(4)
「なんだか鏡夜、最近顔つき変わってきたね。」
「え、そうかな?」
「うん。初めて会った頃はなんだかぽわーんってしてて、どこか生きる気力にかけてたっていうか。でも今はすごく満ち溢れてる感じがする。何かに向けて頑張ってるって感じが顔に出てる。」
「普段通りなんだけどな。」
相変わらず勘が鋭いというか。涼音に隠れて、彼女の成仏方法を探っている事もばれているのではないかとすら思える。ばれた所で悪い事をしているつもりはないのだが。
「でも、死んでいる君に生きる気力にかけてるだなんて、なかなかだね。」
「本当だよ。だから今は安心してるけどね。」
少々不謹慎かとも思える冗談でも気兼ねなく話せるようになった。
少しずつだが距離が縮まっているように感じられて嬉しかった。
涼音と話していた所、向こうから神門がこちらに手招きをしていた。
なんだろう。
「何か用事かな?」
「そうだね。ごめん、すぐに戻るよ。」
神門の元に駆け寄る。
「どうしました?」
「いや、ごめんごめん。ちょっと今日は早く帰る予定でね。その前に進捗の程はどうかなと思って、それだけ聞いておきたかったんだ。」
「ああ、その事ですか。」
神門は鏡夜の後ろに視線を向ける。
目線を追ってみると、先程まで涼音と話していた場所だ。
「今日も喋ってたのかい?」
「はい。またすぐに戻りますけど。」
「あ、そうなんだ。邪魔しちゃったみたいでごめんね。」
そう言いながら視線はそのままだった。
「……って…よ。」
「え?どうしました?」
「ああ、ごめん。それで、どうだったの?」
その後、神門にはざっくりとした説明だけしておいた。
それについては鏡夜のあての存在に現在調査は進めてもらっているが待機中だとだけ伝えておいた。
神門はその人物について興味津々であったが、説明するのが面倒なので本人の存在は基本的に非公表なものなのでこれ以上は言えないと適当に説明をしておいた。
岬について彼に伝えてしまうといろいろと面倒だと思ったが故の判断だった。
あまり詳細を聞けなかった事でがっかりしている様子だったが、それ以上中身がない事に渋々納得し、早めの帰路へと向かっていった。
いけない。すぐにと言っていたのに思っていたよりも時間がかかってしまった。
「あれ?」
さっきまでそこにいた涼音の姿が見当たらない。
周りを見渡してみたがやはりいない。
他の本棚の間も見て回ったが結果は同様だった。
帰ってしまったのか。
何も言わずに消えてしまった事が少し腑に落ちなかったが、彼女にも彼女の事情があるのかもしれない。
まあいいか。
特にする事もなくなったので結局鏡夜も帰る事にした。
その夜、携帯に岬から着信があった。
「八尺神社に集合。」
それだけ言ってぶつりとは電話は切れた。
八尺神社。
鏡夜の街から一駅程離れた場所にある神社だ。
悪霊がいると分かってそこに行く。
普通ならば絶対に避けて通る道に今から自分は真正面から突っ込んでいくのだ。
気は重いが、やるしかないのだ。