(3)
帰宅後、彼の名刺に書かれた連絡先に電話を掛けた所、前に会った公園で直接話をする事になり、鏡夜はすっかり暗くなった公園へと向かった。
先に来ていた岬は、挨拶代りに軽く右手を上げた。
「ひょっとして、家近いの?」
「ああ。歩いて30分。」
「近くはないと思うけどな。」
「そうか。で、話って?俺に連絡するぐらいだから、そういう事なんだろうが。」
「うん。実は、頼みたい事があって。」
そして鏡夜は岬に涼音の事、布施の事を一通り話した。
鏡夜が話す間、岬は何も言わず時折相槌を打つように首を動かすのみだった。
「その悪霊を引っ叩いて、安心して涼音ちゃんに成仏してもらおうって寸法か。」
会ったこともない女性に向かってちゃん付けとは。
鏡夜はその表現に少しむっとした。
「そう。でもどうやってヤツを探し出していいか分からない。いるかどうかの確証もないんだけど。」
「それで悪霊の事ならおまかせってんで俺に連絡したと。」
「そういう事。」
「分かった。お前の恋の行方に興味はないが、悪霊ってんなら放ってはおけないな。」
「恋してるだなんて一言も言ってないじゃないか!でも、って事は引き受けてくれるの?」
岬はにやりと笑った。
「いいぜ。正式に引き受けた。ただし、一つ条件がある。」
「条件?」
「悪霊払いはボランティアじゃねえ。れっきとした仕事だ。お前が依頼人なら俺は報酬をもらう。」
「お金って事?」
「そうだ、と言いたい所だが、到底お前みたいなガキがすんなり払える値段じゃない。そこで、お前に出来る事をしてもらう。」
なんだか、猛烈に嫌な予感がする。
岬が鏡夜の両肩にぽんっと手を置いた。
「悪霊一体の浄化。それが条件だ。」
勘弁してくれっていうのが本音だった。
でもこれも、涼音の為だ。