深海の明星
暗く深く意識が遠退いていく。
黒と言うより深い青。
黒よりの青。
何も考えられず、ただ落ちていく様な感覚。
寒く凍える色に暖かさはあるのだろうか?
助けなど無い。助けられる筈も無い。
光が一点に集中し消えていく。
この世界で希望が喰われ絶望になる瞬間。
◇◇◇◇◇◇◇◇
バンッ!
カカァァ
何かが迫り来る白龍の左頬に当たり白龍は甲高い声をあげ仰け反る。
「よぉ!リュウ。随分、派手にやられたな!」
幼馴染リックがリュウを見て口を開く。
「「リュウ様っ!!」」
リュウの従者のマドカ、アーシャが駆け寄る。
ニコと右の口角を上げて返事する。
「…」
もはや、口を開く気力も無いリュウ。
そんな、リュウにリックの右側に居たアルベールが目に入る。
それは、絶望に染まった世界に置いて明るく輝く星の様にリュウの目には映った。
「た・の・む」
近くに居たマドカ、アーシャも聞き取れないであろう蚊が鳴く声で頼むリュウ。
今はこの星に……
お願いするしかない。
流れ星の様に直ぐには消えない。
その星は昼間でも太陽を押し退け輝く事が出来る。
前人未到の金字塔を立て続ける、
我が道を歩く奇想天外な、
自分にとっての最高の1番星なのだから。
「あぁ。」
リュウに返事をしながら視線を白龍に合わせるアルベール。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「すっすまない!!アルベールはっ!アルベールは何処に?」
レイン。
「どっどうしました!?レインさん。」
ルシェラ。
ダンジョンを出た後、アルベールを探していたレインはたまたま屋台で食べ歩きをしているルシェラ、シルフィード、クロムを見つけた。
「実はっ!白龍が出たんだっ!今、リュウが1人で戦ってるんだ!アルベールを救援に向かわせて貰えないか?」
レイン。
「ッ!」
3人とも驚く。
「そっそれでアルベールは何処に?」
「今なら満豚屋じゃないか?」
シルフィード。
「うん。それか今日は家で魔導具を作ってる最中じゃないかしら。」
ルシェラ。
「そうか!」
レイン。
「待って!なら私とレインさんは満豚屋に行ってシルフィーとクロムちゃんは家に帰って!」
「わかった。」
「わかりましたわ~♥️」
「すまない。頼む。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
フンフンフン♪
ズルズルズル
モグモグ
「いや~旨いな♪」
「はい。であります。」
「替え玉も頼む?」
「はい。であります。味噌豚骨なんて初めてであります!!」
「そうなの?でも、確かにあんまりメニューに無いよな♪」
「凄く美味しいであります!」
ズルズルズル
モグモグ
ズルズルズル
モグモグ
「いらっしゃませー!」
「アル君っ!!」
「アルベールッ!!」
「えっ!?ルシェラさん……と…どういう組み合わせ?」
困惑しながら聞くアルベール。
「アル君ッ!緊急事態なの!今、アイツがっ白龍が出たみたいっ!」
「えっ!?」
「頼む。アルベール力を貸してくれ!!」
頭を下げるレイン。
「…」
「アルさんっ!アルさん!行った方がいいであります!」
「いやいや、無事帰って来たんでしょ?なら、ダンジョン封鎖でいいでしょ?」
「いや、今リュウが1人ど戦ってるんだ!」
レイン。
(おいおい、マジか…)
「あぁ、替え玉…」
「そんな事よりっアル君っ!!行こう!」
アルベールの腕を持ち席から立ち上がらせるルシェラ。
「えっえっえっえっ!!」
「アルさん行ってらっしゃいであります。」
「あっ待って、リーゼお金を置いとくから後、俺の分の替え玉食べてくれー」
「はい。であります!」
(食べきれるか不安であります!)
◇◇◇◇◇◇◇◇
「たっ頼む!!私の息子を助けてくれ!」
アルベールがレインとルシェラに連れていかれ選抜討伐の本部が天幕まで入るとレグナール家現当主がいきなり土下座をした。
「アル。お願い、リュウを助けて。」
リサが頼む。
「アルベール頼むっ!手を貸してくれ!」
リュウの幼馴染のリックが頭を下げる。
「アルベール!お願いっ!!リュウ様を助けて。」
「お願いします。」
従者のマドカとアーシャまで頭を下げる。
「あぁ、直ぐに行く。ロムを通して現在の状況は?」
「一進一退って所だな。だが、リュウが押されてる。当たり前だが……」
ギルドマスター ウォーテルが口を開く。
「なら、最初に言っておくが最悪なケースを考えろよ!ダンジョンでピーピー騒がれたら迷惑だからな。その覚悟ある奴だけ着いて来い。」
「俺も行く。」
ジャバウォックがいきなり口を開く。
「…」
誰もが口を開かず無言のまま少しの沈黙が流れる。
「心配しなくても、貴族の坊っちゃんには危害は加えねぇよ。カルロスがやられたからな。それに、俺が居た方がいいぞ。」
「俺は構わない。」
アルベール。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョン入り口。
「おいっ!アルベール!時間が無いんだろ?なら、急ぐぞ!」
「生命の源よ、俺の元に」
「【樹誕愚】」(じゅたんぐ)
木が地面から沢山生えてその場に居る全員を乗せて移動する。
「アルベール!お前のバフを俺の木に掛けろ!時間がねぇんだろ!?」
「あぁ…」
アルベールはジャバウォックが魔法で生やした木に速度強化のバフを掛けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
(大分、弱ってるな……今度は逃がさねぇぞ!)
