#30 優妃子(2)
私が砂でお山を作ってナオ君を待っていたらナオ君は水中眼鏡を頭に乗せて、
足ひれをバタバタさせながら海から戻ってきた。
「ユキ!大漁だ!」
網の袋に沢山のサザエとかウニが入っていた。
「ナオ君、すごーい」
私が驚くとナオ君は得意げに笑って私に全部あげるって言った。
「いいの?」
「お父さんとお母さんにもあげるんだぞ」
私はとても嬉しくてほんとにその場で飛び跳ねた。
「ナオ君ってほんとうに潜るのが上手なのね」
「まぁな」
「あ、そうだ!」
私は今度の日曜日に町である遠泳大会の事を思い出した。
「でも、ナオ君ってちゃんと泳げるの?」
「何言ってるんだよ。泳げないやつがこんなに獲ってこれるかよ」
「だっていつも潜ってばっかりだから・・・クロールとか、平泳ぎとか・・・」
「馬鹿だなぁ。そんなもん簡単さ。大人にだって負けないぜ」
「ほんとに?」
「当たり前だろ」
「だったらえんえい大会でる?」
ナオ君は難しい顔をして言った。
「出られるわけないだろ。十六歳とにならないと出られないんだ」
「そうなんだ・・・。でもナオ君がかっこよく泳いでるとこ見てみたいなぁ」
「そうだなぁ」
ナオ君は指を折って「四年!」と言った。
「オレ早生まれだから中学三年になればでられるよ。その時まで待てるか?」
「うん!」
その日が来ることをとても楽しみにしていたけれどそれから数日後、私はナオ君にお別れも言わずに町を出て行った。