表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/60

お風呂会?

どうしてこうなった……


お風呂でキャッキャウフフできるかと思ったのに、俺1人で寂しくテレビに映る冒険者達を眺める事になるなんて……


もちろん、ダンジョンを攻略しようと来てる冒険者達を監視するのは大事だよ?むしろ当たり前なんだけども……


ここまで女の子達の色んな声が聞こえて来て、集中できるか!!


シロが純粋にお風呂を楽しんでいるだろう声。

奴隷達が目を覚まし、ここが何処かと戸惑うような声。

その戸惑う奴隷達を安心させる為に優しく諭し、まずは色々な汚れを落とす為にお風呂へと入れようとしているクロの声。

戸惑いながらもお風呂へ入り汚れを落とそうとするも、体が傷だらけな為か、痛みを感じるような声。

その傷を見て驚いたシロが光魔法を使い1人1人に治療を施していき、それを見た奴隷達がシロを天使だ!っと驚き騒ぐ声。中には自分が死んで天使が迎えにきて天国へと連れてきてくれたのではと言ってるような声も聞こえる。


ここまで例を出せば分かると思うが……


お風呂での会話が、ここまで全て丸聞こえなんですよ!!


冒険者の様子を注意して見なければならないけども、声が気になってしょうがない!!


俺だけ疎外感半端ないし!!

なんかめっちゃ寂しい!!!

泣けてくる。


俺のモチベーションがどんどんと低下していく一方で、お風呂場の女子達はお風呂でリラックスできたおかげか、会話が盛り上がってきているようだ。話を聞く限りだとシロが楽しそうに話をして、クロがそれを分かりやすく補足や説明をして、奴隷の子達がその話をワイワイガヤガヤと楽しく聞いているような感じだ。


ただ、シロの話す内容というのが俺に対する物ばかりなのが問題だ。何が不味いのかというと、俺のいないところで話を盛りすぎというか俺を美化しまくった話をしてやがる!

クロもそれを訂正等せずに、適当に合わせて笑っていやがる。あいつ、この後の事を考えて楽しんでやがるな……


これの何が不味いのかというと、会った事もない俺の事を美化しまくって話す→奴隷の子達の俺に対するハードルがシロ達の話に妄想も加わりどんどん上がる→実際に顔合わせ→爆死


こうなるの目に見えてますやん!!

自分で言うのもなんだが、何の特徴もない平凡的な大学生だよ?顔も普通くらい(たぶん)で、性格も奴隷制度のあるこの世界と比べたらそりゃ優しいとか思われるかもしれないけど、日本人の中では普通だと思うしさ。


そんな俺はキラキラと期待した目でこちらを見てくるであろう奴隷の子達に、どう対応するのがいいというのか……


爽やかなイケメン風に?

駄目だ、クロが絶対笑うだろ。それに、良い反応が奴隷の子達から返ってきても後でしんどいしな。


じゃあ普通に対応か……

あれ、俺の普通ってなんだ?普段どんな話し方してたっけ?

おおお、なんか頭の中がゲシュタルト崩壊してきたぁぁ。


「マスター、何頭を抱えて床を転がっているのでありますか?」


いつの間にかお風呂から出ていたクロが、ニヤリと嫌味たらしい笑顔を浮かべて話し掛けてきた。


なので、こちらも溜め息混じりにこう返事をしてやる。


「ったく、誰のせいでこんな事をしていると思ってるんだよ……まぁいい、あの子達の様子はどうだ?」


「今シロ殿がみんなの体を拭いてあげているところであります。あの子達みんな女の子だったので、エロエロなマスターをお風呂に行かせないで良かったであります」


みんなボロい布切れで体を覆い、泥だらけで痩せこけていたので性別がよく分からなかったのだが、どうやら全員女の子であったらしい。


なん……だと……!?

尚更、お風呂に行きたかったじゃないかぁ!!


「マスターもキャラが崩壊してきたでありますなぁ。全然普通じゃないでありますよ……」


呆れたような顔で言ってくるので、どや顔でこう返す。


「男だから仕方ない!DT舐めるなよ!」


「そのどや顔ムカツクでありますな……ところで、そんな事してて良いのでありますか?そろそろみんながこっちにやって来るでありますよ?」


その言葉で我に返る。

しまった、こんなやり取りしてる場合じゃなかったな……


なんか良いアイデアないかな……

そうだ、ご飯用意して食べながら自己紹介でもするか!

お茶請けに煎餅とか食べたけど、ちゃんとしたご飯は色々あってまだ食べてないしな。シロも美味しい物食べたいって言ってたし。


あぁ、でも食材も作る時間も足りないか……

クロに相談してみるか。


「クロ、お茶やお茶請けとか用意してあったけどなんかご飯とかは用意できる?」


クロはその言葉で俺が何をしたいかを理解してくれたらしく、質問に応えてくれる。


「お茶やお茶請けは、マスターがスキルを覚えている間に村の方に貰ったのでありますよ。ご飯でありますか、ここに用意はないでありますが、カタログからポイントを使い出せるでありますよ。マスターの記憶にある料理や食材などを出せるので、この世界の食材や料理を覚えるとどんどん出せる物が増えるのであります。この辺はモンスターを出せるようになるのと似ているでありますな」


最初はモンスターを倒さないと出すことができないって聞いて、鬼畜仕様って思ったけどカタログめっちゃ便利やん!!


