1.お花を摘みに。
「…このお花って、今の季節のだっけ?」
訪れたショッピングセンター。
足を踏み入れた入口の先で目にあったのは、広い通路でした。
そこの花壇を見て、亜夜さんが呟きます。
「……室内だと咲くのかな??」
通路の真ん中を、花壇はずっと奥まで長く続いていました。
香夜さんは、手前から奥まで一通り眺めます。
「亜夜姉様、これは造花な気がします」
「そうなの?」
「ディスプレイのコンセプトが、『四季のお花が一堂に!』みたいな感じなのかもですね」
少し先の花壇に、香夜さんは人差し指を向けました。
「ほら、あそこを見てください」
「なるほど。いくら室内でも、流石に春に夏ひまわりは咲かないか☆」
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「か、香夜ちゃん!」
ショッピングセンターの3階通路。
亜夜さんがいきなり立ち止まります。
「アーさんは、お花を摘みに行きたい!!」
数歩先で歩みを止める香夜さん。
「亜夜姉様。 先ほども言いましたが、1階の花壇のお花は多分造花ですよ?」
「…香夜ちゃん」
「あと、勝手に取るのは倫理的にどうかと思います」
「……香夜ちゃん??」
振り返った香夜さんは、双子の姉に近づきました。
「はい、冗談です」
「………香夜ちゃん!?」
「確かに美味しかったですが、亜夜姉様。フードコートで、あんな大容量なジュース2杯は飲み過ぎです」
香夜さんは右の人差し指を、少し先に見える通路脇のベンチの方に伸ばします。
「わたくしは、あそこで待ってますから」
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「…ねえ」
ベンチの向かう香夜さんの左腕を、亜夜さんは後ろから引きました。
「ところでアーさんは、どっちに行けば良いの!」
香夜さんの目が、通路上の案内を捜します。
「トイレは── この通路の奥にあるみたいですね」
「わかった!!」
自分の行くべき方向を把握し、若干の小走でそちらに向かう亜夜さん。
その背中を香夜さんは、軽く手を振って見送りました。




