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静かなるダンジョン後編

「ははっ、第1の罠にまんまと掛かってくれたな。あんな見事に引っ掛かってくれると気持ち良いよな!」


「そうでありますな。しかし、どうしてあそこまで罠を1つも仕掛けなかったのでありますか?」


「しろもしりたい!!」


仕方ない、解説してやるか。


「あれにはな、2つの意図があるんだよ」


「2つでありますか?マスター、そのどや顔はキモいのでやめてほしいであります」


「そんな事言っていいのか?シロだけに教えちゃうぞ?」


「むむ、マスターのくせに生意気な……分かったでありますよ……」


「へへっ、良い心がけだクロくん。いつもそうしてると可愛いのに」


「か、可愛いでありますか!?マスター調子に乗りすぎてあります!!」


照れ隠しか、杖でガツンと殴られる。


いや、洒落にならないくらい痛いんだけど……あれ、血出てね?


「っててて、とりあえずさっきの話の続きをするぞ?まず、1つ目はあそこまで何にも仕掛けなかった事で相手の油断を招くって事だ。1回警戒されちゃったけど、あそこまで何にも仕掛けなかった事により、集中力が持たなくて罠に引っ掛ける事に成功した訳だ」


「あの鼻歌を歌っていた冒険者だと、どのタイミングでも引っ掛かってそうな気がするでありますけどね」


「その可能性は否定しないけどな、あんなのが毎回来てくれるとは限らんだろ?」


確かにあの冒険者なら簡単に罠に引っ掛かってくれそうだなと苦笑してしまう。


「あともう1つに関しては、今全力疾走している冒険者達のこれからの反応を見ていれば分かると思うよ」


「そうなのでありますか?楽しみにしとくであります」


「楽しみといえば、もうそろそろ罠だらけのエリアに冒険者達が辿り着くぞ!」


「どんな反応をするか楽しみでありますなぁ」


「しろがおてつだいしたやつ?」


「あぁ、シロも頑張ってくれたな!シロが頑張って仕掛けた罠に冒険者達が引っ掛かった時教えてやるからな!」


「うん!!」


さぁ、楽しんで見させてもらうとしよう。


だけど、1つだけ気になってる事があるんだよなぁ……


********************


「お前ら、前に部屋が見えてきたぞ!!あの部屋の入口の広さなら、後ろの玉が通れないはずだ。あそこまで行けば助かるぞ!全力で走れ!!」


ピエトロさんの声がダンジョンに鳴り響く。俺達は部屋に向かって、全力で駆け込んだ。


やっと助かるっと、部屋の入口に先頭の冒険者が足を踏み入れようとした時、突如異変が起こった。


「ぎゃあ!」


先頭を走っていた奴等が急に足を引っ掛けたように転びだしたのだ。


後ろから追われて全力疾走してるところで前が詰まったせいで、そこからはドミノ倒しのように全員が転けてしまった。


しかも、転んだ先に水溜まりでも仕掛けてあったのか、全員が泥だらけになってしまうというオマケ付きだ。


「あ痛!それに冷たい!?なんでおじゃるかこれは!?あれだけ走らされた上に、麿が泥だらけではないか!?田舎のダンジョンマスターのくせに麿をバカにしよって!!キースも気をつけんか!麿を守るのがお主らの仕事であろ?」


領主様がお怒りになってるよ……


領主様は走ってないとか突っ込んだら負けなんだろうか?玉が向かってきてからは全身筋肉みたいにでかいキースさんに肩車されてただけなのにな。キースさんが転けた時に凄い勢いで床に叩きつけられてたけど、水溜まりのおかげかあの様子だと大丈夫そうだな。


他の連中の様子はどうだ?


