春の団体戦最終日
団体戦最終日の前日の夜、
夜倉先輩とのやり取りで、
夜倉先輩「明日は、初日の時と同様で、
普通に接しようね。
トニー君も部の連中から、
白い目で見られるのは嫌でしょ!?」
トニー「そうですね。
まだまだオープンにはできてないので、
みなさんには隠す方向でいきます。
でも、僕自身が夜倉先輩のことを意識しすぎて、
バレちゃう危険性もありますが、
そん時はそん時で。」
夜倉先輩「何はともあれ、
明日、会場で会えるのを楽しみにしてるよ。
性的な意味じゃなくて、純粋にね(笑)」
というわけで団体戦の朝を迎えた。
自分でも不思議である。
2週間前の団体戦初日に知り合ったばかりなのに、
今では夜倉先輩に恋心を抱いているなんて。
今日で会うのは2回目なのに、
我ながら早すぎるなぁと。
でもでも、恋ってそういうもんでしょ!?
会場のクリスマス大の、4部の教室に着くと、
夜倉先輩「あ、皆おはよう。」
全員「おはようございます。」
と挨拶を交わす。
交わすんだけど、夜倉先輩のことを
必要以上に見てしまってないか僕は!?
と思ってしまう僕がいる。
なるべくみんなに怪しまれないように、
普通でいるんだと思えば思うほど、
夜倉先輩のことを意識して、
胸が高鳴ってきてしまう。
そんな僕の雰囲気を察してか、
夜倉先輩も何か気まずそうにしている。
別に付き合ってるわけでもないのに、
先輩には悪いことしたかなぁ。
でも、先輩のことが気になるのを、
止められないんだよね。
いやいやいや、
先輩のことは気になるけど、
今日はあくまで団体戦がメインなんだ!
だから気を取り直していかないと、
と、首を横に振りながら、気合いを入れる。
5R終了までの4部の状況
昇級争い:バルサミコス大、メランコリー大、メリケン大
残留or降級:ロケット大、ギャラクシー大、ストライク大、メトロポリス大
ほぼ降級:カルマ大
という状況で、
ロケット大は、
6R:メトロポリス大
7R:ストライク大
いずれも残留争いで燃えている相手だ。
なので6R目はもちろんベストメンバー。
団体戦最終日は打ち上げの飲み会が企画されていることもあって、
参加率は高く、
今日も幽霊部員を除く全員が来ていた。
というわけでオーダー表のおさらい。
大将 トニー・1年・1152 2-3
副将 B・3年・1562 5-0
三将 A・4年・921 2-3
四将 C・2年・617 1-3
五将 D・4年・1213 2-0
六将 E・1年・746 2-3
七将 F・2年・391 0-2
八将 G・2年・336 1-3
九将 幽霊・3年・100以下
6Rの、VSメトロポリス大に出るのは、
Gさんと幽霊さんを除いた7人。
そして両校の残留に関わる重要な一戦が始まった!!
大将戦の戦型は、
石田流VS居飛車持久戦という、よくありそうな将棋。
完璧な穴熊には組ませないよう駒組みをしながら、
隙をうかがう。
相手が、まだ大丈夫だろうと判断したのか、
香車を上がって穴熊風に、潜ろうとする。
いやいやいや、それはさすがに緩手じゃないですか!?
