女の子だな。ただ、これ以上伸長が伸びなさそうだが。
「君の名前はスミスだ!」
「ありがとうなのです!」
クロはちょっと首を傾げていた。まぁ鍛冶師を英語読みしたブラックスミスから拝借しているからこっちの世界では分からないだろうね。
さて次の子は、猫の獣人の女の子だ。この子はクマと比べると獣人の血が強いらしく、人間よりも動物に近い感じだ。某狩りゲームのお供のような感じだ。毛を触らせて貰ったらスッゴいモフモフしてた!モフモフ最高だな!!
「っと、モフモフし過ぎて名前つけるの忘れるところだった。君の名前はミケだ!」
毛が三色だから、シンプルにミケだ。
「ありがとうですニャ!」
いよいよ次が最後の子だ。最後の子の特徴はその大きな目と翼だろう。カタログで種族を調べてみると、梟の獣人らしい。
「君の名前はオウルだ」
「ありがとう!」
これで名付けは完了だな。これでステータスが見れるようになったから確認する為にもチェックしておくか。
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名前 クマ
種族 獣人(熊種)
ジョブ 奴隷 モンク見習いLV1
称号 食いしん坊
スキル 剛力LV1
爪術LV1
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名前 ネム
種族 ハーフエルフ
ジョブ 奴隷 精霊魔導士の卵LV1
称号 精霊の友達
スキル 風魔法LV1
精霊魔法LV1
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名前 スミス
種族 ドワーフ
ジョブ 奴隷 鍛冶師見習いLV1
称号 匠
スキル 加工LV1
集中LV1
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名前 ミケ
種族 獣人(猫種)
ジョブ 奴隷 軽業師の卵LV1
称号 身軽
スキル 体術LV1
剣術
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名前 オウル
種族 獣人(梟種)
ジョブ 奴隷 忍者LV1
称号 夜行性
スキル 隠密LV1
暗視LV1
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奴隷のジョブがなくならない限り、本来のジョブはレベルが上がらないらしい。