回りを確認してみると、全員泥まみれだがたいした事はなさそうだ。汚ならしい奴隷達はガリガリに痩せ細っているせいか体力が全然なく、走らされて息切れが激しい。泥水を飲もうとしているやつまでいやがる。


「おい、そんなもん飲むんじゃねぇ!こんなところで倒れられるとこっち困るんだよ!」


泥水を飲もうとしていた奴隷はびくっと震え上がり、他の子供と身を寄せあう。


そもそも、どうして奴隷を5人もダンジョンへ連れてきたんだ?足を引っ張る事なんて分かりきった事じゃないか。それとも、それを考慮した上でも何か重要な事があるのか……?


「な、なんてこった……」


「どうした?泥だらけだが、幸い怪我人は誰1人いなさそうだが?」


「あ、あれを見てみろ……」


俺の思考は男達の会話で遮られた。俺も男が指差す方を見る。


「壁に玉が食い込んでやがる……あんなのに轢かれたら潰されて死んでたな……!?」


そ、そうじゃない……


「通路を塞がれた……出口への道ってこれしかないんじゃ……」


その場にいる全員が、その現実を受け止められずただただ塞がれた部屋の入口を見つめる事しかできなかった。



********************


「ハハハ!成功だ成功だ!全員泥だらけになってるぜ!あの金持ちめっちゃ怒ってるな!」


自分が想定した通りにに罠に掛かってくれたので、思わず笑ってしまう。


「マスター、出口を塞いだのがもう1つの意図ってので良いのでありますか?」


「あぁ、あの絶望した顔を見てみろ!大成功だろ?」


「出口を塞ぐだけなら、ダンジョンへ侵入した直後に入口を塞ぐだけでも良かったのでは?」


「バカだなぁ。塞ぐだけならあそこまで絶望しないだろ?油断させてからってとこ重要なんだよ。上げて落とすってやつだな」


「マスターって結構性格悪いでありますなぁ?」


「ごしゅじんさまってやっぱりまおーなの?わるいひとなの?」


クロが苦笑いし、シロに至っては泣きそうになっている。


「2人共、よく考えてみろ?ダンジョンってのは本来は危険な場所であり、冒険者はそれを承知で命を賭けて財宝とかを目的としてダンジョン攻略をしにくるだろ?」


「まぁ、そうでありますな」


「だが、俺は命の危険になるような罠を仕掛けたりはしていないぞ?さっきの玉も最終的に回収するから通路は通れるようになるしな。つまり、俺はイタズラのような罠を相手に仕掛けてはいるが他のダンジョンと比べると優しいやつだって事だ」


「そうなの?ごしゅじんさまはいいひとなの?」


「あぁ、そうだよ?イタズラが好きなだけだよ」


「イタズラって……良い大人が何を言ってるんでありますかね……」


クロが何かボソッと言ってるが聞こえない振りをしておこう。


「それより下の階層の方はどうなってるる?そろそろこれからが本番とはいえ、1階層の半分くらいには来ているからな」


「ちょっと確認するから待ってくださいであります。あっ!?マッドラットが凄い勢いで増えているであります!!」


「おぉ、順調のようだな。他のはどうだ?」


「他はまだ変わらないであります」


「ううむ、他のやつはもっと時間がかかるか。そこが間に合うかどうかだなぁ。それから、冒険者が入ってから時間がある程度経ったけど、ポイントは貯まってきているか?」


「まだあんまり時間経ってないでありますよ?ポイントなんて全然……あれ!?100ポイントも貯まっているであります!?」


「クロ、ポイントはダンジョンの中に人を入れると少しずつ貯まるって言ってたけどそのポイントは誰が入ってても同じだけのポイントが入るのか?」


「いえ、その人の強さによって変わるであります。という事はあの中に!?」


「あぁ、かなり手強いのがいるんだろう。1人なのか、何人か強いのがいるのかは分からないが……」


ここからは貯まっていくポイントをどう使うかも考えないとな……


再びテレビに目を向けると、冒険者達が話し合いを終えたらしく動きだそうとしていた。どうやら先程と列を変えて歩くようだ。


こちらも準備を早めなければな……

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