#1 夏(1)
某ブログで連載した小説を多少修正しながら連載いたします。
某アニメ制作会社×某ゲーム会社の作品を見たのを切欠で書きました。
最初息抜きのつもりで書いていたのですが、だんだんのめりこんで行きまして・・・
かるーい気持ちでお付き合い下さい・・・と言いたいとこですが・・・
「 朔 -ついたち- 」
開け放たれた窓からは蝉の声が流れ込み、申し訳なさそうに揺れる風鈴が空気の澱みを透明にしてくれた。
床に仰向けになって天井をぼんやりと見ていた尚也は読みかけの漫画本を手に取った。
暫く画を見ていたが興味が湧き出ない事に腹が立ってそれを投げ捨てた。
あの頃。
夏休みという響きだけで胸が高鳴り、目の前の世界が永遠に開けたように思えた。
今は息をすることさえ意味を求められているような圧力を感じ、堕落、怠惰、無気力、そういった観念に支配されている心と身体を自分でもどうしようもできないほど持て余していた。
(なおクン、あしたもあそぼうね)
目を瞑るとユキの顔が浮かんで来る。
(しゅくだい、どうするんだよ)
ユキは少し困った顔で虫取り網の柄を握り締めた。
(せっかくの夏休みだもん・・・・もっと、ナオくんと、いっぱい、あそびたいな)
夕焼けがユキの頬を染め、尚也の鼓動は身体中を駆け巡った。
(しょうがねぇなぁ、あした、な)
(うん!)
幼い尚也は虫篭を襷がけし虫取り網を振り回しながらユキの家に行った。
(ユキちゃーん)
家の中は閑散として返事が無い。昨日約束したのに。
(ユキちゃーん!)
尚也は喉が痛くなるほどに叫んだ・・・・・・
しかし人の気配はない。幼い尚也はもう一度叫んだ。
(ユキちゃーん・・・)
「は~い、私がユキちゃんでぇ~す」
夢、現実、夢・・・?
「良介!」
「いいえ、ユキちゃんでぇーす」
尚也は咄嗟に起き上がると顔を近づけていた良介に頭付を食らわした。
二人は激痛で奇声を上げながら床をのた打ち回る。
「あんたたち、何やってんのよ」
小春は二人を見下ろしながら呆れ顔で呟き、亜季は廊下からその光景を見て声を上げて笑っていた。
「お前ら、な、なんでいるんだよ!」
良介が鼻を押さえながら言う。
「わざわざ3時間も掛けて来てやったのにそりゃないだろう」
「そうよ。それに終業式のとき約束したでしょ。あんたの実家に遊びに行くって」
「あ、ああ・・・マジだったのかよ・・・」
「だから当てにならないって言ったのに」
亜季が廊下でもじもじしているその後ろで母親が声を張り上げた。
「尚也!折角いらっしゃってくれたのにちゃんとしなさい!」
尚也の母親は「まぁまぁ」と微笑みながら亜季の背中を押して部屋に入れ、人数分のサイダーをお盆ごと床に置いた。
「ゆっくりしていってくださいね~、・・・尚也!」
尚也と母親は廊下に出た。
「友達が来るんならなんで言わないの」
「いや、まさか本当に・・・・」
「母さん、買い物に行って来るから」
「何の」
「三人分しか夕飯の支度できないんだから」
「え?あいつら家に泊まるのかよ」
「当たり前でしょ!」
母親はそそくさと階段を下りて行った。




