1.ふたりで
「あ、亜夜姉様!?」
休日の午前11時。
香夜さんの、居間のドアを開ける動作が途中で止まります。
「こんな時間に、何でそこに座ってるですか? デートに遅刻しますよ??」
目に入ったのは、ソファーに背中を預けてる亜夜さん。
その左右の人差し指は、軽く膨らました自分の両頬を突付いていました。
「周平ちゃんにドタキャンされた」
「え?!」
「『提出が迫った課題を片付けないといけないから、今日は許して』 だって」
自分の両頬を押す、亜夜さんの指の動きが早くなります。
「何回か落第してくれたら、アーさんと同じ学年になれるし、いいじゃんね?」
部屋に体を入れ切った香夜さんは、後手でドアを閉じました。
「…その『いいじゃんね?』は、世間的には あまり良くない気がします」
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「じゃあ── 」
香夜さんは、ソファーに近づきました。
「今日はお暇なんですね?」
真ん中に座っていた亜夜は、香夜さんが座る場所を開けるべく右に体をずらします。
「…不本意ながら」
「じゃあ。せっかくだから、ふたりでお出掛けしませんか?」
自分に譲られたスペースに、香夜さんは腰を下ろしました。
「たまには、わたくしともデートして下さい♡」
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「香夜ちゃんとお出掛けかぁ」
右手をあげた亜夜さん。
伸ばした人差し指を、自分の鼻の頭にあてます。
「そう言えば最近、ふたりでのお出かけは してなかったもんねぇ」
香夜さんは亜夜さんの顔を覗き込みました。
「駄目ですか?」
「じゃあ今日はぁ、香夜ちゃんとデートしようかな☆」
「♡♡」
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「お出かけは良いけどぉ」
鼻の頭に指を当てていた亜夜さん。
今度は、その指で自分の鼻筋を撫で始めました。
「服はどうしよう?お揃いにする?? 、それとも別々???」
真似をした香夜さんの指も、同じ様に鼻筋を撫で始めます。
「今日は、おそろいにしましょう」
「それもいいかぁ。制服以外のお揃いは久しぶりだねぇ」
「はい♡♡♡」
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「でぇ」
亜夜さんの、自分の鼻筋を撫でる指が止まりました。
「どれで、お揃いにする?」
動きの変化に気付いた香夜さん。
同じ様に自分の指も停止させます。
「亜夜姉様さまが、良くデートに良く来ていく服にしません??」
「─ どうして香夜ちゃんが、あの服持ってるの?」
「そりゃ、買いましたから♪」
「── なんで??」
「それは、亜夜姉様さまと お揃いがしたいからに決まってます♪♪」
「まさか…入れ替わって、周平ちゃんを騙したりするためだったりは……」
「ぎく♪♪♪」
「か、香夜ちゃん?」
「一応、冗談ですよ。 亜夜姉様☆」
「か、や、ちゃ、ん??」
「今日のデートで、腕を組んだくれたら善処するかも です☆☆」
「…むぅ」