「躍り狂え! 【残骸骨・骸】」
魔法陣から骸が多数出現する。
「おいっ!イケドレ!!アイツを拘束出来るか?」
「あぁ?俺に言ってんのか?テメェー。あんま調子に乗ると沈めんぞっ!!」
「出来ねぇなら下がって黙ってろよ!」
「チッ!」
「生命の源よ、俺の元に」
「【樹誕愚】」(じゅたんぐ)
白龍の足元から木が生えて白龍を押さえ付けて拘束し出した。
「魔力強化!!」
自身に魔力強化を掛けて骸達もアルベールに魔力強化を施している。
「連鎖施錠!」
骸達も白龍を拘束し始める。
アルベールは両手を前に出し三角形の形を作る。
「欲望に打ち勝てず顔を踏み続ける神聖な遊女」
「自傷し死傷し手にした新たな顔」
「肉欲と肉塊 恋い焦がれ、灰消え」
「その度に付け替える残念な仮面」
「小指切り騎手無き老兵
理不尽で高貴な貴婦人」
「上に嘘、下に理想 拒絶せよ!心中せよ!」
「お清めを唱え 木枯れをお祓い」
「地に足を付け
己の弱さを知れ、無力を知れ」
「赤紫の器に白い顔 金色の富と権威」
「屍になりし時、その思想悔い改めるがいい」
白龍の足元に紫色の大量な魔力の塊が出来る。
「【紫葬】」(しそう)
白龍の足元に出来た黒紫色の魔力の塊が墓石の形になり白龍を襲う。
黒紫の一撃は見た目の魔力量に反比例して無音。
時が止まったかの様に一切の音が消えた。
カカカァガカカカァァァァガガガガカカ
甲高い声と共に横たわる白龍。
「よっしゃー!!」
「やった!」
「よぉし!」
ロムのコメント
・よっしゃー
・いった!いった!
・アルベール様ー
・やっぱりアルベールwww
・アルベールの安心感パネェw
「アル君っ!!♥️」
ルシェラが勢い抱き付きブチュー。
「やっぱりアル君は凄いよ!!一撃じゃん!凄い凄い♪」
「いや、まぁ弱ってたし…」
「関係ないよっ!!だってアル君以外だったら誰も倒せないよ!!」
「まぁそれは、そうだけど。」
2回目のブチュー
「へへへへへへ。」
顔を赤くするルシェラ。
「俺たちも帰ろううか。」
「うん。」
「…アルベール……もういいか?お前が倒したんだから素材回収頼んでいいか?」
気まずそうなリック。
「早くしろよ。コイツの転移石使って帰るらしいからな。」
ジャバウォックはリックを指差しながら口を開く。
「あぁ、お貴族様はどうした?」
「リュウならとっくに帰ってる。マドカとアーシャが付き添って医療斑と治療院にでも行ってんじゃねぇか!?」
リック。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ありがとう。君のお陰で息子は生きていた。本当にありがとう。」
帰還後、リュウの父親から泣いて感謝された。
「えぇまぁ。本当に俺のお陰です。(笑)本当に(笑)今は特に困っていないので何か困ったら助けてくれます?貴族の権力を行使して(笑)」
「それは、勿論だっ!本当にありがとう。出来る限りの事はするっ!ありがとう。ありがとう。」
「無事で何よりだ。」
ギルドマスター ウォーテルが声を掛ける。
「まぁ、俺が逃がした様な物だからな、ケジメは着けないと。」
「いや、すまないな。冒険者組合に所属していないお前を行かせたりして…正直、お前しか頼める冒険者が居なくてな……」
「だろうな……でも、逃がした俺に落ち度が少なからずあるし、まぁ今回はこれでいんじゃね?」
「そう言って貰えると助かる。本当にありがとう。アルベール。」
「あぁ。ところで話が変わるんだが白龍の素材はあのお貴族様に渡す事にした。」
「えっ!?アル君っ!!いいの?」
ルシェラが驚きながら会話に入る。
「うん。体張ったのはあのお貴族様だからな……それに左腕無いし(笑)ヒャハハハハ!!」
「…」
ルシェラもウォーテルも言葉が出ない。
何で、コイツは笑ってるんだ?と。
2人とは対照的にアルベールは腹を抱えて笑っている。それはそれは、幸せそうに。愉快に。
「ヒャハハハハ!!ヒャハハハハ!!」
「ヒャハハハハ!!ヒャハハハハ!!」
「左腕…ドンマイ(笑)ヒャハハハハ!!」
「ヒャハハハハ!!左腕!ヒャハハハハ!」
「アル君っ!流石に不謹慎だから止めなさい!!」
我慢が出来なかったルシェラが声を荒らげながら注意をする。
「は~い……」
(チッ!怒られちった…でも、左腕無い(笑)…プププ。)
(マジでざまぁ(笑)…生まれながらにしてボンボンでイケメン……だが今は……プププ。ざまぁ(笑))
(神は二物も三物も与えるが途中で調整という名の略奪をするんだぜ!!覚え時な!!イケメンのボンボンよ。プププマジでざまぁ)
作者より
これってざまぁですかね?
ざまぁに入りますかね?
生まれながら金持ちイケメン、強い男がボロボロ…
ざまぁですかね?(笑)
冗談はさておき、
白龍戦の補足と言うかイメージとして
白龍のHP推移
アルベールとの戦闘で90%消費→逃げる。
逃げた先で10%→50%まで回復。
リュウとの戦闘で8%~10%消費。
残りをアルベールが討伐。




