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追放された男、最狂にて  作者: 新仁友成
第一部 第6章 矜持と約束
45/50

レグナール家

(ハァハァハァハァ…ハァハァ)


グガァガァァ!!!

白龍の大きな咆哮。


(もう少しだ。もう少しなんだ……ハァハァ)


グガァガァァ!!!

白龍の大きな咆哮。


(次だ。次で…最後だ……)


グガァ!!!

白龍の大きな咆哮。


「お前もそのつもりか?ハァハァなら、話は早いな。」


「己の信念を貫いた時、天門を潜り抜けた雷は王の姿に戻る。」


「ウオォォォ!!!!!」


白龍も口元に青色の魔力を溜める。


(もっとだ!もっと魔力を。これで…これで最後だ。全身の力を絞り出せぇ!!)

「ウオォォォ!!!!!」

「【天門・麒麟】!!」(てんもん・きりん)

上空に天門が出現し雷が潜り抜け麒麟の形に変形し白龍に襲い掛かる。


白龍も青い真紅な炎で応戦する。


バンッ!!

ボンッ!!


「ウアァァァァァァ!」

(コイツはここで俺が倒す。)


「ウアァァァァァァ!」


ロムのコメント

・行けるんじゃね?

・イケイケイケイケー

・頼むぞっ!!

・マジで頼む!

・お願いっ


◇◇◇◇◇◇◇◇

白龍の青い真紅な炎と自身が放った天門・麒麟が衝突した時、全身の力を振り絞るリュウに昔の出来事が頭を過る。


リュウ・ダルク・レグナール。

ミストニア王国6代貴族レグナール家の嫡男。

元々、アレクサンダー王国から王位継承問題でミストニア王国とアスラル王国に分離した時に騎士として手柄を立てた騎士の名家。


彼が授かったアビリティは鳴門雷鳴鳴神。

6文字だった。

生まれた時から父だけでなく、母もレグナール家の関係者全員が喜んだ。

父は騎士として国王軍に入隊させる為、厳しくも優しく優しく育てて来た。


「リュウよ。レグナール家の人間は決して敵に背中を見せてはいけないんだ。」


「はい。父上。でも、それはなぜですか?」


「我々は騎士なのだ。騎士とは味方を守り味方を庇い、味方の盾となる。それが騎士なのだ。騎士としての信念とレグナール家の矜持なのだ。」


「はい。」


「リュウよわかるかい?だからレグナール家の人間は絶対に敵に背中を見せてはいけないんだ。」



幼き頃の父との会話。

幼いながらも理解した。理解出来た。


幼馴染のリックと外の世界で羽ばたいてみたいと決意し父に冒険者になりたい。と伝えたときの事。

「本当なのか…?冒険者に?」


「本当です!お願いです。父上、冒険者として生きていきたいです。」


「なぜだ?……なんで冒険者なんだ?」

泣きながら父が問い掛けてきた。


冒険者と騎士。

どちらが命の危険が高いか?と言えば圧倒的に冒険者だ。ダンジョンで人の大きさの何十倍もする魔物という化け物相手にするわけだから。対して騎士は犯罪者を相手にする、つまり人間なのだ。騎士がダンジョンに潜る事など先ず無い。

だから、父はレグナール家としてだけでなく息子を想い将来有望な騎士として育てて来た。


それでも、最後は背中を推してくれた。

「リュウよ。お前の人生だ。好きにしなさい。ただ1つだけ、約束をしろ!逃げたい時、コイツは危険だ!と直感で感じたならば直ぐに逃げなさい。逃げるのは恥ではない。例え騎士としてレグナール家の人間としてそれが恥ずべき行為だとしてもだ。命に勝る信念も矜持もこの世には無いんだ。だから必ず生きて生きて生きて私に顔を見せなさい。これが私との約束だ。」


「はい。父上。必ず生きて顔を出します。」

そう言って幼馴染のリックと冒険者としての道を歩みだした。


◇◇◇◇◇◇◇◇

「ウオォォォ!!!」


自身が放った最終奥義と青い真紅な炎の決着はまだ着いていない。


「ウアァァァァァァ!」


(父上…すいません……約束は………守れそうにありません……馬鹿な息子で…親不孝で……すいません。)


「ウアァァァァァァ!」

全身から全ての力を出すリュウ。そこにいつもの貴族らしく気品があるのに貴族らしからぬ何処か余裕があり爽やかな好青年はいない。

何が原因かは定かではないが右目からは涙が出て鼻から鼻水が垂れた好青年は今を必死に生きようとしていた。


「ウアァァァァァァ!」


(でも…レグナール家として……騎士としては……どうですかね?………出来る限りの事は……しました…父上の子供で嬉しかったです。…約束は……果たせませんが……俺は…俺の信念は…曲げません!)


