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1章 1話

遥か昔。

このエスメラルダ大陸は、魔族と呼ばれる亜人種達の支配する土地であり、人間は彼らに使役される家畜に過ぎなかった。


しかし、今より千年程前の事。

ある一人の人間の登場によって、それまでの状況は一変する。


その者は自らを勇者と名乗り、名のある魔族を大勢討ち取って、人間達を解放していく。


そして仲間を得た勇者は、勢いに任せて魔族の本拠地へと攻め込み、ついには魔族の王である魔王を討ち取る事に成功する。


魔王を失った魔族達は、そのまま勇者達になす術も無く追い立てられ、大陸の北東に浮かぶカザーフ島まで撤退した。


勇者達はそれでも満足せず、カーザフ島まで攻め入り、魔族を根絶やしにしようと画策したが、それは失敗に終わる。


何故なら、カザーフ島の周囲は潮の流れが激しく、人間は満足な造船技術も飛行手段も持たなかった。

魔族の必死な抵抗と合わさって、勇者は島への上陸を断念せざるを得なかったのだ。


こうして絶好の機会を逃した人間達は、勢力を回復し、大陸の奪還を狙う魔族との戦いに明け暮れることになる。




―大陸北部・ノーストリア王国内―


「で、殿下、お待ちください! あまり我等と離れては危険でございます!」


「黙れ! そう思うのなら、この僕に追いついてみせろ!」


騎乗している三人の騎士が、同じく騎乗している一人の少年を追いかけている。


騎士は何とか追いつこうと、自身の馬に鞭を入れる。

しかし、元々互いの馬には大きな差があった。


騎士の馬は体が小さく、痩せていて貧相。

対して、少年の馬は体が大きく、肉付きも良い。


互いの距離の差は縮まるどころか、どんどん広がっていく。

そしてとうとう、騎士の馬は走るのを止めてしまい、騎士達は少年が遠ざかるのを只見送るしかなかった。




「……なんだ、もう付いて来れないのか? 我が国を守る騎士ともあろう者が不甲斐のない!」


騎士達を完全に引き離した少年は、湖の畔に着いたところで少し休憩する事にした。


騎士への態度と身なりを見る限り、この少年はとても高い地位にいるようだ。


それもその筈。

この少年は、エスメラルダ大陸の北部を領するノーストリア王国の王子。

名を、アルス・ノーストリアと言う。


「あいつらには罰を与えねばな。

 騎士号を剥奪し、一兵卒へ格下げしてやろうか?」


貴族や王族の子弟は、無条件に自らを優れていると思い込み、臣民に対して壮大な態度を取りたがる。


このアルス王子もその例に漏れず、自身の護衛達に先程の様な暴言を吐くのは、日常と化していた。


「大体、遠乗りをするのに護衛なんか必要ないんだよ。

 それなのに、姉上が余計なことをするから……!」


自分より五歳も年上で、何事にも優れた面を見せる姉に対し、王子は悪態づく。


王女は女性でなければ、王国の跡継ぎになっていたと言われている

王子はその姉と何事においても比較され、その事が彼の性格を歪めてしまったのかもしれない。


やがて王子は、馬に積んでいるワインや果物を口にしながら、束の間の自由をどうやって過ごすか考え始める。


そんな時、近くの藪の中から黒い影が出現し、王子に対して勢い良く襲い掛かった。


警戒を全くしていなかった王子は、その黒い影に易易と意識を刈り取られてしまい、地面に力なく倒れ込んだ。





「王子はどこまで行ったんだ? いつもなら、この湖で休憩なっている筈だが」


「ここには稀に、魔物が水を求めてやって来る。

 王子の身に何事もなければ良いが……」


「お、おい。あれはもしかして……!?」


遅れて湖にやってきた騎士達に、信じられない光景が飛び込んできた。

それは、地面に倒れ伏したまま動かない王子の姿だった。


三人は周囲を見回したが、繋がれていない王子の馬が彷徨っているのみで、王子を害した原因となるものは発見出来ない。


三人は意を決し、武器を抜いて馬から降りると、周囲を警戒しつつ王子の下へ歩み寄る。


「これは……

 落馬して、頭を強く打ってしまったのか?」


「そうだろうな。

 恐らく、茂みから飛び出した魔物に、馬が驚いてしまったんだろう。

 ……目立った外傷は無いが、声を掛けても反応なさらないぞ」


「おい。お前は王子の駿馬を使って、城にこの事を伝えてくれ。

 王子を安静に運ぶには、馬車か何かが必要だろう。

 後、回復魔法が使える法術士も大至急な!

 俺達はここで王子の看病をしながら、魔物に対して警戒を行う」


「ああ、任してくれ!

 皆をすぐに連れて来るからな!」


役目を任された騎士は、王子の馬を使いつぶすつもりで城へと向かう。


この時、王子から罵倒された事実は、既に騎士達の頭の中から消え去っている。

代わりにあるのは、王子を救うという一念のみ。


それでも、王子が助かるかどうかは、神のみぞ知るところだった。

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