(2)
「そうか。道理で身に覚えがあると思ったが、そういう事か。」
神門に涼音の事について話した所、彼は事件の事を覚えていたようだった。
「ただ、布施は既に死んでしまっています。そうなるとどうやって彼女の想いを遂げさせたらいいか…。」
「そうだな。」
しばしの沈黙が流れる。
あれから鏡夜もどうにか出来ないものかと考えたが、何一つ良い案は思い浮かばなかった。
「…一つあるかもしれない。」
やがてぽつりと神門がそう呟いた。
期待を寄せて彼の顔に目を向けるが、決して優れたものではなかった。
「何ですか?出来る事があるなら教えてください!」
「いや、悪いが解決法とは言えない。ただ低いながら可能性はあるかと思っての事なんだが…。霊がこの世に留まる理由についての話は覚えているか?」
「はい。何らかの強い想いを持ったままこの世を去った人間が霊になるんですよね。」
「そう。なら、布施に関してもそれは当てはまるんじゃないかって。」
「布施が?」
「恨み、悲しみ、未練。布施の場合、まだまだ人を殺したりないという思いが強く残っているんじゃないかな。想像すると恐ろしい話だが。けど、彼の遺書がそれを物語っているとは考えられないか。」
布施が最後に遺した言葉。
“まだ終わらない”。
奴は今でも、殺しに飢えているというのか。
「だとすると…とんでもない悪霊ですね。」
「布施の魂を解放、もしくは消滅させればそれがすなわち古都宮君の成仏につながるかもしれないな。」
「なるほど。」
でも…。
「でも、どうやって布施の悪霊を探す。それに彼が本当に悪霊になって漂っているかなんて分からない。あくまで全て仮定の話に過ぎないからな。」
その通り。
涼音に関してはすでに霊になった存在が確認出来ている。それ故に彼女の身元を辿る事はそこまで難しい事ではなかった。
だが、今回は逆だ。霊魂になった布施を探さなければならない。
勝手があまりにも違いすぎるのだ。
普通の人間にすぎない鏡夜や神門に、これ以上はどうする事も出来ない。
いや、待てよ。
「神門さん。もし布施が悪霊として現存しているなら、僕にあてがあります。」
悪霊関係ならなんでもOK。そうだよね。
「え?」
力には意味がある。
なら、その意味を、力を、使わしてもらう事にするよ。岬君。