と、僕は心の中でニッコリ微笑み、
そこで、攻めまくる。
相手は慌てて、対処の手順を考えていたけど、
時すでに遅し。
僕は、2週間ぶりに勝利する。
終わってみると、
Fさん以外は全員勝ちの6-1だった。
これで団体としては3勝目となり、
カルマ大が全敗で、1勝の大学も1つあるから、
ロケット大の降級はなくなり、
残留することは確定した。
そして、いい気分で昼食を食べて、
7R前の作戦会議になった。
Aさん「それじゃあ、7Rは育成にしよっか。
と言っても、8人しか来てないから
あからさまな育成はできないけど(笑)」
トニー「育成って、何ですか?」
Bさん「育成ってのは、普段団体戦に出れない人たちを
メンバーに入れまくるっていう感じかな。
そうやって団体戦の雰囲気に慣れてもらうことを期待すると。」
Dさん「団体戦では特に最後の7R目にみられることが多いよ。
6R終了時点で、
昇級確定、残留確定(昇級は無理)、降級確定の大学は、
7R目で本気を出そうが出すまいが、
結果は変わらないわけだし。
それなら、出場機会の少なかった子たちを
出そうっていうわけ。」
Aさん「厳密に言えば、
結果は違うんだけどね。
残留するにしても6位よりは3位の方がいいし、
降級でも8位より7位、
昇級でも2位より1位の方がいい。
次の団体戦の時に、
団体の勝ち数および個人の勝ち数が一致した時には、
順位で判定するわけだから。」
Bさん「でも、そんなことは滅多に起こらないけどね。
全てのリーグを合わせても5年に1度レベル。
プロの将棋なら、順位は大事だろうけど、
大学将棋の7人の団体戦では、
そこまで順位に固執するメリットがないからね。」
Dさん「というわけで、うちらも次は育成でいこうというわけ。
とはいえ今日来てるのが8人だから、
育成といっても大して変わらないけど(笑)
団体戦に、
オーダー表に書かれた14人が全員来ている大学なら、
全く戦力の違う育成チームができあがるんだろうけどね。」
夜倉先輩「それに付け足すけど、
7R目は育成する大学が多いから、
なるべく6R目までに残留を確定しといた方がいいのさ。
例えば、
残留するには7R目に勝って、なおかつ、
他の大学の結果次第っていう条件だと、
正直かなり厳しい。
他に残留争いしているライバルの大学の
対戦相手が昇級or残留(昇級は無理)or降級が確定しているなら、
その対戦校は育成してボロ負けする可能性が高いから。
そうなると、こちらが頑張って7-0とかで勝っても、
ライバルの大学も同じく7-0で勝って、
勝ち数の差で、こちらは降級とかもよくある話。
だから、なるべく、
6Rまでに決めるか、
7Rまでもつれこんでも、
7Rに勝てば自力で残留とかそういう状況じゃないと、
厳しい。」
Aさん「だから団体戦って実力差で順位が決まっているようで、
実はそうでもないんだよね。
7R目にあからさまな育成オーダーするところが多いから。
だから、
7R目に当たる大学がどういう状況なのかもけっこう重要。」
Bさん「今回の最終戦はストライク大か。
ストライク大からしてみればロケット大は残留を決めているし、
育成で来てくれるとありがたいなー。
育成で来てもらって、勝てれば、
ストライク大も何とか残留できそうだし。
とか考えてると思う、たぶん。
とはいえ、うちは8人しかいないから、
そんなに戦力変わらんけど。」
というわけで7Rの
VSストライク大のオーダーは、このようになった。
大将 トニー・1年・1152 3-3
副将 B・3年・1562 6-0
三将 C・2年・617 2-3
四将 D・4年・1213 3-0
五将 E・1年・746 3-3
六将 F・2年・391 0-3
七将 G・2年・336 1-3
Aさんが待機した。
Aさん「結果はどうでもいい対局だけど、
負け癖がついてもダメだから、
ワザと負けたりしないように。
新戦法を試すとかならやってもいいけど。」
そして7R目が始まる。
僕は、先週の悔しさから学んで、
自分の武器にもするべく、
筋違い角を指してみる。
相手もその対応は慣れたもので、
相筋違い角となり、
やばい、
調子に乗って指さなきゃよかったかもしれないな(笑)と
思いながらも、角筋を気を付けて、
こないだネットでちょろっと見た、
筋違い角の定跡や狙いを思い浮かべては、
指し続ける。
最初は、
ふざけて慣れてない戦法指しちゃった、
てへぺろ(・ω<)
って思っていたが、
終盤に近付くにつれ、
あ、もう筋違い角とか関係ないわって展開になり、
きっちり読み込んで、押し切る。
結果は、