時間もないのでカタログで出せる料理を探してみる。

カタログの中にはレストランのメニューのように、写真付きで様々な料理が載っていた。最初に見た時これに気付かなかったとはなぁ……

料理は自分が食べた事ない食べ物や料理は一切載っていないようだ。本当に俺の記憶を元に載せているようだ。ポイントは手の掛かる料理ほどポイントを使うが、高くても100ポイントといった位なのである程度出しても問題ないだろう。奴隷の子達は痩せこけているし子供なので、野菜で栄養を取れて子供の大好きな料理『カレー』にしよう。


カタログからカレーを出し、お皿やスプーンなども用意していると複数の足音がこちらに近づいてきている。もうすぐこちらに着きそうだ。

ちなみに、お皿やスプーンもカタログから出しましたよ。木製のスプーンやお皿は1つ5ポイントほどだったので、お皿やスプーンを全員分用意してカレーと合わせても200ポイントも掛からなかった。カタログ便利すぎ!


そうこうしてるうちに、シロを奴隷の子達を連れて居間へ戻ってきた。


「ごしゅじんさま!おふろすごいきもちよかったの!こんどはいっしょにはいろうね?」


「あぁ、絶対だぞ?嘘だったら泣いちゃうからな!シロは本当に可愛いなぁ」


シロを抱っこして頭を撫で撫でしてやると、シロも嬉しいらしく可愛いらしい笑顔をこちらに向けてくれる。


「マスター、いい加減にして下さいであります。みんな引いてるでありますよ。さぁ、この変な人が先程シロ殿の話にも出てきた我々のマスターであります。みんな挨拶をするであります」


はっ、いけない。奴隷の子達との初顔合わせだというのに、シロがあまりにも可愛いばっかりにデレデレしてしまっていたらしい。


「ごほん、もしかしたらすでにシロやクロから聞いているかもしれないが、俺がこのダンジョンのマスターをしている紙出真王だ。みんなを助けたのはこのダンジョンの経営を一緒に行って貰いたいと思ったからだ。強制はしないし、帰りたい子がいるなら帰っても良い。家まで送ってあげることはできないけどね」


「「働かせて下さい、見捨てないで!!」」


どうやら、帰りたい子は帰って良いという言い方が見捨てられると思ってしまったようだ。前半も良く分かってないかもな。


「ごめん、見捨てるつもりはないよ。難しい話はやめにして、とりあえずご飯を食べようか。これからの事はゆっくりと考えればいいよ」


そう言ってみんなを食卓を囲むように座らせる。


ぐぅぅ~


今までは緊張して料理に気付いていなかったのか、食卓へ座らせて匂いで食欲を誘われたからか腹の虫が一斉に鳴き出す。


しかし、本当に食べて良いのかどうか迷っているようで、誰もスプーンを手に取らない。

まぁいきなり食べろって言われても警戒するか。ここは俺達が先に食べて警戒心をなくすしかないな。


「毒なんて入ってないからどんどん食べろよ?シロとクロも食べろよ!シロは美味しい物食べたいって言ってたろ?これは俺の世界の好物だぜ?この世界であるか分からないがとにかく食べてみな」


「うん!いただきます!」


「いただくであります!」


ぱくっと俺も食べてみる。子供向けに甘口を選んだけど、これはこれでなかなかいける。


「ごしゅじんさま!すっっごいおいしいよ!」


「これがマスターの世界の料理でありますか、なかなか美味でありますな」


会話をしながら食べていると、涎を垂らしてこちらを見つめていた奴隷の子達の中で1番背の低い子が、ついに我慢できなくなってスプーンを手に取り、恐る恐る1口食べてみる。


「ん~!!!」


あれ?動きが止まった。小さい子にはこれでも辛かったか?

急に動きが止まった子を奴隷達みんなが心配をする。


「「だ、大丈夫!?」」


「う……うみゃい……」


だが、心配を他所にその子は美味しさのあまりトリップしてしまっていたらしい。


幸せそうな顔を見た奴隷達はこの料理が安全であり、美味しい物らしいというのを理解し次々にスプーンを手に取り食べ始める。


「ク、クマ!こんな美味しいの初めて食べたクマ!」


「た、食べる手が止まらないの……」


ふふふ、みんな笑顔で食べてるな。警戒心もだいぶ無くなりリラックスしてるし良かった良かった。

後でデザートも振る舞ってやるか。


「マスターご飯に集中するのは良いでありますが、ダンジョンに冒険者達が来ているのを忘れてないでありますか?」


あぁ……ごめんちょっと忘れてたわ……


ちらっとテレビを見ると、冒険者達は広い部屋に戻りまだマッドラットと対峙しているところだった。


なんだ、まだいけそうじゃん。


こうして食事へと戻るのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