3.頑張ってぇ
「さてと」
お休みな翌日、亜夜さんは寒奈家を訪れました。
呼び鈴のボタンに指で押しながら、音を口真似します。
「ピンポーン」
暫く待つ亜夜さん。
もう一度呼び鈴を押すべく、右手をあげました。
再び指をボタンに当て「ピンポーン」と口にしながら押そうとした刹那、玄関のドアが開きます。
「いらっしゃい。亜夜っち」
----------
「…お邪魔します」
土間で、靴を脱ぐ亜夜さん。
先に上がった玄関の廊下から、那世さんがその様子を眺めます。
そのふたりの前に、汰世さんが現れました。
「あ、アぁだ。いらっしゃい♪」
「おお、汰世ちゃん」
亜夜さんは、その気合の入った装いに気が付きます。
「また今日は、可愛いおべべ着てるねぇ」
「えへ☆」
「もしかして── 今からデート?」
「そうだよ♡」
「良いなぁ」
「アぁもすればいいじゃん」
「…まあ、そうなんだけどね」
ふたりの会話に、那世さんが口を挟みます。
「確かに、亜夜っちも出来るんだから すれば良いよね。な、ぜ、か、相手もいることだし?」
「う゛」
「羨ましいなぁ。ふたりには、そう言うお相手がいて」
「「、、、」」
----------
「そういえば、タぁは急ぐんだった。」
その場に、不穏な空気を感じた汰世さん。
ジト目な那世さんの側を、早足ですり抜けます。
「遅れちゃう、遅れちゃう!」
慌ただしく玄関で靴を履き、ドアの前まで進みました。
ノブに伸ばす手を止め、振り返って亜夜さんの方を見ます。
「アぁ。ナぁの相手、頑張ってぇ」
----------
「汰世ちゃん──」
寒奈家の玄関に取り残された亜夜さん。
その背中を、汰世さんの三つ子の妹の那世さんが指で突付きます。
「じゃあ、亜夜っち。僕の部屋に行くよ?」




