誕生
どうも、スライムがスキルによって生まれ変わる瞬間を目の当たりにしております紙出真王です。
今まさに生まれるって感じに卵が光輝いている様子なんですが、そわそわするね。
出産に立ち合うお父さんってこんな感じなのかな。
「がんばれ~!!」
シロは力一杯に応援してるんだけど、お姉ちゃんになるのがそんなに嬉しいのかな?見ていてとても微笑ましいね。
クロにも見習ってほしいね。俺にイジワルばっかりしやがって、好きな人に素直になれなくてイタズラする男子かよ。
「マスター、なんか変な事考えてるでありますか?」
「だから、なんで考えが読めるんだよお前は……」
「マスターに対する愛の成せる技であります!それよりマスター、プリンって名前はないでありますよ。センスを疑うであります」
「いや、可愛いだろうプリンって?ゼリーかで迷ったけど、プリンの方が名前っぽいからな」
「男の子だったらどうするのであります?」
「えっ、スライムって性別あんの?」
「あちゃぁ、知らなかったでありますか。魔物はほとんど性別があるでありますよ」
なんだってー!?男の子でプリンは確かに嫌かもしれんな……
「名前って変更できるの?」
「簡単にはできないでありますよ。すぐに変える場合は新しい個体として作り変えるしかないであります……」
やっちゃったー!?男の子だったらトラウマじゃないか。スライムの見た目からつけたけど、恨まれるような事になったらどうしよう……
「まぁ、スライムは知能低いので名前をそんなに意識する事はないと思うでありますけどね」
「ま、またからかわれたというのか……」
「マスターは面白いでありますなぁ」
「ふたりとも、もうすぐうまれるんだからしずかに!じゃないと、シロおこるよ!」
「「ごめんなさい」」
クロのせいで怒られてしまった。さっきのスライム達倒したの見た後だけにマジで怖いわ……
そーいえばクロも素直に謝ったけど、シロとどっちが強いんだろうな?クロの強さ分からないからまた教えてもらわないとな。
そんな事を考えていると、遂に卵に変化が現れた。卵が揺れて中から殻を破ろうとしているのが分かる。
それにしても、光だしてから生まれるまでが長かったな。卵の殻を破るのに苦労するっめ事は体が弱かったりするのだろうか?それともこれくらいが普通なのだろうか。初めての経験だから分からないな。
ぴきっ、ぴきぴき
あれこれ考えているうちに、ついに誕生の瞬間が訪れた。卵にヒビが入ったのだ。
「ごしゅじんさま、うまれるよ!ほんとにほんとに、うまれるよ!!」
シロの声と同時にヒビが卵全体に行き渡り、卵が今までよりも力強く光り輝いたかと思うと一気に砕け散った。
「あれ?何もいない?」
「ごしゅじんさま……プリンしんじゃったの……?」
そんな……失敗とかあるのか?シロあんなに産まれてくるのを楽しみにしていたのに、こんな結末悲しすぎるよ……
卵が砕け散ってさっき倒したスライムが出てくるかと思ったのだが、何もいなかったのだ。
いや、厳密に言うと何もなかった訳ではない。中から液体が洩れだしていた。体液とかだろうか?固まりきらなかったのだろうか?
「いやぁ、やっと産まれたでありますね!可愛らしいスライムでありますな?」
「おいおい、こんな時に冗談はやめろよ。笑えないぞ?」
「うん?何を怒ってるのでありますか?マスターの足元に向かっているので抱き上げてあげたらどうでありますか?」
ん?冗談じゃないのか?
クロの言うとおりに足元を見てみると、そこには水溜りができていた。
水溜り?さっきまでなかったよなぁ……ハッ!?
ハッとして卵の方を見てみると、さっきまでの液体がなくなっていた。
そう、あの液体はスライムそのものだったのだ。さきほど倒したスライムがぷるぷるとした固体だったので、こんな液体で産まれてくるとか想像しないよね。
きゅーきゅー
「ごしゅじんさま!プリンが…ぷりんがちゃんといきてるよ!」
シロが悲しそうな顔から一転して、喜びに満ちた笑顔で報告してくれる。
おぉ、ほんとに生きてる!水分かなり大めだけど、動いてるのみれば確かにスライムだ!