「まだまだー!!」


「ウオォォォ!!!!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「なぁ、リュウよ。人の本質ってのはその人が死地に置かれないとわからない。私はね。そう思うだよ。」

優しくリュウに口を開いた父。


「だから、私はもしその様な状況に置かれた時は騎士らしい立ち振舞いが出来るか自分自身に不安と楽しみのよく分からない感情なんだ。」


「不安…と、楽しみ…ですか?」


「うむ。」



◇◇◇◇◇◇◇◇


「ウォォォォ!!」


そこに勝算は無い。

有るのは意地だけ。それが何の意地なのかはわからない。人間としてなのか、冒険者としてなのか、レグナール家の嫡男としてなのか。


(父上……俺の……私の…本質は騎士でしたよ。ありがとうございます…父上…)


「ウオォォォォ!!」

(まだだ、まだ倒れる訳にはいかないっ!!)


覚悟を決めた。

希望はアルベールが救援に来てるれる事。

そこまで、どうにか魔力を切れ起こさず耐えて耐えて凌ぐ。だが、そんなリュウの算段も目の前の白龍が打ち砕くのは打撃による攻撃と同じくらい早かった。


「ウアァァァァ!!!!!!」


明日の事なんて考えられない。

普段のダンジョン攻略も遊びでは無いが終わったら何をするか?明日は何をするか?そんな事が頭を過るのは冒険者としてではなく人間としての性。

なら、今はどうだ?

四方八方からの死という圧力がリュウに押し寄せてくる。生まれて初めての経験。


「ウオォォォォ!!!!」


全身の毛穴から臓器から絞れるだけ魔力を絞り出す。この一撃に魂すらも込める。

叫びすぎて喉が軽度の火傷をした時の様なヒリヒリした痛みを覚え千切れるのかと錯覚すらするほど、腹の上辺りは力を込めすぎてつる箇所と臓器が飛び出すくらいの感覚に足の感覚なんてもはや無い。胴体と繋がっているのかさえ、わからない状態。


「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

「ウァァァァァァァァァァァァ!!」


それでいい。

明日の事なんて、今はどうでもいい。

頭の中は白龍の事しか無い。

リュウの頭の中、意識と意地が合致した。

覚悟を決めた漢の一撃が白龍の青い深紅な炎を押し始めた。


「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

「ウァァァァァァァァァァァァ!!」


打撲なのか?骨折なのか?わからない。

全身の骨が軋む音がこの爆音の中でもリュウの耳に届く。だが、攻撃は緩めない。

腹は決めた。

魂はこの一撃に入れた。


「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

「ウァァァァァァァァァァァァ!!」


ロムのコメント

・押してる押してる!

・イケるイケる!!

・マジで頼むよ神様

・神様助けてくれ頼む。

・イケイケイケ


「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

「ウァァァァァァァァァァァァ!!」


白龍を倒せた後の事なんて何も考えていない。

自分も死んでいるかもしれない。

それが、何だ?

白龍と対峙した時、アルベールの救援を期待していた逃げ腰だった貴族はここには居ない。


「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

「ウァァァァァァァァァァァァ!!」


「ウオォォォォォォォォォォォ!!」

「ウァァァァァァァァァァァァ!!」


バンッ!!

【天門・麒麟】が青い真紅な炎を打ち破り白龍の顔面に当たった。

カカァァ

白龍は今まで、聞いた事の無いような甲高い声をあげて大きく仰け反った。


ロムのコメント

・やった

・イケるイケる

・イケイケ行け

・マジでイケる

・よしっ


ロムを通して視聴している人々誰もがリュウの勝利を確信し歓喜している。












そんな中、リュウは力なく女の子座りをして今にも死にそうな面持ちをしていた。


グガァ!!!

白龍の大きな咆哮。


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ

直後、大きな口を開き地面を削りながらリュウ目掛けて突進してくる白龍。


酸欠なのか?出血多量なのか?