トニー、Bさん、Eさん、Gさんが勝ちで、
団体では4-3で勝ちだった。
Gさんが勝てたことに驚いたが、
Gさん曰く「アヒルで惑わしてやったぜ!!」とのこと。
よく本番でアヒルが指せるなぁ。
勝ったことに興奮していたGさんが棋譜を並べると、
アヒルの片足とかじゃなくて、典型的なアヒルだし。
そして全対局を終えて、結果発表に。
ロケット大は、4勝3敗 勝ち数25の4位。
個人成績は、
大将 トニー・1年・1152 4-3
副将 B・3年・1562 7-0
三将 A・4年・921 3-3
四将 C・2年・617 2-4
五将 D・4年・1213 3-1
六将 E・1年・746 4-3
七将 F・2年・391 0-4
八将 G・2年・336 2-3
九将 幽霊・3年・100以下 0-0
あと不戦敗3つ。
となり、Bさんが全勝賞として、
地下鉄の500円券のようなものをもらっていた。
4部の全順位も出る。
昇級
1位バルサミコス大
2位メランコリー大
残留
3位メリケン大
4位ロケット大
5位ギャラクシー大
6位メトロポリス大
降級
7位ストライク大
8位カルマ大
6位と7位以外は、
今季が始まる時と同じ順位だった。
こんなことも、あるんですねぇ。
夜倉先輩「上と下も見に行くよ♪」
ということで3部と5部の教室にみんなで行くことに。
3部7位 トレーダー大
8位 プリンス大
黒板を見ると、プリンス大は7連敗で余裕の降級だったが、
トレーダー大は団体では3勝4敗なのに勝ち数の差で降級になっていた。
夜倉先輩「へー。トレーダー大が落ちてくるんだー。」
トニー「トレーダー大が落ちてくるのが意外なんですか?」
夜倉先輩「うん。だって、去年の学生名人がいるし、
戦闘力2000ぐらいも2人以上いた気がするしなぁ。」
トニー「それで、どうして落ちてきちゃうんですか?」
夜倉先輩「詳しいことは分からないけど、
たぶん2000以上どうしの潰し合いで負けが混んだのかな!?
3部の大学ともなると、
戦闘力2000以上が複数人いるところも珍しくないし。
というか2000以上が複数人いないと残留は厳しいし。」
トニー「へー。3部と4部って、そんなに差があるんですか?」
夜倉先輩「けっこう驚くほど差があるよ。
しかしなー、トレーダー大が落ちてくるのか。
正直、今のロケット大がトレーダー大に
勝つ姿は想像できないなぁ。
良くても1-6の想像しかできない(笑)
でもでも、今後の活動次第で勝てるかな?
それに期待するか。」
そして5部の教室にも行く。
5部1位 ロマンス大
2位 ミラクル大
夜倉先輩「正直、5部はよく分からない。
ロマンス大もミラクル大も、割と最近参加した大学だし。
でもこれで、秋の4部リーグが決まったね。」
秋の4部リーグは
1トレーダー大
2プリンス大
3メリケン大
4ロケット大
5ギャラクシー大
6メトロポリス大
7ロマンス大
8ミラクル大
夜倉先輩「だからロケット大の対戦順は、
初日:ギャラクシー大、ミラクル大
2日目:メリケン大、プリンス大、トレーダー大
最終日:ロマンス大、メトロポリス大
4位っていう順位だから仕方ないけど、
次も2日目が山場だね。」
そして、
団体戦最終日恒例の打ち上げが始まる。
みんながドンチャン騒ぎする中、
やっぱり僕は、
夜倉先輩のことが気になっていた。
先輩がトイレに行くタイミングを見計らって、
後ろからついていき、一緒にトイレに入る。
トニー「せ・ん・ぱ・い」
と背中に触る。
夜倉先輩「お、何だ、トニー君、つけてきてたのかよ。」
トニー「先輩。うやむやにするつもりじゃないでしょうね。」
夜倉先輩「大丈夫だって、うやむやになんかしないよ。
デートは、いつがいい。」
トニー「もう。デートなんかしなくても、十分好きですのにー。」
僕は、たまっていたムラムラが抑えきれずに、
先輩に抱きついていた。
服の上から、先輩の温かさが伝わってくる。
男の人に抱き着くと、何でこんなに気持ちいいんだろう。
いや、ただの男の人じゃない、夜倉先輩だから
余計、気持ちいいんだ。
夜倉先輩「君の気持ちは分かったよ、トニー君。
ただ誰か来たら困るから、
いったん落ち着こうな、な。」
と言われて、何事もなかったかのように、
違うタイミングで打ち上げの席に戻る。
打ち上げも終わり、解散して、
それぞれの方向に帰ることになる。
皆が方々に散ったのを見届けてから、
夜倉先輩の方についていく。
トニー「先輩。止まってください。」
一向に、先輩は止まらないし、むしろ早歩きになっている。
さっきのことで怒っちゃったのかなぁ?
