(2)
しこりが残っているような感覚が残ったまま鏡夜も帰る事にした。
その時、
「ちょっといいかな。」
と後ろから声を掛けられた。
振り向くとそこに立っていたのは黒シャツ司書だった。
「はい、なんですか?」
すると彼はあーと言いながら、何やら話あぐねているような様子だった。
辛抱強く待っていると、彼はこうぽつりと言った。
「君、何か見えてるの?」
自分の存在を疑問に思われているのは覚悟の上だったが、その方向から質問が飛んでくるとは思わず、少し驚いた。
「えっ、何でですか?」
見えているとは言わず、少し様子を確かめようとクッションを置いてみた。
「いや、だってこんな窓側に立っている割にはグラウンドを見ている訳でも空をずっと眺めている訳でもないし。それに何だか誰かの顔を確認するみたいにちらちら横を向いたりしているからさ。」
そこまで言われて、いかに自分が怪しい行動をとっているかを再確認させられ、さすがに恥ずかしさを覚えた。
「あー、いやー……。」
返答に困っていると、彼はもう一歩ぐいっと鏡夜に近付いてきた。
「もしかして、幽霊と話しているのかい?」
目がやけに爛々としているのが少し怖い。
「だとしたら、なんですか?」
否定も肯定もしない返答を鏡夜が返すと、彼は更にわくわくした表情を浮かべた。
「おいおい、本当か!これはすごいぞ。ちょっと君、今日時間ある?いや、さすがに今日は遅いか。明日!明日もここに幽霊と会いに来るのかい!?」
すごい圧で迫ってくる彼の態度に鏡夜は圧倒されていた。
「いや、まあ…明日も来ると思います。」
涼音の様子も気になると思っていたが、どうやら明日はこの男に捕まるようだ。
「そうかそうか。じゃあまた声かけてよ。僕は神門明。よろしく!」
差し出された右手に応じてこちらも手を出すと、神門はしっかりと両手で鏡夜の手を包み込んだ。
なんだか、面倒な事になってきたかもしれない。




