1.可愛くないですか?
「この服、どうですかぁ?」
いつもの、地元なショッピング。
お気にな店で、ピンときた服を試着した香夜さん。
問いかけの声と同時に、試着室のカーテンを開けます。
「可愛くないですか♪」
外で待っていた亜夜さん。
よりよく見るために、半歩ほど後ろに下がります。
「うん。似合うと思う」
「姉様も着てみますか?」
香夜さんは、さして広くもない試着室でくるりと回って見せました。
後ろ姿を確認しながら、亜夜さんが呟きます。
「アーさんは良いかな」
「何でですかぁ」
「だって、着たらどうなるか。今の亜夜ちゃんの姿を見れば判るし?」
「まあ見た目は、そうですけどぉ」
体を正面に向けた香夜さんは、まったく同じ容姿の双子の姉に顔をしかめてみせます。
「実際に着ないと、着心地とかは判りませんよ?」
「ほら、その服は──」
亜夜さんは、伸ばした右手の人差し指で自分の頬を突付きました。
「…アーさんには似合わないと思うし」
----------
「ね、え、さ、ま!?」
思わず香夜さんは、試着室から踏み出すギリギリの位置にまで踏み出だします。
「さっき、わたくしには 似合うって言ってくれましたよね?」
「うん」
「あれは、嘘ですか??」
「─ そんな訳ないじゃん」
香夜さんが試着室から落ちないか心配になって、反射的に両腕を伸ばす亜夜さん。
その左右の手のひらに、香夜さんが自分の両手を合わせます。
「私達、双子ですよ? それもまったく同じ容姿です!」
「知ってる。当事者だし」
「じゃあ、わたくしに似合う服は、亜夜姉様にも似合うに決まってるじゃないですか!!」
----------
「見た目だけなら、そうかもなんだけどぉ」
亜夜さんは、自分の両腕に少し力を入れました。
それで香夜さんに、試着室から落ちない位置まで移動するように促します。
「─ 気分的な問題?」
腕を押された意味に気付いた香夜さんは、すこし後ろに下がりました。
「??」
「その服を着ているアーさんは、アーさん的にはありえないかなって」
「似合うのにですか!?」
「だって、アーさんのキャラに合わないし」
小首を傾げる香夜さん。
真似をして、亜夜さんは同じ様に首を傾げてみせました。
「ちょっと、アーさんには可愛すぎない?」
「え?!」
「まあ、香夜ちゃんのキャラには合うと思うんだけど、アーさんのキャラには合ってないよね??」
「…そ……そんなことは………」
「ほら。言いよどむ程度には、そう思ってるじゃん」
「そ、そんな事はありません!」
慌てた香夜さんは、またまた試着室から落ちそうな勢いで踏み出しそうになります。
気付いた亜夜さんは、手でそれを押し留めるジェスチャーをしました。
「だからアーさんは、着たくないかな。それを着た自分を想像すると、頭にノイズが走るし☆」




