行動の理由
団体戦最終日を4日後に控えた、水曜日の活動時間。
Dさんは就活のショックが大きいためなのか、
今日も部室には来ておらず。
Aさんが言うには、最終日には来るということだったが、
不安が残るなぁ。
そして、団体戦2日目を
声優のファンクラブイベントでドタキャンしたFさんは、
何事もなかったかのように部室にいる。
先輩方は無言の圧力をかけているようだが、
我、関せずといった様子である。
Fさんについて
凄い人だなぁと思う反面、
いや、人としてどうなのさ!?とも思っていた。
そんなこんななこととか、2日目のことも話したくなり、
僕は、夜倉先輩と通話する。
夜倉先輩「もしもし、どうしたの?」
トニー「こんばんは。夜倉先輩。
団体戦と部員のことで話したいことがあったので。」
夜倉先輩「あ、そうだった。団体戦はどうだったん?
公式サイトには団体で3連敗したんだなってのは
把握できるけど、トニー君自身の成績は?」
トニー「自分自身も3連敗でしたよ。
物凄く強かった相手もいたんですが、
正直、自信がなくなりかけてます。
元々自分が強くないって分かってたんですけど、
初日の2連勝と、
2日目の3連敗の差が激しすぎて。」
夜倉先輩「なるほど、なるほど。
分からんでもないね。
戦った相手が強くないとはいえ、
2連勝すると、自分っていけるじゃん!と
自信もつくけど、
その幻想がボコボコにぶち壊されると、
一気に落ちるもんね。」
トニー「そんな感じです。」
夜倉先輩「それを解決するのは難しいね。
強いて言うなら、誰もが通る道さ。
これについては、
気を取り直して!としか言えない(笑)」
トニー「それと、後ですね。
DさんとFさんのことについてなんですけど。」
夜倉先輩「DとFがどうかしたの?」
そこで、団体戦に2人が欠席したこととその理由、
また、Fさんの今日の部室の様子などを話す。
トニー「正直、Fさんには、人としてどうなの?という
思いが渦巻いてます。
Dさんのように就活で休むならまだしも、
自分の趣味で休まれてますし、
今日も最初に一言、言っただけで、
何事もなかったかのように過ごしてましたし。」
夜倉先輩「なるほどなるほどね。」
夜倉先輩「それで、トニー君はFのことを嫌いなの?
憎んでるの?」
トニー「憎むとかそこまでは思ってないですけど、
ちょっとな・・・って感じです。」
夜倉先輩「なるほどね。
では僕の私見を述べさせてもらうよ。」
夜倉先輩「休んだという点では、DもFも一緒。」
「DもFも、朝になってドタキャンした。」
「つまりFだけを責めるのはお門違い。」
「というのが、俺の持論だね。」
トニー「えぇ・・・。そうなんですか?」
「だって就活と趣味じゃ、差があるでしょう。」
夜倉先輩「それは君の思い込みだね。
一般的には就活が大事と思われてるけど、
それは人の価値観次第なわけ。
入りたい企業の面接がかぶっても
団体戦に行く奴は行くだろうし、
好きな声優のイベントに当たっても
団体戦に行く奴は行くだろうし、
ということでそれに大差はないんだよ。」
夜倉先輩「Fはそのイベントに行くという選択をして、
一生では得られない経験をしたのかもしれない。
Dはその会社の面接を受けることで、
貴重な経験をしたのかもしれない。
だから、休む理由で差をつけるべきではないよ。
休んだって事実は一緒なんだから。
要は両者にとって、団体戦に行くよりも、
それらの経験をすることが勝っていたというわけ。
それについてどうこう言っても、変えられはしないし、
無理に変えようとするべきでもないよ。」
トニー「・・・・・・・。
先輩の言うことは何となく分かりましたけど、
でも部の人も大部分が、
Dさんには温かく、Fさんには冷たいですよ。」
夜倉先輩「それは、学生という狭い視野だからじゃない!?」
「社会人になると、違った見方になってくるよ。
俺も大学時代は、将棋部の活動に熱中しすぎていて、
団体戦に来ないメンバーのことを、なんでや?とか
思ってたけど、
でもその人達にとっては、
団体戦よりも重要なことをしているかもしれない。
団体戦に行くよりも、
恋人とイチャイチャしてた方がいいとか、
旅行に行ってた方がいいとかさ・・・。」
夜倉先輩「社会人だと余計分かるんだ。
本当に、時間が無いから。
だから、その人にとって大事なことを優先すべきだと思う。
俺も田舎の支部で月1回、将棋を指してるけど、
ふと思う時があるんだ。
ここで将棋指してるのは確かに楽しいけど、
でも将棋指してたからって出会いはないんだよな(笑)って。
だから、例会の日に出会いのイベントが重なっていたりすると、
理由をつけて休んだりしてる(笑)。
支部の例会と、大学の団体戦という大会では
意味合いが少しは違うだろうけど、
本質的には同じだよ。
社会人がって言ったけど、学生でも同じ。
学生でも時間はというか人生の時間は
限られてるわけだから、
選択は自由だし、その選択を尊重すべきとは思うね。
DもFもドタキャンみたいな連絡してきたのが
マイナスではあるけど。」
夜倉先輩「俺も大学時代は、そんなこと深く考えずに、
惰性で将棋部の活動に参加してたようなこともあったからさ。
だから、トニー君には惰性じゃなくて、
しっかり考えて行動してほしいと思ってるんだ。」
夜倉先輩「おっと、一人で喋りすぎだね。」
ちなみに、トニー君はどうして団体戦に行ってるの?」
トニー「え、それは将棋が楽しいからです。」
夜倉先輩「将棋が楽しいだけなら、
何も団体戦に行かなくてもいいじゃないか。」
トニー「えーと、お世話になった先輩方と一緒に戦っていたいからです。」
夜倉先輩「他には?」
トニー「団体戦の雰囲気が独特で、
あの場所で何度も指したいと思うからです。」
夜倉先輩「他には?」
トニー「・・・・。
すいません、思いつきません。」
夜倉先輩「いやいや。
入部して1ヵ月足らずでそこまで言えれば十分だよ。
そうやって自分がなぜ、この行動をしているのか、
考えることは大事だよ。
何かをするにしても惰性で何となくやっていては勿体ない。
人生は短いからね。
人生は短いなんていうと、
オッサンって思われるかもしれないけど(笑)。
団体戦以外でも、
自分はナゼ将棋を指しているのか?