リュウの意識はボーッとしていた。

白龍が自分を補食する為に口を開けて来てる。

ただそれだけ。

そこに恐怖も無い。逃げる気力も無い。


ただ、少しずつ時間が止まってる気がしていた。

遅く遅く遅く、まだ白龍は自分の所に来ていないんだ?そんな疑問が頭の片隅を過る。



◇◇◇◇◇◇◇◇

白龍が迫り来る今、幼馴染のリックとの思い出が頭を過る。


何不自由ない生活を送ってきたリュウだが出会った同い年の子には貴族として距離を置かれ、適度な距離感での友人付き合いとなる。家に帰れば礼儀作法から将来有望な騎士になる為の教育。

貴族として四方八方雁字搦めの中でいつしか窮屈だ。と感じていた。


そんな中、貴族として生まれたリュウにただ1人だけ普通に接してくれたリック。


「おーい!リュウ。遊ぼうぜっ!」


「リュウ何してんだよっ!?」


「リュウ大きくなったら、一緒に冒険者になろうぜ!?」


嬉しかった。大方、決められている自分の人生が変わる気がした。だから、リックと冒険者になる事を夢みていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇

(ハァハァ……ハァハァ)


白龍はまだ来ない。

ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ロムのコメント

・リュウ!!

・起きろ!!!!!!

・何してんだよ!

・おいっ!

・ヤバいって!


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ

大きな口を広げ地面を削りながら迫る白龍。


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


(ハァハァ…なぁリック…言った通り…だったろ?)


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


(俺の目に…狂いは……無かったろ?)


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


リックとの思い出を振り返り白龍の大きな口を見ていたら黒髪の少年の顔が頭を過る。


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


リュウがアルベールを知ったのは彼が派手な柄シャツを着込んでからだった。


「リュウ!見ろよコイツ!!ヤバくない?(笑)」


リックは笑いながら【黄金の輝き】のロムを見せてきた。(何だコイツ?)それが、第一印象だった。


鎧1つ無い格好で鎌を振り回しながら最前線で魔物と戦ってる。どう考えても頭がおかしい。

でも、なぜか彼が頭から離れない。


派手な上辺と違い、何処か自分を隠して隠して窮屈そうに鎌を振る彼。

華はノルンやティラに劣るが、なぜか気になった。

Sランクパーティー合同討伐時に彼と会った。


「やぁ、俺はリュウ・レグナールだ。君がアレクサンダーだよね?よろしく。」

笑顔で手を差し出したリュウ。


「wow それはセ・ク・ハラ~?あっ!!」

アルベールは直ぐに女性の所に消えてしまう。

「スゥ~ンカちゃ~ん!今日も可愛い~ね♪」


会話もほとんどした事無い。

リュウが近付けばスゥーと何処かに消えるアルベール。

普段、軽薄な言動が目に余るだけに真剣な話が嫌いなのかと感じたが、どうにもリュウには全てには思えなかった。


きっと彼は傷つくのが怖いのだろうと。昔の自分が友人関係を始めとした人間関係に置いて貴族として本音を殺して仮面を着けていた自分と重なった。


相手に好きになって貰おうと努力した後に拒絶されるから傷つく。なら、最初から嫌われる前提で人と接すれば当然ながら相手から拒絶される。たが、その拒絶は頭の中では想定内の事。不意打ちと比べたら傷が浅い。だから彼は軽薄な男としての仮面を着け本心、本音を隠して生きているのだろう、と。昔の自分が貴族や将来有望な騎士としての仮面を着けて生きてきた様に。


そんな窮屈そうなアルベールが人に対してのアプローチの仕方が違うだけで昔の自分と重なって勝手に助けてあげたい。何とかしてあげたい。そう思ってただけ。

お前は1人じゃない。俺と環境は違うけど少し、ほんの少しだけ通ずる部分があるよ?

俺達似てないか?

いつも、何を想って生活してんだ?

心が急に虚しくならないか?

リュウの1人よがりな想い。

でも、助けてあげたかった。

側で話を、心の声を聞いてあげたかった。


リュウには幼馴染のリックが居た。

リックがリュウの心を救った様にアルベールの心を救いたかった。いや、支えてあげたかった。


(俺が…助けられなかった……のに…助けて…なんて烏滸がましい……な…本当に……)


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ



(ここまでだな……)


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ロムのコメント

・おいっ!!

・起きろ!!!!!

・リュウ!

・おいおいおいおい

・ヤバいって!


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ


ガガガガガガガガギガガガガガギギガガ



バンッ!

カカァァ

何かが迫り来る白龍の左頬に当たり白龍は甲高い声をあげ仰け反る。


(…何だ……?)













作者より

長くなりましたがよろしくお願いします。

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