入部するが
将棋部に見学に行ったのが先週の月曜日。
その間、ガイダンスや授業も少しずつ始まっていった。
話に聞いてはいたが、高校までの授業の方法とは全く別物になるんだな。
この変化に適応できないと、それこそ留年とかしてしまうわけか。
大学入る前までは、何で当たり前のように留年する人が多いんだろうなー?
と一方的に思っていたけど、
こうやって環境の変化を実感してみると、
それにすぐに対応できない人は留年してしまうんだろうなーと思う。
もちろん、一般的なイメージとしての、
サボってるからって人も多いんだろうけどさ。
とはいえ、僕は留年するわけにはいかない。
早いとこ、この、【大学】というゲームの世界に適応しないと!!
そんなこんな思いながらも、将棋部の活動時間である水曜の15時になった。
時間前に行って、ヤル気あるじゃん!って思われるのも困るから、
15時30分頃になってから、将棋部室のドアを開ける。
トニー「失礼します。」
ドアを開けると、前回とは違い、5人の男性が対局したり検討している。
あとの2人は、漫画を読んでいる。
僕に気がついたAさんが、立ち上がり、声をかける。
Aさん「おぉ、待ってたよ、来てくれたんだね、トニー君。
こないだはありがとう。
みんな、彼が、トニー君だよ。」
その一言で、将棋の盤面に夢中になっていた男性たちも振り返る。
B「おお。君がトニー君か。Aから話は聞いてたよ。」
C「君が入ってくれると、嬉しいな。」
D「じゃあ、俺と指してみる?」
ってなことで挨拶もそこそこに、Dさんと指すことに。
D「高校では将棋部だったの?」
トニー「いえ、将棋部はなかったので、ネットだけでやってました。」
D「ほう。それは凄いねェ。ネットだけで上達できるなんて尊敬するよ。」
「ちなみに君の戦闘力は?」
トニー「1100ぐらいですね。」
D「なるほど。そりゃあAじゃ勝てないわけだ。」
D「ちなみに俺の現在の戦闘力は、1193さ。いい勝負になると思うよ。」
「楽しい勝負をしよう。」
そんなこんなでDさんとの対局が始まる。
戦型は、石田流VS居飛車穴熊。
穴熊に組ませるのは本意ではなかったが、組まれたからには仕方ない。
そうなったら、小技を仕掛けていくだけ。
しかし・・・・崩せない展開になってしまった。
金駒を打っては、金駒で補強される繰り返し。
他の手を思いつかなくてはと思いながらも、
攻めを緩めると一気にいかれるし、
秒読みもプレッシャーだしで、
そんなこんなで同一局面が4回続いてしまった。
続いたところで、
B「はい、そこまで。」
「先後指し直しでやる?」
D&トニー「いや、いいです。疲れたんで。」
見ると、対局が始まってから90分経過していた。
やっぱり、ネットじゃなくリアル対局でこんな展開になると、
手に汗にぎれて、疲れるけど、楽しいかもしれないな♪
洗面所で顔を洗って、戻ってきた僕は、
トニー「それでは、仮入部します。」
A「いいのかい!!、トニー君。まだ一番強いB君と指してないけど。」
トニー「いいんです。今日みたいな熱い対局ができると、
疲れますけど、気持ちいいですからね。」
そんなこんなで僕は、将棋部に入部することとした。
週1回の活動日の他にも、時間が合えば将棋部室に立ち寄り、
対局を重ねていった。
そして、団体戦を4日後に控えた水曜日。
A「それでは、皆さん。僭越ながら、
わたくしが春の団体戦のオーダーを発表します。」
(名前・学年・現在の戦闘力)
(幽霊とは、幽霊部員のこと。)
大将 トニー・1年・1152
副将 B・3年・1562
三将 A・4年・921
四将 C・2年・617
五将 D・4年・1213
六将 E・1年・746
七将 F・2年・391
八将 G・2年・336
九将 幽霊・3年・100以下
トニー「えー、僕が大将なんですか!? 一番強くないのに。」
A「テンプレ通りの、驚きありがとう。」
「やってみれば分かるけど、大将だからって一番強い必要はないのさ。」
トニー「そうなんですか。」
B「そうなんだよ。そこが誤解の多いところだけど。」
「とはいえ、強い大将はもちろんいるから、
そん時はトニー君の若さと勢いに期待してさ。」
トニー「オーダーの並べ方にも戦略があるんですか?」
D「そら、あるよ。ま、団体戦当日に来るOBの先輩が見たら、
多少は突っ込まれるかもしれないけど、一応、我々なりの戦略はある。」
トニー「へー、勉強し甲斐がありますね。」
A「そう、焦らないでいいよ。そのうちコツが分かってくるからさ。」
A「では皆さん、団体戦に遅刻しないように、しっかりと集合しましょう。」
「ではでは、健闘を祈って、サヨウナラ!」
全員「サヨウナラ!」
というわけで、順風満帆な将棋部といった感じで、
春の団体戦を迎える。
迎えるのだが・・・・何だろうな、この寂しさは。
将棋部のマジメな人達とは、
将棋を通して熱い気持ちを共有してはいるんだけれども、
恋愛感情を抱くような人は、いない。
おいおい、部活はあくまで部活だろ!と心の声が突っ込んでくるが、
そうなんだけどさ。せっかく将棋部に熱中して長い時間を過ごすんだからさ、
将棋部の中で好きな人とかいたら、より、イイじゃんとか思うわけよ。
わがままな想いなのは、分かっているんだけどね。
それは無理だとしても、
せめて将棋部室が自分にとって落ち着ける空間になれたらいいなーと思ってる。
例えば、ホモ的なことが気軽に話せるとかね。
先輩達の雑談では、
「授業で一緒だったやつがオカマっぽくってさ。
何か、気持ち悪いんだよねー。」
とか
「知ってるか。〇〇部のあいつ、ホモなんだって。
俺も尻を警戒しとかないとなー。」
とかとか聞こえてくると、憂鬱になるわ~。
先輩には悪いが、その時ばかりは心の中で、
「だれもお前の尻なんて狙わねーよ、ボケが!」
とか思ってた。
贅沢な想いだろうけど、将棋部関係でホモまたは、
ホモ系の話が気軽にできる人がいるといいのになーって思いながら、
団体戦初日の朝を迎える。
将棋部だけに限らず、
どんな環境でもなかなかカミングアウトってしずらいというね。
別に、しなくてもいいんだろうけど、
そういうのができると安心できるというかね。
こっち系だと分かると、「俺も尻を警戒しなきゃ」
とか勘違いしてしまう人も少数とはいえ出てくるんで、
カミングアウトすることがいいことなのかどうなのかって難しいんでしょうけどね。
大学将棋のオーダーは、あんな感じです。
大将が一番、強い必要はないんだからな。
大将が一番、強い必要はないんだからな。
大事なことなので2回言いました。
もちろん、当て馬対策をしておいて、
結果的に一番強い人が大将で出るのはいいんだけれども、
最初っからオーダー表の一番上に一番強い人の名前を書くのは、
悪手になりやすいからねっ!
って、そんな声高に叫ぶことでもないんでしょうけど(笑)