将棋部見学
4月3日
僕の名前は、涼川トニー、男。
名前から分かる人もいるとは思うけど、ハーフさ。
今日は、待ちに待ったロケット大学の入学式。
面倒な式が終わって、外に出ると、部活やサークルの勧誘が目に入る。
テニスサークルのビラ配りや声がけが、凄く盛り上がってるな。
しかし、僕には既に見学に行こうと決めている部活があるんだよね。
それは・・・・・・将棋部。
高校までは将棋部というものがなかったため、
自分だけでインターネットの世界で、将棋にそこそこ没頭していた。
そんな僕の、今の戦闘力は1100。強い人には歯が立たないが、
田舎の町道場では三段でも通用した腕前さ。
このロケット大学には将棋部があるみたいだし、
自分の力を試す意味でも、即入部ではないが見学に行きたいと思ってた。
後、できればだけど、カッコイイ先輩がいるといいなぁ・・・。
文化部室棟3階にある、将棋部のドアをノックする。
中には、眼鏡をかけた男性が2人いた。
1人は棋書を読み耽り、もう1人は畳の上で仰向けになっていた。
トニー「失礼します!」
部員A「お、入部希望者かい。」
トニー「入部までは考えてないんですけど、
ちょっと将棋を指したいなって思いまして。」
「新入生の、涼川トニーといいます。」
部員A「そうなんだ。じゃあ、F。寝てないで、対局してくれ。」
部員F「わ、分かりました。よ、よろしくお願いします。」
トニー「よろしくお願いします。」
そう言って、あっという間に対局が始まりそうになる。
トニー「えーと、振り駒は?」
部員F「そちらの先手でいいですよ。」
トニー「分かりました。では、時計は?」
その瞬間、部員Aの目つきが変わる。
部員A「君、時計使えるの?」
トニー「一応使えます。
時計を使わずに自分も相手も長時間考えるのはキツイですから。」
部員A「ほほう、それなりの経験者のようだね。
ではFとの対局で力をじっくり見させてもらうよ。」
「時間は?」
トニー「できたら、15分の60秒を希望します。」
部員A「おい、というわけだからF。気合い入れてやってこいよ。」
部員F「言われなくても手は抜きませんよ。
そいじゃあ、よろしくお願いします。」
ということで部員Fとの対局が始まった。
その間、部員Aは興味深そうにこちらを見ている。
誰かに対局を見られるのって緊張するんだよなぁ・・・
ミスしたらどうしようっていう嫌な汗が流れてくるんだよなぁ。
とか考えながらも、冷静に指していく。
20分後。
部員F「ま、負けました。」
部員Fとの勝負に勝ったが、正直、歯応えがなさすぎる。
1回指しただけじゃ分からないが、この人の戦闘力は500ぐらいか?
大学将棋って、これぐらいのレベルなのか。
思ってたより、大したことないんだなと正直、思ってしまった。
部員A「やれやれ、Fでは勝負にならなかったか。
どうだい、トニー君だっけ?」
「俺ともお手合わせ願えないかな!?」
トニー「分かりました。よろしくお願いします。」
そして、部員Aとの対局が始まる。
部員Aはそれなりの戦闘力をうかがわせる指しまわしで、
さっきの対局のように、簡単に突破口が開きはしなかった。
とはいえ、40分後。
部員A「ありません。」
勝った。
とはいえ危ない場面は感じず、終始リードを保っていたような印象だ。
失礼ながら、
あまりレベルの高い人がいない将棋部に入るのも、
どんなもんなんかね?と思えてきた。
自分自身も1100でそれほどレベルが高いわけではないけどさ・・・。
そんな考えを察したのか、
部員A「トニー君。今日はこの面子しかいないけどさ、
活動日にはもっと強い人が来るから。」
「できたら、来週の水曜日の15時からの活動にも来てほしいんだよね。
頼むよ。」
トニー「そうなんですか。ちなみに失礼ながら、
大学将棋って、これぐらいのレベルなんですか?」
部員A「ち、違うよ。」
「ロケット大学はカントー地区の4部リーグにいるから、
こんな感じだけど、上の大学は化け物なみに強いよ。」
「うちの大学はなかなか部員が入ってこないからさ、7人制の団体戦で、
さっき対局したFもレギュラーで使わざるを得ないのさ。」
「そして新入生を含めない今季の戦力だと、
5部へ降級する可能性も高かったから、
できるなら、即戦力として、入部してほしいんだ。」
部員Aは熱い口調で語っており、
それだけ危機感を感じているんだなと思えた。
とはいえ、自分もどうしようか、悩んでいる最中ではある。
トニー「分かりました。来週の水曜日にまた来ます。
まだ入部を決めたわけではないですが。」
部員A「お願いします。あぁ、そうそう、
うちの部は部費とか徴収はしないから、
入部するってことを重く考えなくてもいいからね。
だから、頼む、入って!」
トニー「それは、また今度決めるってことで(笑)。では、さようなら。」
と、将棋部室のドアを閉めて、外に出た。
ふぅ・・・危機感があるのは分かるけど、
最初から熱く言われると正直、引いちゃうなぁ(笑)
ただ、即戦力と言われて悪い気がしないのも事実ではあった。
しかししかし、そんなことよりも、
やっぱり将棋部ってカッコイイ人は、いないのかなー。
もちろん、今日は2人しかいなかったから、
他に、カッコイイというか自分好みの男性がいるかもしれないけど、
でも、あの部室の乱雑さとか・・・そういう雰囲気見てると、
いなさそう・・・。
将棋部内で彼氏つくって、イチャイチャ対局するという妄想してたけど、
それは難しそうだな。
ま、彼氏は他でつくればいいか。
とりあえず大学生活を楽しもう♪♪
大学名について・・・実際の大学名を
改変してつけようかなとも最初思いましたが、
いろいろめんどくさそうなので、横文字で。
中心とするのは将棋の内容よりも、
それに関わる主人公や登場人物の考えとかですかね。
正直、棋譜を書きながら分析するつもりは、あまりないので。
大学将棋を知っている人なら、ニヤリとする内容があるかも、
逆に、知らない人には意味不明なとこもあるかも(笑)
当然ですが、なるべく更新していきたいと思います。