受付嬢ルシェラ
ルシェラ・グランデ 26歳 彼氏は居ない……
ただ、一途に想う人1人。
彼女は元々、冒険者志望だった。
だが魔力量が極端に低く、授かり物アビリティ【絶品料理】という戦闘系のアビリティでは無かった事で両親からも反対されギルドで働いていた。
彼女自身もギルドで働いている事に後悔は無いが未練の用な物は彼女の中に一定数あった。
幾度か冒険者としてダンジョンに入った事もある。だが、魔力量も少なく【絶品料理】というアビリティでは他の冒険者に馬鹿にされるのが関の山だった。
パーティーに入れてくれた冒険者は低層の素材を必要とする中層以上の冒険者か、あるいは暇潰し程度に潜ろうとしている冒険者。
あるいは、女性として魅力的な彼女を手駒にしたい下心丸見えの冒険者。
彼女は夢、目標よりも現実に嫌気がさした。
そして、彼女は冒険者を諦めギルド職員として働く事にした。
ギルド職員になって以降は比較的穏やかな日々を過ごしていた。
彼女の美貌を手に入れたい冒険者からの誘いはギルドマスターのウォーテルが目を光らせていた。
そんな彼女の前に、身寄りの無い孤児2人が現れた。
2人は許可証が無いのにダンジョンに侵入しようとしたり、冒険者と口論になりそのまま手が出て血が流れる喧嘩をしたり。
おまけに年上の冒険者達を地面に這いつくばらせる腕っぷしの強さを持った2人。
1人は金髪。
大きくなるにつれて礼儀正しく誠実でリーダーシップのある爽やかなイケメン。
1人は黒髪。
大きくなるにつれて自分の世界観が大きくなり、悪目立ちするようになっていた。
多くの人は金髪の方を支持する。
だが、彼女は違う。
まだアルベールが鎧を身に纏い冒険者活動に身を投じていた時、
「アル君、冒険は楽しい?」
何気なくルシェラは聞いた。
「比較的楽しいかな!?どうして、そんな事聞くの?」
「ちゃっと気になっただけ…」
「ルシェラさんは冒険した事ないの?」
「あるよ。昔に少しだけ……
でも、私には合わなかったみたい。」
「合わない?どういう事?」
「体質もあるんだけど、戦闘系のアビリティじゃないからさ…家事とかには役立つからいんだけどね!」
「そんなの関係無いよ!!
いつかさ、ルシェラさんがもう1回、冒険しようと思ったら絶対誘ってよ!!」
「ヘヘヘッ…楽しみだな~」
「うん。そうだね……」
冒険者として居場所が無く失格烙印を押された様な彼女にとって黒髪の少年は無自覚に彼女の心に居場所を提供していた。
「ありがとう…」
用が終わり自分に背を向け歩きだしていた黒髪の少年の背中を見てルシェラは小さく小さく感謝を口にした。
そこから黒髪の少年はディフェンダーとして重装備を脱ぎ、盾も捨てた。
軽装というか武器の大鎌以外は、ショッピングをする格好。
そんな彼を見て本心から心配し幾度も注意した。
「もう!!アル君!またそんな格好して!」
「いいでしょ~!お洒落でしょ~」
とニコニコで対応する少年。
いつしか2人の中で、定番のやり取りになっていた。
そんな中、ギルドマスターのウォーテルの耳に入りウォーテルからルシェラに告げられた。
「おそらく、アルベールがあんな格好してるのは、お前に少しでも冒険者として勇気を持って欲しいからだよ?」
「……」
「あいつは軽薄だから一緒に冒険しようって言われても何とも思わないだろ?
だから、あーして、このポジションじゃ装備はご連絡一択。とか、このアビリティじゃ冒険者として駄目とか所謂、常識を壊してんだよ……」
「…えっ……」
「ちっと、分かりにくいがな…クククッ。
まぁ、アイツらしがな。」
その日からルシェラは8歳下の黒髪の少年を冒険者としてではなく、1人の男性として意識していた。
sideルシェラ
アル君が1人で冒険者ギルドに来た。
(どうしたんだろう?【黄金の輝き】のギルド担当があの馬鹿女2匹、あーダメダメ。私は受付嬢。私は受付嬢。冒険者に対して敬意を持たないと。
あのブス2人になって以降、ノルン君とギルマスに顔見せる以外来なくなっちゃった………
なのに、1人でキターキター!!)
(神様は私を見捨てなかったのね!!
さぁアル君、お喋りしましょー。)
(それでね夜ご飯に誘うぞ!誘うぞ!誘うぞ!
勇気を出せ私。)
(でも、いきなり家に誘うのは重い…よね…?
どーしよ。どーしよ。どーしよ。)
(家に招待して、私が作った絶品料理を味わってほしい。それでね、それでね、料理の隠し味に私の髪の毛を入れちゃおう♥️)
(ホントはね。ホントはね。下の毛を隠したいんだけど、いきなりは重いでしょ?絶対、重いもん!)
(アル君、何か元気がないよ……
どうしたんだろう?でも、何か守ってあげたくなる。アル君♥️アル君♥️アル君♥️アル君♥️)
生まれつき魔力量が乏しい彼女だが逆に母性は溢れ、脳を刺激してしまったのだろう
(アル君が追放された事を報告してきた。
驚きすぎて一瞬、視界がクラッとした。)
その後、直ぐにイラついた。
(あの馬鹿女ども!!!!!!!!
ブス!ブス!ブス!ブス!ブス!ブス!)
(アル君の哀愁漂う背中を見送りながら、冷静になった頭で、宿暮らしになったなら夜ご飯の約束からの同居も夢では無かったと考え泣いた…………)