某ゲームのバブルスライムみたいな感じである。体は小さくて、バスケットボールくらいの大きさだ。
こちらに向かってきゅーきゅー鳴いてるので、掬うように持ち上げてみる。
「これからよろしくな、プリン。あと、さっきはごめんなクロ!教えてくれてありがとう」
「産まれたては余計な水分が多いので、間違っても仕方ないでありますよ」
「ごしゅじんさま!わたしもだっこするー!」
「はいよ、落とすなよ?」
満面の笑みで頷くシロが、手を差し出してくるのでそこに液体を入れるように置いてやる。なんかこぼれそうだな。
「大丈夫でありますよ。さっきより固まってきているでありますし、触っているとそのうち固体になるであります」
ということなので安心して渡してやると、シロはこぼさないように左へ傾けたり右に傾けたりと忙しなく動きながら嬉しそうにプリンを観察しているようだ、
プリンの方もきゅーきゅーと心なしか嬉しそうに聞こえる。
なんかいいな、こういうの。この調子でどんどん仲間を増やして、ダンジョンを賑やかにしていきたいな。
でも、ダンジョンだと冒険者と戦わせなきゃだめだよなぁ……
そうすると、愛着湧いたモンスターが冒険者に殺されるってことが多々でてきてしまうだろうなぁ。
あれ、それって辛くない?
甘いのかも知らないけど、こうやって名前までつけて愛着が湧いたモンスターを自分が呼び込むとはいえ知らない奴に殺されるとか許せないよね。
何か良い方法はないものか……
「さぁ、マスター!そんなに考えていても仕方ないのであります!その願いを叶える為に次の魔物を倒しにいくでありますよ?プリンはシロ殿に任せるであります。クロの戦闘能力もお見せしたいでありますからなぁ」
「だからなんで人の心読めるんだよ……。まぁいい、この山にいる種族全部ダンジョンに連れ帰る勢いでやるから覚悟しろよ?戦えば戦うほど俺も強くなれるしな!」
「ちなみにダンジョン内なら、コアであるクロやダンジョンの主であるマスター以外なら死なないようにとかもできるでありますよ?その辺はダンジョンにそういった機能をポイント使ってつければ問題なしであります。まぁ冒険者も死ななくなるので、ポイントをなかなか稼げなくなっちゃうのが難点ではありますが」
「ほんとか!?なら早くポイント貯めてそうしないとな!ポイントは人を多く呼び込むか、他のダンジョン攻略しに行ったりでなんとか補おう!あぁ、なんかほんとに楽しくなってきたぜ」
「了解であります。では、行くでありますよ!この辺は弱い魔物とはいえ、夜になると危険になるので日が暮れるまでには帰るのであります」
「じゃあシロ、俺達はまた仲間無やしてくるからプリンの様子見といてくれよ?日が暮れるまでには戻って来るからこの辺から離れるなよ?違う場所に行ったら迷子になっちゃうかもしれないからな。それから、強くないとはいえ魔物が近くにいるんだから気をつけるんだぞ?あと、プリンは大事に触ってあげろよ?」
「過保護でありますか!!シロ殿は翼で飛べるでありますし、何よりお強いので大丈夫なのであります。もう、早く行くでありますよ!!」
「クロ、首絞まってる!首絞まってるから!!大事な事だから2回言ってるんだよ?自分で歩くから、それ以上引っ張らないでぇぇぇぇ!」
こうして、クロに後ろから無理やり引っ張られながら次の戦闘に向かうのであった。
*********************
名前 プリン
種族 スライム
ジョブ スライム(幼体期) LV1
称号 可能性の生き物 餅肌 生まれたて
スキル 吸収LV1 体当たりLV1
*********************