それほど強くない大学の方針
初日の結果をおさらい。
カントー地区4部リーグ
ロケット大4-3ギャラクシー大
ロケット大6-1カルマ大
大将 トニー・1年・1152 2-0
副将 B・3年・1562 2-0
三将 A・4年・921 2-0
四将 C・2年・617 0-1
五将 D・4年・1213 2-0
六将 E・1年・746 1-1
七将 F・2年・391 0-2
八将 G・2年・336 1-0
九将 幽霊・3年・100以下
2連勝と上々のスタートであり、
僕は気分が良くなっていた。
しかし、2R目の部長の決断が
頭に引っかかっていたので、
夜倉先輩に聞いてみることにする。
トニー「もしもし。」
夜倉先輩「もしもし。
トニー君、いきなり通話なんてどうしたの?」
トニー「いきなりで、すみません。
日曜の団体戦のことで聞きたいことがあったので。」
夜倉先輩「うんうん、なになに?」
トニー「2R目のカルマ大学戦についてです。
カルマ大学は午前は4人しか来ていませんでした。
そこで部長は、
不戦勝でいいから勝ち星をつけてあげたいって、
Cさんを出さずにGさんを出しましたよね。
そして午後はカルマ大学は6人になってました。」
トニー「結果として、6-1で勝てたからよかったものの、
あの場面はひょっとすると強い就活生が、
3人来ていてもおかしくないケースですし、
なおかつ2R目という序盤なので
フルメンバーで行った方が良かったのでは?と」
夜倉先輩「なるほど。なるほど。そういう疑問か。
では、お答えしよう。」
夜倉先輩「正直に答えてもらっていいんだけど、トニー君は、
FやGにはどんな印象を持ってる?」
そう言われたので、
Fさん、Gさんの部室での姿を思い浮かべると・・・
トニー「将棋を真剣にやっているイメージはないですね。
先輩方から言われて、練習対局するような方たちです。
それまではゲームしたり漫画読んでる印象です。」
夜倉先輩「お、正直でいいねぇ(笑)!!、トニー君は。」
「そうそう。彼ら2人は、正直言って、
あまり将棋へのヤル気があるわけではない。」
夜倉先輩「でもさ。今回もしもFとGがいなかったら、 何人になる?」
トニー「えーと、幽霊部員の人が来てれば7人。
来ないでしょうから6人ですかね。」
夜倉先輩「そうそう。だから最初から、
七将が不戦敗になっちゃうんだよね。」
「そうなると、チーム的に困るのは、
何となく分かるよね!?」
トニー「そうですね。最初から1敗してしまうってのは。」
夜倉先輩「おそらく1部とか2部の大学なら、
こんな起用法をする必要はないんだけどね。
強い大学は、ヤル気のあるメンバーだけで、
オーダー表が埋まるから。
でも4部とか5部の大学はほとんどみんな、
団体戦の7人(5部なら5人)を集めるのでさえ、
四苦八苦してるんだよね。
だから、FやGのような人が大会に今後も来るように、
気を使うわけ。
せっかく団体戦に来たのに、
1局も指せないで帰るんじゃ、
大丈夫な人はそれでもいいんだけど、
くさる人は、くさるでしょ。」
夜倉先輩「今回、Gは不戦勝だったから厳密には指してないけど、
そういう雰囲気づくりというかね。」
夜倉先輩「とはいえ、こちらが気を使っても、
来なくなる人は来なくなるし(笑)、
気を使わなくても、
続けて来る人は来るんだけどね(笑)。
その人次第といえばそうなのかもしれないが、
せっかく団体戦に来てくれたって感謝の意味もこめて、
出すケースが多いよ。部員の少ない大学では。」
トニー「なるほど。めんどいんですねー(笑)」
夜倉先輩「めんどいよ(笑)。こういうのに気を使うたびに、
部員の数に困らない強豪大だったら良かったのかもと、
一瞬勘違いするけど、
いやいやそんな大学じゃあ俺は出れんやろうしなぁ。
