3.珍しい…
「…い゛」
一言発してから、言葉を空振らせる男の子。
何回か口をパクパクさせた後、やっと声を発する事に成功しました。
「い、五つ子って…め、珍しいねぇ」
相手の意表を突けた事に満足し、亜夜さんの唇が緩みます。
「まあ五つ子は なんちゃってで、本当は双子なんだけどね♪」
「?」
「実は、うちの学校には三つ子ちゃんもいてね。その子達がアーさん達双子と、何故か容姿がそっくりだったりする」
「…そんな偶然……ある?」
「うん、あるの。あるものは、仕方ないよね☆」
「それは── そうだね」
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「じゃあ──」
いつの間にか、亜夜さんの座るベンチとの距離を微妙に縮めていた男の子。
さらに半歩踏み出します。
「昨日、ボクが見たのは、君じゃないの五つ子のひとり?」
「うん。多分と言うか、きっと那世ちゃん」
「…安心したかも」
「?」
「……ボクが昨日見たのが、幻な女の子じゃない事が証明された訳だし」
「まあ、アーさんと同じ容姿の人間がココにいたのは、紛れもない事実だからねぇ」
ベンチに座ったまま、拍手をするかの様に両手を上げた亜夜さん。
何故か手の平を当てて音は出さず、口で擬音を始めます。
「パチパチパチ」
音に合わせて動かすだけの、ジェスチャーな拍手。
それをひとしきりしてから、満足そうに手を止めました。
「只今、あなたの疑問は見事に解明されました。これでボク君の、アーさんに声を掛けるミッションは無事終了です。おめでとう☆」