自分はナゼ動画を何時間も見ているのか?
自分はナゼ小説を書いているのか?
などというように、考えてみるのは大事。
本能レベルの活動している時には思わなくていいけど、
長くなってきて惰性でやっているかもしれないな自分?
って思えてきたら、自問自答してみるといいよ。」
トニー「それでは1つ思いつきました。
夜倉先輩は、何で、卒業して4年も経っているのに、
団体戦を見に来るのですか?」
夜倉先輩「ほほう。じゃあ自問自答してみよう。」
「大学将棋の雰囲気が懐かしいから。
でも懐かしいだけじゃ行かないよな。
ある程度、話せる面子がいないと。
そもそも俺が行き始めた理由って何だっけ?
俺が卒業した時の2学年下の後輩たちと仲が良く、
その様子を見に行くためか何なのかは忘れたが、
団体戦に行くことに。
あ、そうだ。様子だけじゃなくて、
オーダー表がうまく作れてるのかも気になってたんだ。
それが今ではその後輩たちも卒業して、
俺の卒業後に知り合った後輩たちしかいない。
でもその後輩たちとも何回も顔を合わせることで、
仲良くなっている。
仲良い後輩達と会えるキッカケとしては、
団体戦が手っ取り早いからね。
とはいえ話せる面子的に、
そろそろ行くのも潮時かとは思っているが(笑)」
夜倉先輩「という感じっすね。
考えて行動するのが大事とか言っておきながら、
俺自身の考えがそんなにまとまってなくて、ごめん。
でもこんな風に自問自答しながら、
考えをまとめていけばいいと思うよ。
そうすれば、充実した人生を送れるはず。
おっと、人生とか、また大きなこと
言っちゃってるけど。」
トニー「もう1つ質問があります。
先輩は将棋の例会を休んで、
出会いの場に行ったりしてるということなのですが、
特定の恋人は今いるんですか?」
夜倉先輩「今は、彼女も彼氏もいないよ。
出会いの場に行ってもなかなかうまくいかなくてね。
そういう場にいくことでコミュ力とかの鍛錬にはなるから
いいんだけど、特定の相手は探せてないっす。」
トニー「僕とか、どうですか?」
夜倉先輩「いやいやいや、トニー君。
まだ1回しか会ってないんだし、今度の日曜で2回目か。
でもそれでも早いなー(笑)
それに、トニー君は、男を狙うにしても、
同年齢の子で探した方がいいと思うよ。」
トニー「なんですか、それ。
こないだは可愛い後輩って言ってたのに、
本当はそんな風には思ってなかったんですね(>_<)」
夜倉先輩「いや、そんなことはないよ。
今でもトニー君のことは可愛いと思ってるし、
団体戦初日が終わってからトニー君のことを
妄想して興奮してたりもしたよ。
ただ、トニー君はそんなに焦らなくてもいいんじゃないかと
思ってる。
どうしてもマイノリティは同類が近くにいただけで、
強い親近感となり恋心とかも抱きがちだけど、
それこそ、
二チョ目とかに行けばたくさんいるし、
大学内にも何人か探せばいるだろうから。」
トニー「先輩、はっきり興味ないって言ってくれれば楽なのに(>_<)」
夜倉先輩「いやいや、ホント凄く、興味あるよ。
ただ、ある程度の年齢の俺が、
19歳のトニー君を狙うのも、
何か、イケナイ気がしてね。」
トニー「そんなこと、気にしなくていいですよ。」
夜倉先輩「うーむ・・・。
でも、まだ会ってる回数が少ないのは事実なわけだから、
団体戦が終わってから、
デートしようね。
デートしてから決めるってことで。
トニー君もデートしてみないと分かんないっしょ、相性とか。」
トニー「最近の相談に乗ってくれる感じとかから、
もう十分好きですよ、先輩のこと。」
夜倉先輩「・・・・・(笑)。
何はともあれ1回デートしよ。
話は、それからだ。」
トニー「えへ。先輩とデートできるの楽しみにしてます。」
そんなこんなで、夜倉先輩とのやりとりを楽しみながら、
気がつけば団体戦最終日が迫っていた。
今回は、
なんか将棋というよりも、
自問自答の自己啓発みたいな流れになってしまいましたね(笑)
とはいえ、将棋部の活動を惰性でしていませんか?
ってのは自分の大学時代にも言えるし、
おそらくだが現在の部員の何割かにも当てはまるんじゃないかと
思っています。
自分でしっかり考えて団体戦とか将棋部の活動に行くという
選択をしているのならいいと思う。
ただ、それが予定でそうなってるから、
じゃー行くか。みたいな惰性だとね、いろいろ勿体ないねと。
なんだ、今回の話(笑)
要は作者自身、時間の使い方が勿体ないので、
みなさんも気をつけましょうって話かな!?
は~、ホモって何だろうね!?