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短編・季節もの

ぼたん雪

作者: 鵠っち
掲載日:2014/12/26

 あなたにも『楽しかったあのころ』がありますか?

 雪の箱根路を走る車の中。幼い頃の私は、ふんわりとした大きな雪のかたまりが、窓ガラスに張り付いては振り払われるのを、興奮気味に眺めていました。

 外はあんなにも寒いのに、こんなにも暖かい車の中で、冷たい雪を飽きることなく眺めていました。

「そんなに窓にくっついたら冷たいわよ」

「だって、もっと雪を見たいんだもの」

 母の忠告なんてまるで聞かずに、頬を窓に貼り付けて、ふわふわと落ちてくる雪を眺めていました。


 運転席の父は、イライラしているようでした。積もった雪に足を取られる車が後を絶たず、渋滞になっていたのです。箱根の急な坂で立ち往生する車。ところどころで、タイヤが空回りしている車を目にします。父によると、冬用のタイヤじゃないのにこんなところまで出てきたのが悪いんだと言っていました。タイヤに鎖が巻かれているのも、滑り止めなんだと、そう教えてくれたのは父でした。


 芦ノ湖までやってきて、ようやく車から降りた私は、寒さに思わず身をすくめていました。

「ほら、ちゃんとジャンパー着ないと寒いわよ」

「うぅぅ、忘れてたよ。ありがと、お母さん」

「寒いなぁ。さあ、早く行くよ」

「もー、お父さん待ってよー」

 遊覧船乗り場の駐車場の向かいにあるお蕎麦屋さんに入ると、昼時をとうに過ぎたというのに人はいっぱいで、店員さんたちはとても忙しそうにしていました。「盛況ですね」「この雪でみんなお昼食べてないでしょうから、急いで準備してますならね」なんて会話も聞こえてきました。私たちも雪に阻まれてなかなかたどり着けなかった仲間。幼いながらも、そんな親近感を抱いたのでした。


 そのあと、楽しみにしていた海賊船に乗ったということは覚えているのですが、さて、どれに乗ってどんな景色を見たのかは思い出せません。

 ただ、大人になった今でも、毎年雪の頃になると、あのわくわくした気持ちを思い出してしまうのです。

『楽しかったあのころ』をたまには思い出してあげませんか?


 ※エッセイではありません。

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