って感じだから、
この、めんどさとも付き合ってくしかないよ(笑)」
トニー「なるほど、夜倉先輩ありがとうございました。」
夜倉先輩「疑問は全て解消したかな?」
と、ここで、あのことも聞いてみることにした。
トニー「先輩、ちょっと言いづらいんですけど。」
夜倉先輩「うーん? 何でも聞いてよ。」
トニー「先輩って、バイってことは男も好きになれるんですか?」
夜倉先輩「そこきたかー。そうだね、男の人のことも好きになれるよ。」
「こないだDが言ったことを真に受けてるのかもしれないけど、
俺は本当に可愛い後輩をいきなり襲ったりはしないから。
確かにトニー君のことはね、可愛い☆☆☆って、
ぶっちゃけ思ってるけど、
襲ったりはしないから、そこは安心しといてね♪♪」
トニー「いやー、先輩、違うんですよ。
僕も・・・・・バイなんです!!」
夜倉先輩「え?、そうなの?」
トニー「はい。厳密にバイかは分からないんですけどね。
今まで男性としか関係を持ったことがないですし。
でも、女性のことも好きになれるっちゃなれるんですよ。
だから、ゲイ寄りの、バイかもしれません。」
夜倉先輩「へー、驚いたなぁ。
でも何か嬉しいなぁ。
自分の近くにもセクマイがいて。」
トニー「自分も嬉しいです。将棋部でこういう話ができる人がいなくて、
孤立を感じているので。」
夜倉先輩「あぁ、どうせDとかがホモは気持ち悪いとか、
自分の尻が狙われないように注意しなきゃとか言ってるんでしょ!?
誰も、お前の尻なんて興味ないのになー(笑)」
トニー「ははは、そんな感じで、居心地わるいんですよねー。」
夜倉先輩「わかる、わかる。
俺も入部して3年目までは、
将棋部室でバイキャラをオープンにできなかったし。」
などと、いろいろ話して楽しい時間を過ごす。
夜倉先輩「おっと、もうこんな時間か。
ごめん、明日の朝までに作成しなきゃいけない書類があるんだよね。
トニー君とは気が合いそうだし、今度、一緒に遊ぼうよ♪♪」
トニー「遅くまで、ありがとうございます。楽しかったです。
そうですね。いつにします?」
僕は、今すぐにでも夜倉先輩に会いたくなるほど、
先輩のことが気になりだしていた。
夜倉先輩「そうだね。今は団体戦っていう大事な時期だから、
団体戦終わってから遊ぼうね。俺も仕事忙しいし。」
すぐには会えないのか・・と少し残念に思いながらも、
トニー「そうですか。じゃあ遊べるのを楽しみに待ってます!!」
夜倉先輩「団体戦最終日は顔出すけど、
2日目は行けないから、
上位の大学と当たる3連戦、頑張ってきてね!」
トニー「はい、頑張ります!!」
そしてこの日も布団の中で。
は~ぁ、
僕は、夜倉先輩に恋しちゃってるのかな?
いやいやいや、ただ気になってるだけで、
恋まではいってないはずだよ、まだ1回しか会ってないわけだし。
でも、気になることは気になるんだよねー。
そんなこんなを思いながら、
時は過ぎ、
遂に、
春の団体戦2日目を迎える。
オーダー表は、立派なのを作成すればいいんでしょうけど、
すいません、ちょっと今それをする余裕がないです。
ほんのちょっとの時間で作れそうではあるんですけどね。
ただ、この作品はそこまで将棋の内容には踏み込んでいくつもりはないので、
無くてもいいのかな?
いやいや、でも大学将棋を語る上では、
見やすいオーダー表は必要なんじゃないかとか
思ったり、思わなかったり。
まー、最初に書いてある簡易的なオーダー表ではなく、
正式なオーダー表を書くかどうかは、調子次第で。
セクマイってのは、セクシュアル・マイノリティの略ですね。
簡単に言うと、
LGBT(レズ、ゲイ、バイ、トランス)みたいな感じです。
ま、LGBTは代表的なものであって、
それらだけがセクマイってわけではないんですがね。