心配になりながらも、
もう一度、止まってくださいと言おうとしたその時、
先輩は止まって急に向きを変えて、
僕のほっぺにキスしてきた。
僕が驚いていると、
夜倉先輩「さっき抱き着かれた時さ、俺も凄く気持ちよかったんよ。
こんな可愛い後輩に好かれてる俺って幸せだなぁって思ってた。
でも、時と場所を考えようね。」
トニー「やっぱり、怒ってたんですか?」
夜倉先輩「怒ってはいないよ。
ただ、時と場所を考えないで本能のまま行動しちゃうと、
お互いに不利益を被ってしまうこともあるからさ。
分かるんだけどね、
好きな人がいたら本能のまま行動するのも。
ただ、そういうのは時間のある時にしようねって思ってるだけ。
それこそ、今度予定が合えば、
ホテルに行って誰にも見られずイチャイチャとかの方が
落ち着いて楽しめるじゃん。」
トニー「ということは今度ホテルに行ってくれるんですか?」
夜倉先輩「うん、一緒に行ってみよう。
今度の土曜ってあいてる?」
トニー「あいてまーす!」
夜倉先輩「それじゃあ、詳しい連絡は後でするから。
今日はいろいろ疲れたから、
正直言うと、もう帰りたいんだ、ごめん。」
トニー「そうですね。では、さようなら。
あ、できれば、さよならのキスしてほしいです。」
夜倉先輩「しかたないなー。」
今度は唇を重ねた。
先輩の唇の感触も、すごくいい。
トニー「ではでは、今度の土曜日、楽しみにしてまーす☆☆」
どうすんだ、これ(汗)
いくらなんでも作者の願望が過ぎますよ!!って感じですね。
こんな後輩とホモホモしてーんだ!!
っていう作者さんの願望は十分伝わりましたけど、
いや、この後どうすんだよ(笑)って思いますね。
一応、全年齢向けで書いてるんで、ホテルとかのシーンは
あってもカットの方向のつもりです(*^_^*)
(現在は念のため、R15に設定してます。)
そこの話数だけR18で書くとかの方法もあるでしょうけど。
とりあえずはカットの方向で。
しかし小説がというか、トニー君おそろしいな。
初期の構想では、この展開はもうちょっと遅めにする予定だったんですが、
書いているうちにトニー君が人格を持ち始めて、
夜倉先輩に抱き着いちゃうから、困ったもんだ。
ちなみに団体戦のトレーダー大のモデルにした大学はあります。
多少、戦力とか脚色はしてますが。
自分が4部で指していた時に、
なんでこの大学が4部にいるんだろ?
2部でもそこそこ通用しそうなのになっていう経験をモデルにしてます。
あの時の団体戦以降、3部すなわちB2級は、
マモノが住むとか、カオスとか言われるようになりましたね。
最近は、カオス風味はそれほどなくなり、
普通のリーグになっている気はしますけどね。
あぁ、後Gさんがアヒルで勝っていますが、
自分も1年の頃にアヒルにハマっていて、
4部でアヒルで勝ち星をあげたことがありました。
何はともあれ、楽しもう!